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経済財政諮問会議(2026年9月30日)解説

〜年内に取り組むべき新内閣の課題、マクロ経済運営〜

永濱 利廣

要旨
  • 民間議員から、補正予算依存や単年度予算の弊害から脱却し、令和9年度を「責任ある積極財政元年」と位置づけ、重点投資枠の設定や、歳出見直し、生活支援を実施し、2040年に向けた「債務残高対GDP比の安定的低下」等により財政の信認を確保すべきとの提案。

  • 2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げた日銀から、経済はAI需要や雇用改善で緩やかに回復しており、基調的なインフレ率も2%の目標に近づいているため、物価の上振れリスクを注視しつつ、段階的に金融緩和を調整する方針との報告。

  • 民間議員から、長期金利の上昇や食料品高騰が中低所得者の負担となっているが、金利上昇は住宅ローン負担増となる一方、預金利子所得の増加や海外投資家による国債買い増し等のプラス面もあるため、政府・日銀が連携し、住宅ローン減税の周知や個人向け国債の新商品検討などを推進すべきとの提案。

  • 筆者提言として、食料品の消費税減税は直接的な実感を得やすい物価高対策であり、逆進性の緩和や危機時に柔軟に税率変更できる制度インフラの構築につながるとした。また、正確な税収実態と対話の側面から、令和8年度税収は過小見積もりであり、名目成長率3%なら90兆円規模に達する見込みのため、市場・メディアに対し実態に基づいた対話が必要とした。さらに、金利上昇の影響評価の観点から、家計全体では預金利子増の恩恵が大きく、また金利上昇により世界の優良機関投資家が日本国債に回帰するメリットもあるとした。そして、米金利の波及効果の側面から、 日本の長期金利上昇は「米国からの波及」が主因であり、日本の財政リスクが原因との見方は否定されるが、利払い費増加には留意し、成長率向上と財政持続性を両立させる必要があるとした。

目次

1. はじめに

2026年9月30日に開催された経済財政諮問会議では、年内に取り組むべき新内閣の課題とマクロ経済運営について議論が繰り広げられた。

そこで本稿では、会議資料を基に、諮問会議で展開された内容と筆者の意見を紹介する。

2. 「責任ある積極財政」の実行・定着

民間議員から、令和9年度予算の試金石として、同年度予算を「責任ある積極財政元年」とし、補正予算への恒常的な依存から脱却を図るとともに、単年度予算の弊害を是正する枠組みを構築すべきとされた。

また「強く豊かな日本」投資枠の設置の観点から、成長力・供給力の強化や経済安全保障等に寄与する分野へ重点投資を行い、PDCA/EBPMに基づいた見直しや複数年度での財源確保を検討すべきとされた。

続いて、歳入・歳出の一体改革の観点から、まず歳出の見直しとして、租税特別措置・補助金の見直し、特別会計・基金等の余剰金の返納・活用、従来の補正予算による物価高対策等の精査をゼロベースで実施すべき。また、家計負担の軽減として、時限的な飲食料品の消費税率引き下げ(2年間)、就業者負担軽減支援金、社会保障改革による保険料負担軽減が提示された。

さらに、財政の持続可能性の観点から、2040年を見据え、中核目標である「債務残高対GDP比の安定的な低下」や基礎的財政収支(PB)の複数年度改善を通じ、市場の信認を確保すべきとされた。

3. 金融政策と経済・物価見通し

日銀植田総裁から、金融政策の決定(2026年9月)として、政策金利(無担保コールO/N物)を1.0%程度から1.25%程度への引き上げが報告された。

経済・物価の現状と見通しとして、経済は緩やかな回復が続いており、中長期的なAI需要増加や雇用・所得環境の改善が下支えしているとされた。

物価については、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標(2%)」に近づいており、2026年度後半以降は2%を上回る場面も想定されるため、上振れリスクを注視しながら段階的に金融緩和度合いを調整する方針とされた。

4. 物価・金利環境の変化とマクロ経済政策運営

民間議員から、足元の経済・物価・金利環境として、最終需要は堅調で景気回復が持続しているものの、中東情勢や原油高、国際的な長期金利の上昇を受け、日本の10年債利回りも3%程度まで上昇しているとされた。また、実質賃金はプラスに転じているものの、コロナ禍以降の食料品価格の上昇速度が他財や賃金と比べて速く、中低所得者の負担となっているとされた。

続いて、金利上昇による影響と対応策として、家計面からは預金(1,018兆円)の利子所得が増加する一方、30〜40代を中心に住宅ローン負担が増加するため、子育て世帯等向けの金利引き下げ支援(フラット35の固定金利借換え対応等)や住宅ローン減税の周知を進めるべきとされた。また企業面では、全般として資金繰り環境は良好だが、規模や借入構成による影響差を見極める必要があるとされた。さらに国債市場面から、魅力ある個人向け国債の新商品設計等を検討し、安定的な国債保有構造を構築すべきとされた。

そして、政府・日銀の連携面から、政府と日本銀行が緊密に連携しつつ、予想物価上昇率の安定や経済成長と物価安定の両立を目指すべきとされた。

5. 筆者提言

以上を踏まえ、本会議において筆者は「年内に取り組むべき新内閣の課題」と「マクロ経済・財政運営」の観点から提言を行った。

まずは、飲食料品に対する消費税減税の効果についてである。具体的には、物価高対策としての即効性として、従来の政策(ガソリン補助金や電気・ガスの負担軽減策、高校授業料や給食負担軽減策等によりインフレ率1%ポイント程度の押し下げ効果)では国民に実感が届きにくかったため、購入頻度の高い食料品の税率引き下げは、国民が減税を直接実感できる非常に効果的な対策となるとした。また、欧州諸国のように危機時に付加価値税を機動的に変更・運用できる仕組み(インフラ)を日本でも構築・整備する観点から重要とした。さらに、価格競争の誘発と逆進性の緩和の側面から、店頭での価格競争を促してインフレ率を1%ポイント以上押し下げる効果が期待されるほか、食料品の支出割合が高い中・低所得者層の負担を直接的に軽減し、消費税の逆進性を緩和するとした。

次に、税収と市場・メディアとの対話についてである。具体的には、税収の見積もりと実態の側面から、令和8年度の税収見積もりは前年度実績を下回る過小見積もりであり、名目成長率3%を前提とすれば実際の税収は90兆円規模に達する見込みとした。また、実態を踏まえたコミュニケーションの観点から、市場やメディアの一部は税収増やプライマリーバランス改善の実態を視界に入れず歳出拡大のみを強調しがちであるため、確かなデータに基づいたバランスの良い対話が必要であるとした。

続いて、金利動向と経済・家計・企業への影響についても指摘した。具体的には、家計への影響(プラスとマイナス)の側面から、住宅ローンを抱える世代には負担となる一方、家計全体としては  金融資産が金融負債を上回っているため、預金利子所得の増加というプラス面も大きいとした。また、市場機能と国際投資家の回帰の観点から、利回り水準の上昇(金利の回復)により、ノルウェー政府年金基金をはじめとする海外のトップクラスの機関投資家が日本国債や円資産の保有比率を引き上げる動きを見せており、国債の安定的な保有構造や円安抑制に寄与することが期待されるとした。さらに、企業環境と政府・日銀の連携の観点から、全般的に企業の資金繰りは良好だが、今後の動向を注視しつつ、持続的な経済成長と物価安定に向けて政府と日本銀行が緊密に連携・協議を重ねる必要があるとした。

そして最後に、米国からの長期金利上昇(タームプレミアム)の波及効果について説明した。具体的には、グローバルな金利上昇の因果関係の観点から、2024年以降のデータに基づく分析(グレンジャー因果関係の検証)によると、長期金利の上昇・タームプレミアムの拡大は「米国から日本へ」波及していることが明確であるとした。また、日本の財政持続性への示唆として、日本の財政リスクが米国の長期金利を押し上げているという懸念は統計的に否定されるが、米国主導の金利上昇による利払い費の増加リスクには留意し、成長率を高めつつ財政の持続可能性と市場の信認を確保することが重要であるとした。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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