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2026.11.02
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台湾経済はAI・半導体特需で高成長も、金融市場には調整圧力
~株安・通貨安とインフレが中銀の政策判断を複雑に~
西濵 徹
- 要旨
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- 台湾経済は、世界的なAI(人工知能)・半導体関連需要の拡大を追い風に、輸出や設備投資が景気をけん引する展開が続いている。9月の輸出額と輸出受注額はともに過去最高を更新するなど、外需の旺盛さが確認されている。さらに、7-9月の実質GDP成長率も前年同期比+14.36%と高い伸びを記録した。中銀も2026年通年の経済成長率が+11.48%と1987年以来の高い伸びになると見込んでおり、足元の台湾景気は活況を呈している。
- 一方で、イラン情勢の悪化に伴うエネルギー価格の上昇などを背景にインフレ圧力が強まるなか、中銀は10会合連続で政策金利を据え置くなど、慎重な政策運営を続けている。さらに、世界的なAI関連投資の収益性を巡る不透明感から、半導体関連株を中心に株価が調整するとともに、台湾ドル相場にも下落圧力が強まっている。今後、株価の調整が長期化すれば実体経済への悪影響が懸念されるうえ、通貨安による輸入物価の上昇がインフレ圧力を増幅させる可能性もある。このため、中銀は一層難しい政策運営を迫られると予想される。
台湾経済を巡っては、世界的なAI(人工知能)・半導体関連需要の拡大が追い風となる動きが続いている。台湾は、半導体の設計と製造を水平分業するとともに、製造受託に特化するファウンドリモデルを確立しており、世界のファウンドリ市場の4分の3以上のシェアを占めるとされる。さらに、半導体の後工程(パッケージング・検査)を担うOSAT(半導体受託製造サービス)分野でも、世界シェアの半分近くを占めるとされる。背景には、新竹サイエンスパークなどを中心に、設計・製造・装置・材料・検査の企業が地理的に集積しており、試作から量産までのフィードバックや改良を短期間で進められるサプライチェーンが構築されていることがある。こうしたなか、9月の輸出額は前年比+60.9%と高い伸びをみせるとともに、先行きの輸出動向を示す輸出受注額も同+62.4%となり(図1)、ともに過去最高を更新するなど旺盛な動きが続いている。

台湾経済は、GDPに占める輸出比率が8割弱にのぼるなど、アジア太平洋地域のなかでも構造面で外需依存度が相対的に高い。このため、外需の拡大は景気を大幅に押し上げる要因となる。こうしたなか、7-9月の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比+14.36%となり、前期比年率ベースの成長率も+13.48%と二けたの高い伸びが続いていることが確認された(図2)。世界的なAI・半導体関連需要の拡大を反映して、財輸出が大幅に押し上げられる動きがみられる。さらに、AI・半導体関連需要の旺盛さを追い風に、半導体製造設備やデータセンター関連の投資が拡大するなど、設備投資も景気を押し上げている。中銀は9月の定例会合において、2026年通年の経済成長率が11.48%と1987年以来の高い伸びとなる見通しを示すなど、足元の台湾景気は活況を呈している(注1)。

こうしたなか、中銀は難しい政策の舵取りを迫られている。台湾は一次エネルギーの35%を石炭が占める一方、近年は脱石炭・脱原発を図るべく、LNG(液化天然ガス)の輸入を拡大させてきた。LNG輸入の4割をオーストラリア産、3割をカタール産が占めたものの、イラン情勢の悪化を受けて調達先の多様化が進んでいる。ただし、国際的なLNG価格の上昇や輸送の混乱などを通じた影響は避けられない。また、台湾は2025年にすべての原発の稼働を停止する脱原発を実現したが、エネルギーの安定供給を理由に再稼働を検討するなど、政策の見直しを迫られるとともに、石炭火力を予備電源として活用する動きもみられる。背景には、半導体の安定的な生産・供給を維持するうえで、膨大な電力の確保が不可欠となっていることがある。こうしたエネルギー価格の上昇に加え、食料品やサービス価格などにも上昇圧力が掛かるなか、9月のインフレ率は前年同月比+2.73%と2024年3月以来の高い伸びとなった。さらに、景気の堅調さも追い風にコアインフレ率も加速するなど、インフレ圧力が強まっている(図3)。

こうした状況にもかかわらず、中銀は9月の定例会合において、10会合連続で政策金利を据え置いている。とはいえ、2会合連続で2名の政策委員が利上げを主張するなど、政策運営を巡って理事の間で意見が分かれていることが明らかとなり、一部で『タカ派』姿勢が強まる様子が確認されている。一方で、足元の金融市場では、世界的に金利上昇圧力が強まるなか、米国を中心に進められてきた巨額のAI関連投資が、企業収益の持続的な拡大につながるかを巡って不透明感が高まっている。こうした状況を反映して、台湾でも時価総額の大きい半導体関連企業を中心に株価が調整の動きを強めている(図4)。さらに、株価の下落に伴う海外投資家の資金流出などを背景に、通貨台湾ドルの対米ドル相場も下落圧力を強めている。主要株価指数(加権指数)の調整幅は、同様の状況に直面している韓国などと比べて小幅にとどまるものの、仮に市場の混乱が長期化し、株価が一段と調整を強めることになれば、実体経済にも少なからず影響が及ぶ可能性がある。その場合、中銀は『タカ派』姿勢の修正を迫られることも考えられる。一方、台湾ドル安による輸入物価の上昇がインフレ圧力を増幅させるリスクもあるなど、政策運営の舵取りは一層難しくなることが予想される。

注1 9月18日付レポート「台湾中銀は10会合連続で金利据え置いたが、引き締め傾斜を示唆」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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