住宅価格高騰と女性のキャリア形成

~子育て世帯の家探し、近さをとるか、広さをとるか~

福澤 涼子

要旨
  • 住宅価格の高騰に伴い、「夫婦ともに正社員として働く子育て世帯」の家探しが難しくなっている。夫婦双方が正社員で就業しながら、保育所や学童保育への送迎時間に間に合うためには、「職住近接」が家探しのひとつの重要な基準となるためである。

  • しかし、東京23区の住宅価格はここ数年で高騰している。東京23区のファミリー向けの広さ(70㎡)のマンション平均価格は、中古でも1億2千万円を超え、賃貸住宅でも平均月額賃料が25万円に達している。経済的に都心部に住むことを断念する子育て世帯も増えていくだろう。

  • 住居の郊外化でキャリアが変わるのは、特に子育て期の女性に見られる傾向である。未就学児を育てる女性の場合、東京23区や隣接エリアに住む女性のほうが、そうでないエリアよりも正社員での就業率が高い傾向にあった。正社員としてキャリアを維持し続けるには、都心部などの豊富な労働市場へのアクセスを維持することが重要である。

  • 他方で、東京23区や隣接エリアに住む子育て世帯は、豊かな住生活を実現するための「誘導居住面積水準」を達成している世帯の割合が、非隣接エリアよりも低い。住宅価格の高騰が長期化すれば、住宅の狭小化がさらに進むと考えられる。

  • 住宅価格高騰を女性活躍の壁としないためには、「職場への近接性」と「子育てに必要な広さ」のいずれかを大きく犠牲にしなくてよい居住環境を整える必要がある。そのためには、国や大都市圏の自治体が子育て世帯向けの賃貸住宅を供給したり、既存住宅の世代間循環を促す仕組みなどについて実現可能性や課題を検討していく必要がある。

目次

1. 子育てしながら正社員で働く女性の増加と、住居探しの難しさ

住宅価格の高騰に伴い、家探しに苦労している人も多い。とりわけ難しい状況を強いられているのが、家探しに制約の多い「夫婦ともに正社員などとしてフルタイムで働く子育て世帯」である。その制約のひとつは「通勤にかけられる時間」であり、夫婦ともにキャリアと子育てを両立するためには、夫婦双方が保育所や学童保育所への送迎に関わることが望ましく、居住地として選択できるエリアは自ずと限られてくる。特に、労働需要の高い都心部への近接性は、多くの子育て中の就業者にとって家探しの重要な視点である。

かつて標準的であった「正社員の夫と専業主婦の妻」からなる世帯では、子どもの送迎をはじめとする子育ての多くを妻が担っていたため、夫の通勤時間が長くても、日々の生活は成り立っていた。また、共働きであっても、「正社員の夫とパートタイムで働く妻」という形態では、妻が転居先の近くで短時間の仕事を探すことで、その暮らしが維持できた。妻の働き方を制限することで、広さを求めて郊外に住居を買うという選択肢をもつことができていたといえる。しかし、夫婦ともに正社員などのフルタイムとして働く世帯の場合、夫婦ともに職住近接を選択することが仕事と子育てを両立するうえでの基盤となる。資料1に示したとおり、そのような小さい子どもを育てながら正規職員として就業する女性は増加傾向にあり、2022年には専業主婦やパート雇用を抜いて最も多い割合となった。

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なお、オンラインの活用によるリモート勤務の普及によって、勤務地から離れた地域に住むという選択肢も取りやすくなった。しかし近年は、企業において出社日数を増やす動きもみられ(注1)、在宅勤務を前提とした居住地選択はリスクとなりつつある。そのため、子育て世帯にとって、勤務地へのアクセスは引き続き重要な住居選択の条件である。夫婦ともに正社員として働く世帯の場合、保育所の利用時間のなかに、夫婦の通勤、勤務、休憩、送迎にかかる時間を収める必要がある。そのため、まずは勤務地からの距離を基準に、家探しをすることになり、さらに、子どもの人数に応じた部屋の数や防音設備、近隣の保育所や学童保育所の空き状況なども考慮すると、選択肢がさらに狭まってくる。

2. 都心部の住宅価格の高騰で、子育て世帯に重い負担

さらには、昨今の住宅価格高騰が、職場へのアクセスを重視する夫婦にどこに自宅を構えるべきかという難題をつきつける。例えば、「ファミリー向け」と称される70㎡換算の中古マンション住宅価格は、2024年以降急激に上昇している(資料2)。もちろん、都心3区などの富裕層向け物件が平均値を押し上げているものの、比較的買いやすいとされてきた城東地区や城北地区でも、2021年までは5,000万円前後だった中古マンション価格が、2026年1~7月には8,000万円前後まで上昇している。

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近年の住宅販売価格の高騰は、関東地方の二人以上世帯の年間収入の伸びを大きく上回っており(注2)、その負担は、子育て世帯にとって小さくない。実際、2025年のフラット35の利用者におけるマンション購入所要資金の世帯年収倍率は、東京都では平均値が9.5倍、中央値が8.1倍で他の都道府県よりも高い(注3)。近年は返済期間を長くすることで毎月の負担を抑える住宅ローンも利用されているが、返済期間が長期化するほど総返済額は増加する。住宅価格の上昇は、多くの若い世帯に、これまで以上に長期で多額の債務を負わせることとなる。もちろん、純粋な住居としての価値だけではなく、資産運用の一環として、売却を前提にこのような都心部の住宅を購入する人も増えていると考えられる。しかし、今後もし価格が下落した場合には、売却を見合わせたり、売却をしても住宅ローンの残高が残ることも想定される。日本ではバブル期に住宅価格が大きく上昇した後、1990年代に長期的な下落が続いた。Niizeki(2020)は、バブル期の住宅価格変動によって、多くの世帯で生涯効用(注4)が低下した可能性を指摘する。

一方で、購入ではなく賃貸を選択した場合でも、生活にゆとりが生まれるわけではない。東京23区におけるファミリー向け賃貸マンションの賃料は上昇傾向であり(資料3)、2026年6月の専有面積50㎡超~70㎡以下の平均募集家賃は月額25万9,335円、70㎡を超える物件の場合は、41万5,766円となり相当な高額である。子どもを育てるために一定の広さを確保しようとすれば、賃貸と購入のどちらを選んでも重い負担が避けにくい状況である。

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3. 住宅価格上昇下でも、根強い持ち家志向

それでも、昨今の住宅販売価格の変動を受けて、現在の住宅購入を見送り、賃貸物件で価格の変動の様子見をするというのは、一見すると合理的な選択肢のように思われる。しかし、先のNiizeki(2020)の調査では、バブル期の住宅価格の高騰と崩壊に応じて持ち家率に変化が見られなかったことが指摘されている。そして、足元の住宅価格高騰局面においても、必ずしも家計が住宅購入から撤退しているわけではないことが確認できる。実際、フラット35の利用者調査(注5)によると、2025年度の利用者数(35,553件)は、2023年度の利用者数(32,382件)よりも多い。また、住宅ローン利用の内訳として2004年の調査開始以来、中古住宅の割合が初めて最多となるなど、購入する住宅の種類に変化が見られている。そのほか、35年を超える長期ローンを選ぶ人も増えており、返済期間を延ばすことで、月々の返済負担を抑えようとする動きがみられる。

こうした背景には、適齢期には住宅を購入するという根強い持ち家志向に加え、子育て世帯が必要とする広さを備えた賃貸住宅の選択肢が限られていることも影響している可能性がある(注6)。住宅価格が高騰しても、購入時期を延期して賃貸住宅にとどまることが容易ではない状況では、高額な住宅ローンを組む、返済期間を長期化する、中古住宅を選ぶ、あるいは住宅の広さや立地を妥協するといった形で、持ち家取得を実現しようとしている可能性がある。

4. 居住地とワーキングマザーのキャリア形成の関係

住宅費高騰でも、持ち家を取得するには、先にあげた返済期間を長期化する、中古住宅を選ぶといった方法のほか、より安価な土地を選ぶということが、費用を抑えるための大きなポイントとなる。つまり、23区などの都心部に近い場所の住居獲得が困難となる場合、都心部の外縁部に住居を構えるということが次なる妥当な選択肢となってくるだろう。実際、奥田(2026a)では、足元の住宅価格の影響を受けて、23区に加えて埼玉県南部や川崎市、横浜市北東部でも転出超過傾向が強まり、東京からより離れた地域で転入超過が増えていることが示されている。ただし、冒頭で指摘した通り、通勤時間が長い職住分離の生活では、子育ての時間を捻出できなくなり、夫婦のどちらか(主に妻)が正社員としてのキャリア形成をあきらめるきっかけにもなりかねない。

資料4は、東京23区もしくは隣接する人口30万人以上の市(以下「23区・隣接市」)に住む男女と、東京23区に隣接していない市のなかで、東京都庁とその市の市役所の直線距離が40キロ圏内の人口30万人以上の市(以下「非隣接市」)に住む男女の正規雇用者割合を居住地ごとに比較した表である。まず女性でみてみると、23区・隣接市のほうが子育ての有無にかかわらず正規雇用者割合が高いものの、育児期にはその差がさらに広がる。つまり、都心部に近いエリアの方が子育てと正規雇用での就業が両立しやすい傾向があることがうかがえる。

一方、男性では同様の傾向はみられなかった。このことから、居住地と就業形態との関係は、少なくとも今回の集計では、育児期女性の問題である可能性が高い。このような、女性の正社員就業率と通勤時間の負の相関は先行研究でも指摘されている。河端(2020)によると、子どものいる既婚女性の正社員就業率と通勤時間には有意な負の関係があるが、通勤時間と既婚男性の労働力率には有意な関係がみられなかった。

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このような男女差は、子育てや家事の負担が共働き世帯であっても女性に多く偏っていることに起因すると考えられる。長時間通勤を必要とする郊外居住を選んだ場合、夫婦双方が家事・育児に割ける時間が減少する。とりわけ、通勤時間の長期化により夫の家事・育児への参加が難しくなれば、そのしわ寄せが妻におよび、その負担がさらに重くなるだろう。結果として、育児・家事を主に担う妻が正社員として働き続けることが困難になり、専業主婦やパート雇用などの道を選ぶということにつながりかねない。つまり、住宅価格の高騰を要因として、都心部から離れたエリアに家を購入する子育て世帯が増えてくるということは、正社員として働き続けたい女性にとってキャリア形成の壁となる可能性がある。もちろん、妻の正社員としての就業継続を必ずしも最優先としない世帯が、都心から離れたエリアを選ぶ傾向も考えられ、今回の結果は、住宅価格の上昇が就業形態を直接変化させるという因果関係まで示すものではない。ただ、少なくとも今回の集計で、育児期女性について、都心へのアクセスが良い地域ほど正規雇用率が高いという関係が確認されたことは注目に値する。また、男性の家事・育児時間も増加傾向にあることから(注7)、通勤時間によるキャリアと家庭の両立への影響は、今後は男性にも生じる可能性がある。職場へのアクセスがよい居住地を選択することは、子育てと仕事の両立を支える条件の一つとなる。

5. 都心部に住む子育て世帯の6割は、誘導居住面積水準に達していない

このようななか、都心部で手頃な住宅を求めて、狭小住宅を選ぶ子育て世帯も増えていると報じられている(注8)。実際、東京23区やその隣接市では、豊かな住生活の実現のための「誘導居住面積水準」(注9)を達成できていない世帯が多い。資料5に示したとおり、9歳以下の子どもを育てる夫婦世帯のうち、誘導居住面積水準を満たす世帯の割合は、23区・隣接市では37.8%であったのに対し、23区非隣接市では50.4%であり、両者には12.7ポイントの差がみられた。23区・隣接市では約6割の世帯が誘導居住面積水準を下回っていることになり、なかでも東京23区の達成率は36.3%と低く、市川市39.4%、川口市40.4%、川崎市42.3%、松戸市46.6%と、東京23区および隣接市はいずれも5割を下回った。

一方、23区非隣接市では地域による差があるものの、町田市58.7%、船橋市57.7%、柏市56.4%、千葉市56.3%など、5割を超える都市も多い。少なくとも今回対象とした地域を集計した場合には、東京23区およびその隣接地域の方が、それ以外の地域に比べて居住面積の制約を受けている世帯が多い。これは2023年の調査だが、昨今の住宅価格の高騰の影響を受け、狭小住宅に住む子育て世帯はますます増加すると考えられる。

このような住宅の狭小化は、第二子をためらう要因ともなり、少子化問題ともつながるという指摘がある(奥田2026b)。また過密居住で育つ子どもへの影響として、子どもの学業成績や心理面、親の養育態度との関連も報告されている(注10)。

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6. 家族の働き方の変化に合わせた新たな住宅政策を

本稿でみてきたように、住宅価格の高騰は、家計の住居費負担を増加させるだけの問題ではない。夫婦ともに正社員として働く子育て世帯にとって、居住地は仕事と子育てを両立できるかどうかを左右する。とりわけ女性では、東京23区およびその隣接市と、それ以外の地域との間で、育児期の正規雇用割合に差がみられた。他方、東京23区およびその隣接市では、子育て世帯の多くが誘導居住面積水準を下回っている(注12)。

そのため、今後の住宅政策には、子育て世帯が「職場への近接性」と「子育てに必要な広さ」のいずれかを大きく犠牲にしなくてもよい居住環境を整えるという視点が必要である。これは、単に子育て世帯の住生活を改善する政策ではない。女性をはじめとする子育て中の就業者が、居住地の制約によって望まない離職や雇用形態の変更を余儀なくされることを防ぐ、雇用政策や少子化対策としての意味も持つ。

具体的には、国や大都市圏の自治体が、雇用の集積地へ通勤しやすい地域において、子育てに必要な一定の広さを備えた手頃な賃貸住宅を増やすことが重要である。

特に、子育て世帯向けの賃貸住宅が少ないことは、住宅価格が高騰していても購入を延期しにくい一因になっている可能性がある。購入時期によって家計負担に大きな差が生じるような事態を防止するためには、通勤しやすいエリアで子育て世帯向けの賃貸物件を増やしていく必要がある。このような選択肢があれば、子育て世帯は住宅購入を急がず、子どもの成長や家族の働き方、市場環境を踏まえて、購入時期と居住地をじっくりと検討することができるだろう。そのことが、正社員としてのキャリア形成を希望する女性たちを支えることにもつながる。

そのため、公的賃貸住宅のほか、中古住宅や空き家などを活用しながら、子育て世帯を対象とした優先入居、既存住宅の改修費への助成、家賃負担の軽減などを組み合わせ、住宅を必要とする子育て期世帯全体を支援することが重要である。東京都によるアフォーダブル住宅の供給はその一歩であるものの、今後は供給戸数を拡大するとともに、立地、広さ、家賃負担が子育て世帯の実情に即しているかを検証する必要がある。

また、市場に出にくいとされる中古戸建の賃貸住宅の供給を増やしていくことも一つの方策となるのではないだろうか。そのためには、既存住宅の世代間循環を促す仕組みも、柱の一つとなり得る。このような住宅の世代間循環の可能性については、次稿以降で詳しく検討していく。

共働き世帯の増加によって家族の働き方が変化した以上、それを支える住宅政策も変わらなければならない。これまでのように、子育て期には広い住宅を求めて郊外へ住むという選択肢だけでは、夫婦双方がキャリアを継続する世帯のニーズに十分応えられなくなっている。日本の女性活躍をすすめるためには、雇用制度や保育政策の拡充が欠かせないが、子育て世帯の職住近接をいかに支援していくかという住宅政策の重要性にも目を配るべきだろう。男女ともにキャリアと子育てを両立できる都市環境を整えることが、都市部の住宅政策の喫緊の課題であるといえる。

以 上

【注釈】

  1. 国土交通省「テレワーク人口実態調査」(2025)によると、直近1年間のテレワーク実施率は、首都圏エリアで2021年の36.2%から2024年では27.2%へ低下している。さらには、2026年にはいくつかの大手IT系企業で在宅勤務を廃止したり、頻度を少なくするなどのニュースが報道されている。

  2. 総務省統計局「家計調査」によると、関東地方の二人以上世帯の年間収入は、2024年の880万円から2025年には921万円へと約4.7%増加している。一方、資料2に示した東京23区の中古マンション価格は、同期間に8,398万円から1億1,161万円へ約33%上昇しており、世帯収入の伸びを大幅に上回っている。さらに、2015年から2025年までの10年間でみても、年間収入は769万円から921万円へ約20%の増加にとどまっており、近年の住宅価格の上昇が家計の所得増加を大きく上回るペースで進んでいることがわかる。\

  3. 首都圏近郊の中央値で抜粋すると、千葉県・埼玉県で6.9倍、神奈川県で7.1倍である。中央値は47都道府県で東京都が最も高い。/住宅金融支援機構「フラット35利用者調査 2025年度集計表」

  4. ここでいう「生涯効用」とは、住宅価格の上昇・下落による資産価値の損得だけを指すものではなく、住宅価格が異なったことにより影響を受けるであろう購入できる住宅の質による満足度や、住宅購入以外に回せる消費額も含めた価値の総和である。先行研究では、こうした住宅から得られる満足度と消費の双方を、生涯にわたって総合的に評価している。/Niizeki, Takeshi and Fumihiko Suga (2020), “The Impact of Housing Price Boom and Bust on Household Lifetime Utility in Japan,” ESRI Discussion Paper Series, No.356, Economic and Social Research Institute, Cabinet Office, Government of Japan.

  5. 記載の利用者数は住宅金融支援機構「フラット35利用者調査(2023年度・2025年度)」による。また、同機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)」によると、35年超の住宅ローンを組む人の増加傾向が示されている。

  6. 総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)によると、東京23区の借家の共同住宅のなかで、延べ面積70㎡以上の物件は全体の8.6%にとどまる。50㎡以上に範囲を広げても24.9%までしか増えず、賃貸市場においては単身向けの物件が主流で、ファミリー向けの賃貸物件の選択肢が少ないことがわかる。

  7. 総務省統計局「我が国における家事関連時間の男女の差 ~生活時間からみたジェンダーギャップ~」(2023年)によると、「6歳未満の子供を持つ夫婦と子供の世帯について、夫と妻の1日当たりの家事関連時間をみると、(※筆者注:2021年は)夫は1時間54分、妻は7時間28分となっており、2016年と比べると夫は31分の増加、妻は6分の減少」していることがわかっている。

  8. 例えば、2026年5月30日の日経MJ「『狭小戸建て』首都圏で急増、2021年比8割増 ライフルホームズ調べ」ほかニュース番組などでも「アイデア狭小住宅」が特集されている。

  9. 「誘導居住面積水準」とは2006年の住生活基本法に基づく住生活基本計画で、「世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準」として設定された水準のことである。例えば、夫婦と10歳未満の小学生2人から成る4人家族の場合、マンションだと85㎡以上、戸建ての場合には112.5㎡がその水準となる(詳しい計算式は注11に記載の通り)。2025年までの目標として「子育て世帯(18歳未満が含まれる世帯)における誘導居住面積水準達成率」は50%と設定された。ただし、2026年3月に閣議決定された新たな「住生活基本計画」では、この項目が削除されている。

  10. 東京都「東京都子供の生活実態調査報告書」(2017)は、自己肯定感が低くなりがちな生活困難層であっても、一人当たりの居室面積が10㎡以上の家に住んでいる小中学生は、狭小住宅に住む子供に比べて自己肯定感が高い傾向がある。また、松本聡子「住環境に関する母親の評価が子育てに対する意識および養育態度に及ぼす影響」(2002)では、母親の「家が狭いので友人を呼ぶことができない」などの住環境評価は、子育てによる活動制限感に影響し、母親の子どもに対する態度を変化させることを明らかにしている。その他、Goux, D. and Maurin, E. (2005) “The Effect of Overcrowded Housing on Children’s Performance at School,” Journal of Public Economics, 89(5–6), pp. 797–819は、フランスにおいて、自宅の1室あたりの居住人数が増えるほど、小学校または中学校で留年する確率が有意に上昇することを明らかにしている。ただし、これらの研究は、本稿で用いた誘導居住面積水準とは対象や基準が異なるため、同水準を下回る世帯に同様の影響が生じると直ちに結論づけることはできない。居住空間の不足が、子どもの心理面や学業、親の養育態度と関連し得ることを示す知見として捉えられる。

  11. 誘導居住面積水準における必要面積とは、都市居住型(集合住宅を対象)は二人以上世帯で「20㎡×世帯人員+15㎡」であり、一般型は「25㎡×世帯人員+25㎡」である。世帯人員は、3歳未満の者は0.25人、3歳以上6歳未満の者は0.5人、6歳以上10歳未満の者は0.75人として算出する。ただし、これらにより算出された世帯人員が2人に満たない場合は2人とする。また、年齢が「不詳」の者は1人とする。世帯人員が4人を超える場合は、上記の面積から5%を控除する。これらの条件を踏まえて、誘導居住面積水準による必要面積以上か否かで達成状況を数値化している。/総務省統計局「住宅・土地統計調査」(2023年)の「用語の解説」

  12. なお、本稿で用いた就業形態についての調査は2022年、居住面積に関するものは2023年の統計であり、足元の住宅価格上昇後の変化を直接捉えたものではない。従来から存在する居住地と就業・居住面積の関係を確認した上で、近年の住宅価格上昇がこうした問題を強める可能性を考察している。

【参考文献】

【関連レポート】

福澤 涼子


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