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2026.11.02
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中国・5中全会で党内統治の引き締め強化も、景気には不透明感
~習近平指導部の4期目入りを見据える一方、景気低迷と株安への対応が課題に~
西濵 徹
- 要旨
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- 中国では、10月26~29日に開催された中国共産党の5中全会において、党内統治の引き締めや反腐敗の強化を柱とする決定が採択された。11月1日に公表された決定の全文では、党への忠誠や幹部に対する監督の徹底が強調されるなど、2027年の党大会での習近平指導部の4期目入りを見据え、党組織に対する統制を一段と強化する狙いがうかがえる。
- 一方、中国経済を巡っては、当局が内需喚起に向けた財政・金融支援策を打ち出しているものの、10月の製造業PMIは政府統計(49.3)と民間統計(52.0)で明暗が分かれた。非製造業PMI(49.7)も50を下回るなど、企業マインドは依然として力強さを欠いている。
- さらに、原油高によるコスト上昇や不動産開発企業の経営環境悪化などが株式相場の重しとなっている。こうしたなか、当局による市場支援への期待が高まっているものの、政策対応が景気や金融市場の本格的な改善につながるかは不透明であり、先行きの動向には引き続き注意が必要である。
- 目次
【5中全会では、習近平指導部の4期目入りを見据え、党内統治の引き締め強化を図った】
中国では、10月26日から29日までの日程で中国共産党の第20期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開催された(注1)。主要議題は「全面的かつ厳格な党内統治(全面従厳治党)」とされ、2027年に開催予定の中国共産党第21回全国代表大会(第21回党大会)で習近平指導部の4期目入りが視野に入るなか、その『前哨戦』として注目された。会議では、習氏が中央政治局を代表して行った活動報告を聴取・討議し、「全面的かつ厳格な党内統治を持続的に推進するうえでの若干の重大問題に関する決定」を採択した。同決定には、党の規律、幹部の選抜・監督、組織運営、反腐敗の強化といった内容が盛り込まれた。中央の指示を地方や各部門まで徹底し、政治的な忠誠と実務上の遂行能力を幹部管理に反映させるとともに、組織的な監督と責任追及の仕組みを整える方針が示された。こうした決定の背景には、「一時みられた党の指導力の弱体化・形骸化・希薄化という厳しい現実を直視した」とする危機感があったとみられる。
その後、11月1日に公表された内決定の全文では、党への忠誠を重視する姿勢があらためて示されるとともに、党内の『不純物やウイルス』を一掃すべく、反腐敗運動を引き続き強力に展開する方針が示された。そのうえで、党員全体としては健全であると評価しつつも、思想面や組織面、仕事ぶりにおける不純さの問題が根本的に解決されていないと指摘した。そして、党への忠誠心を浸透させる取り組みの強化、日常業務や個人の言動、交友関係、家族の価値観を通じて評価される『党性』に基づく幹部登用、『自己革命』を推進する必要性を強調した。具体的には、幹部の個人資産などに関する申告内容の審査を厳格化するとともに、家族の資産や支出が正当な所得に見合わない事例の調査を含め、綿密かつ継続的な監督を行うとした。幹部の家族による事業活動についても、定期的な監督の対象とすることを求めている。さらに、名義貸しによる株式保有や、暗号資産、ブロックチェーン技術、国境を越えた資金移動などを利用した汚職の取り締まりを強化する方針も示された。
そのうえで、習氏を党の『核心』とする地位を断固として守るとともに、思想、政治、行動の各方面で最高指導部と完全に足並みを揃えることを要求した。習氏は、決議について説明した演説でも、「全面的かつ厳格な党内統治を粘り強く推進し、党の健全性をむしばむ『ウイルス』を絶えず排除することで、党の本質や理念を維持し、『紅色の国(中国)』を次世代に引き継ぐことができる」との考えを示した。背景には、改革・解放後に生まれた若い世代の党幹部が増えるなか、思想面などで「新たな問題が生じている」との認識が広がっていることが影響している模様である。こうしたことから、今回の5中全会には、習近平指導部が4期目入りを前に、党組織に対する統制を一段と強化する狙いがあったと考えられる。
【当局による内需喚起の取り組みにもかかわらず、足元の企業マインドは依然として厳しい】
一方で、足元の中国経済を巡っては、外需やハイテク関連を中心とする製造業をけん引役に景気に持ち直しの動きがみられる一方、内需は力強さを欠く推移をみせている。こうしたなか、5中全会では、マクロ政策の活用と内需拡大を求めるとともに、2026年の経済・社会発展目標を達成する方針が再確認された。中国ではここ数ヵ月、内需喚起に向けた取り組みを進める動きがみられる。国務院は7月、同国で初めて個人消費に焦点を当てた「消費拡大の5ヵ年計画」を公表した。同計画では、2030年の小売売上高(社会消費品小売総額)の規模を2025年(50.1兆元)に比べて約2割(60兆元前後)引き上げるべく、消費構造の高度化や家計所得の引き上げを目指すとした。加えて、共産党は7月末に開催した中央政治局会議において、インフラ関連など財政支出の進捗加速による景気下支えを図る方針を示した。これを受けて、政府・金融当局は8月以降、内需促進を目的とする新たな財政・金融支援策を発表しており、今後はその効果の行方が注目される。
ただし、足元においては、依然として企業を取り巻く環境は厳しい状況が続いている。国家統計局が公表した10月の製造業PMI(購買担当者景況感)は49.3となり、前月(50.1)から▲0.8pt低下して2ヵ月ぶりに好不況の分かれ目となる50を下回る水準となった(図1)。足元の生産動向を示す「生産(49.8)」は前月比▲1.9pt低下したほか、「新規受注(49.4)」も同▲1.1pt、「輸出向け新規受注(48.7)」も同▲1.3pt低下していずれも50を下回るなど、内・外需ともに弱含む動きが確認された。受注動向の悪化による先行きの減産懸念を反映して「購買量(48.9)」、「輸入(47.0)」ともに50を下回る水準となるなど、原材料や素材・部材に対する需要を抑制する動きもうかがえる。生産調整の動きが強まったことを受けて「雇用(48.4)」も引き続き50を大きく下回るなど、家計部門を取り巻く環境は厳しく、家計消費の足かせとなる展開が続いている。

一方で、S&Pグローバルが公表した10月のRatingDog製造業PMIは52.0と前月(52.1)から▲0.1pt低下したものの、政府統計と対照的に50を上回る推移が続いている(図2)。足元の生産動向を示す「生産(53.7)」は前月比+0.1pt上昇している一方、「新規受注(53.3)」は同▲0.1pt、「輸出向け新規受注(51.8)」は同▲2.0pt低下しており、先行きの生産の行方に不透明感が出ている。受注動向に陰りが出ているにもかかわらず「購買量(53.0)」は前月比+0.5pt上昇しており、悲観に傾いている兆しはみられない。とはいえ、生産拡大の動きが続いているものの「雇用(50.2)」は前月比▲0.3pt低下しており、製造業において幅広く雇用拡大の勢いは鈍化している。このように、政府統計と民間統計では景況感に違いがみられるものの、雇用を取り巻く環境は依然として力強さが欠けている。

国家統計局が公表した10月の非製造業PMIも49.7と前月(50.2)から▲0.5pt低下して2ヵ月ぶりに50を下回るなど、足元の企業マインドの弱さを示唆している(図3)。業種別では、前述の通りインフラ関連など公共投資の進捗促進を目指す動きがみられるにもかかわらず「建設業(48.0)」は前月比▲2.3pt低下して2ヵ月ぶりに50を下回るとともに、「サービス業(50.0)」が同▲0.2pt低下するなど力強さを欠いている。「新規受注(44.4)」も前月比▲2.1pt、「輸出向け新規受注(46.5)」も同▲2.0pt低下してともに50を大きく下回るなど、先行きにも不透明感が高まっている。「雇用(46.0)」は前月比+0.1ptとわずかに上昇しているものの、依然として50を大きく下回るなど厳しい状況は変わっていない。

【株価低迷を受けて当局による市場支援観測が強まるも、不透明感の払しょくに繋がるか】
イラン情勢の悪化を受けた原油をはじめとする商品市況の高止まりを受けて、中国においても企業部門はインフレに直面している。しかし、内需の弱さを理由に、企業部門においては原材料価格の上昇を最終製品の価格に転嫁するハードルが高く、採算が圧迫される展開が続いている。そのうえ、当局が不動産開発に関連する規制強化に動いたことを受けて、不動産開発企業を取り巻く事業環境悪化の懸念に加え、債務問題の再燃も重なり、関連株を中心に下押し圧力がかかったことも株式相場の重しとなっている(図4)。こうしたなか、中国人民銀行(中銀)と国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会が2日、大手銀行や証券会社、資産運用会社などと会合を開催し、このところの株安の進行を受けて、資本市場を支える手段に関する協議を行う旨の報道が出ている。政府の支援による買い支えの観測が出ている一方、政策措置が本格的な市場環境の改善を促すかは不透明なところも多く、見通しが立ちにくい展開が続く可能性には注意が必要である。

注1 10月30日付レポート「中共5中全会閉幕、次期党大会を見据えて党・軍への統制強化を加速」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

