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2026.11.02
新興国経済
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国際的課題・国際問題
イラン情勢
OPECプラスは増産見送りを継続、2027年の生産枠設定が次の焦点
~足元の供給不足と将来的な供給過剰の双方をにらむ難しい舵取りが続く~
西濵 徹
- 要旨
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- OPECプラス有志7ヵ国は11月1日のオンライン会合で、12月の原油生産目標を据え置き、3ヵ月連続で増産を見送った。7ヵ国合計の生産目標は日量約3,101万バレルである。
- 据え置きの背景には、イラン情勢の緊迫化がある。ホルムズ海峡などで原油輸送に支障が生じており、目標を引き上げても実際の供給増にはつながりにくい。IEAによれば、9月の湾岸産油国の原油輸出量は日量1,390万バレルと、前月から増えたものの緊迫化前の約4分の3にとどまる。石油製品やLPGの輸出は戦前の半分以下にとどまるほか、10月には中東のエネルギー関連施設や船舶への攻撃も再び強まった。
- 供給制約により原油価格は高水準で推移し、運賃や保険料の上昇も調達コストを押し上げている。一方、高値の長期化は世界経済を下押しし、需要減退を招く懸念がある。IEAは2026年の世界石油需要を前年比で日量260万バレル減と見込んでいる。
- 今後の焦点は、11月29日に予定されるOPECプラス閣僚会合での2027年の生産枠の協議となる。日量約200万バレルの協調減産の扱いや、新たな生産基準の設定が論点だが、イラン情勢が評価作業を複雑にしている。IEAは2027年に供給が日量770万バレル増える一方、需要の回復は同200万バレルにとどまると予想しており、供給回復後には需給が緩む可能性がある。ただし、OPECとIEAの需要見通しには隔たりがあり、先行きは不透明である。
- 日本など輸入国にとっても、原油高の長期化は貿易収支の悪化やインフレ圧力の増幅につながる。当面は、OPECプラスの会合内容、ホルムズ海峡の航行状況、湾岸産油国の生産・輸出動向、世界の石油需要を注視する必要がある。
- 目次
【OPECプラス有志7ヵ国は12月の生産目標を据え置き、3ヵ月連続で増産を見送る決定】
OPEC(石油輸出国機構)にロシアなどの主要産油国を加えたOPECプラスの有志7ヵ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、11月1日にオンライン形式で会合を開催し、12月の原油生産目標を11月から据え置くことを決定した。これにより、3ヵ月連続で増産が見送られることとなった。7ヵ国合計の生産目標は日量約3,101万バレルとなり、9月以来の水準を維持する。今回の声明では、世界の原油市場の動向や先行きを検討したうえで生産目標の据え置きを決定したと説明するとともに、各国が協調減産の枠組みを順守する姿勢をあらためて確認した。
【イラン情勢の緊迫化に伴う供給制約を背景に、生産目標と実際の生産量の乖離が続いている】
OPECプラス有志国は、2023年4月に発表し、翌5月から実施した日量165万バレルの自主減産について、段階的な縮小を進めてきた。2026年9月には、この自主減産の縮小を完了したものの、その後は10月、11月と生産目標を据え置いており、今回も同様の判断を下した。背景には、イラン情勢の緊迫化を受けて中東地域からの原油輸送に支障が生じており、各国が生産目標を引き上げても、実際の供給拡大につながりにくい状況が続いていることがある(図1)。特に、世界有数の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡では、船舶の航行を巡る安全上の懸念が残り、原油輸送に制約が生じている。湾岸産油国は代替輸送ルートの活用などによって輸出の回復を図っているものの、多くの国の原油生産量は依然として生産目標を下回っている。こうした状況では、生産目標を引き上げても実際の供給拡大につながる効果は限定的であり、有志国は現行の生産目標を維持することが妥当と判断したと考えられる。

実際、IEA(国際エネルギー機関)が公表した最新の石油市場月報によれば、9月の湾岸産油国の原油輸出量は日量1,390万バレルと、前月から同440万バレル増加したものの、イラン情勢が緊迫化する以前の水準の4分の3程度にとどまる。さらに、原油輸出は回復する一方、石油製品やLPG(液化石油ガス)の輸出量は依然として戦前の半分以下にとどまり、供給制約の解消には至っていない。10月には中東地域のエネルギー関連施設や船舶を対象とする攻撃が再び強まり、輸送を巡る不確実性も高まっている。このため、OPECプラスが生産目標を引き上げても、それが実際の原油供給量の増加に結び付くとは限らず、足元の供給不足を解消するうえでは、イラン情勢の安定化と原油輸送の正常化が不可欠といえる。
【原油市場では供給制約が価格を下支えする一方、高値の長期化による需要減退も懸念】
こうした供給制約は、国際原油市況を押し上げている(図2)。足元の原油価格は、イラン情勢が緊迫化する以前の水準を大きく上回るなど、原油市場では供給不足への警戒が根強く残っている。さらに、原油価格の高止まりに加えて海上輸送に伴う運賃や保険料なども上昇しており、原油や石油製品の調達コストを押し上げる要因となっている。こうした状況の下では、仮にOPECプラスが増産に踏み切ったとしても、供給制約が残る限り原油価格の大幅な下落にはつながりにくいと考えられる。

一方、原油価格の高止まりが世界経済の下押し圧力となることも懸念される。原油高に伴うエネルギー価格の上昇は、家計の実質購買力を低下させるとともに、企業の生産・輸送コストを押し上げることで、個人消費や設備投資などの重しとなる。IEAは、最新の石油市場月報において、2026年の世界の石油需要が前年比で日量260万バレル減少するとの見通しを示しており、供給制約に伴う石油製品の供給不足や価格高騰などが需要を下押しすると見込んでいる。このように需要の減退が進めば、将来的には原油需給が緩和する可能性もある。そのため、OPECプラスにとっては、足元の供給制約への対応だけでなく、原油高が世界経済や石油需要に及ぼす影響にも配慮した政策運営が求められる。
【今後の焦点は2027年の生産枠設定、供給回復に伴う需給緩和の可能性も課題】
先行きについては、OPECプラスが11月29日に予定する次回会合での協議が注目される。今回の有志7ヵ国による会合とは異なり、次回はOPECプラス全体の閣僚会合が予定されており、2027年の生産枠を巡る協議が主要な焦点になるとみられる。OPECプラスは、2023年4月の自主減産については9月に縮小を完了したものの、別途実施している日量約200万バレルの協調減産措置は2026年末まで維持している。2027年以降の政策運営を巡っては、この減産措置の取り扱いが重要な論点となる。さらに、加盟各国の持続可能な最大生産能力に関する評価を踏まえ、新たな生産基準を設定する方針であるものの、イラン情勢の悪化に伴う生産設備や生産能力の拡張計画への影響などが評価作業を複雑化させている。
その意味では、今後のOPECプラスの政策運営は一段と難しさを増すと予想される。イラン情勢の緊迫化が続き、原油輸送の制約が長期化すれば、世界的な供給不足が続くことで原油価格には上昇圧力が掛かりやすい。一方で、停戦協議の進展などをきっかけに原油輸送が正常化すれば、これまで供給が制約されてきた原油が市場に流入することにより、需給環境が一転して緩和する可能性がある。IEAは2027年の世界の石油供給量が前年比で日量770万バレル増加すると見込む一方、需要の回復幅は同200万バレルにとどまると予想しており、供給回復の進展に伴う需給緩和の可能性を示唆している。もっとも、OPEC(日量1億830万バレル)とIEA(同1億440万バレル)の需要見通しの間には大きな隔たりがあり、需給の先行きには不確実性が残る。したがって、OPECプラスにとっては、供給不足が続く現状と、将来的な供給過剰の双方をにらみながら、加盟国間の利害を調整していく必要がある。
日本をはじめとする原油輸入国にとっても、原油需給を巡る不確実性は景気や物価の先行きを左右する重要な要因となる。原油価格の高止まりは、輸入額の増加を通じて貿易収支に下押し圧力をもたらすほか、エネルギー価格や物流コストの上昇を通じてインフレ圧力を増幅させる懸念がある。一方、原油輸送の正常化によって供給量が回復すれば、原油価格の下落を通じてインフレ圧力が和らぐことも期待される。ただし、当面は中東情勢を巡る不透明感が根強く、原油価格は地政学的な動向に左右されやすい状況が続くと考えられる。今後は、次回のOPECプラス閣僚会合での協議内容に加え、ホルムズ海峡の航行状況、湾岸産油国の実際の生産・輸出動向、世界の石油需要の変化などを注意深く見極める必要がある。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

