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- 内外経済ウォッチ『日本~2022年経済展望~』(2022年2月号)
行動制限緩和で個人消費活性化
2021年の日本経済を一言で表現すると、実感なき景気回復だったと言えよう。海外経済の回復により製造業を中心に経済活動は回復したものの、長期間にわたって行動制限が発出されたこと等もあり、非製造業の活動は厳しかった。
一方、海外経済の回復等を通じた企業業績回復期待を反映して、日経平均株価は比較的堅調に推移した。それにもかかわらず景気回復の実感が乏しかった要因は、医療提供体制の整備不足で行動制限の発出と解除が繰り返されたことがある。また、原油価格の上昇等を主因に増加したエネルギーコストが、家計の消費回復の足を引っ張ったこともあろう。
こうした中、2022年の景気を占う上では、引き続き新型コロナウイルスへの対応が大きな鍵を握ろう。特に、行動制限緩和に伴う需要効果は大きいと思われる。事実、2021年は行動制限の発出によって1日当たり▲210億円程度の個人消費が抑制されたと試算されるからである。
特に、2022年は新型コロナウイルスの経口薬が普及するとみられており、指定感染症の格下げ等も実現すれば、行動制限を発出するリスクが大きく低下し、個人消費が2021年から+7兆円以上押し上げられる可能性がある。
更に、2021年度補正予算の効果も発生することが予想されることから、移動や接触を伴うビジネス現場においてリベンジ消費が発生することが予想される。
特に旅行に関しては、リモートで代替不可能であることに加え、日銀の試算によれば強制貯蓄が+20兆円以上積みあがっていることからすれば、高額の国内旅行需要がかなり存在することが期待される。なお、2022年は北京冬季五輪やサッカーW杯が予定通り実施されれば、こうしたイベントに関連する特需が発生する可能性もあろう。
リスクは政治と金融市場
一方、2022年における世界経済の最大のリスク要因は、需給のミスマッチが長引くことにより、インフレ圧力が長引くことで、想定よりも早く金融政策の正常化が進むことであろう。仮にこうしたことが起きれば、金融市場の混乱を通じて実体経済に悪影響が波及することは避けられない。2021年にかけて各国で拡大した財政支出のパッケージも縮小する可能性があり、実体経済に悪影響が及ぶ可能性もある。
また国内では、7月に参議院選挙が控えており、そこで与党が議席数を大幅に減らすようなことになれば、政治的な不安定を通じて市場の混乱が生じる可能性もあろう。仮にそうならなかったとしても、その後はしばらく国政選挙がないことからすれば、岸田政権が金融所得課税の見直し等を中心に2023年以降は増税に踏み切るリスクもある。
このため、夏の参議院選挙の状況次第では、マーケット環境の悪化を通じて日本経済に悪影響を及ぼすリスクもあろう。日本株の売買は6割以上が外国人投資家であり、政権基盤が盤石なほど、外国人投資家が日本株を保有しやすくなり、基盤が揺らぐほど手放されやすくなる。そうなれば日本経済も困難を強いられることになるだろう。
なお、11月に中間選挙を控えるバイデン政権の政策運営もリスクだろう。特に米中間での貿易と技術に関する緊張関係が高まれば、米中経済が大幅に減速する可能性もある。また、金融市場のオーバーキルもリスクである。特に欧米諸国は金融緩和の出口の局面にあるため、予防措置的なテーパリングや利上げに動きつつある。しかし、各国中銀が金融緩和の出口を急ぎすぎるようなことになれば、短期的に金融市場で大きな変動が生じることになり、日本経済への悪影響も無視できないことになろう。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 永濱 利廣
ながはま としひろ
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経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
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永濱 利廣