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2026.09.02
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4-6月GDPはRBAにとって「心地よい」可能性、豪ドルはどうなる?
~潜在成長率並みの水準で推移、当面は様子見姿勢の余地が生じる可能性も考えられる~
西濵 徹
- 要旨
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- このところの豪ドル相場は、日本と米国による協調介入や米国の国債バイバック拡大を背景とする米ドル安に加え、RBAの「タカ派」姿勢に支えられ、底堅く推移してきた。RBAは8月会合で政策金利を据え置いたものの、ブロック総裁はインフレの上振れリスクを警戒し、追加利上げの可能性を示唆した。7月のインフレ率は鈍化したものの依然として目標レンジを上回り、コアインフレも高止まりしていることから、物価上昇への警戒は続いている。
- 一方、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+1.69%と前期から加速したが低い伸びにとどまり、景気は鈍化基調にある。ただし、前年比では+2.1%とRBAが物価安定と両立可能とみる2%程度の成長率に近く、想定をわずかに上回るなど、金融政策運営上は「心地よい水準」にあると考えられる。設備投資や公共投資は弱含む一方、エネルギー資源輸出や個人消費、サービス業が景気を下支えしたほか、景気の実態は数字以上に底堅い可能性がある。
- 先行きは、原油高によるインフレ圧力と、LNG・石炭価格上昇による交易条件改善が景気に相反する影響を及ぼすとみられる。さらに、高金利や物価高、不動産価格の下落が家計消費を下押しする可能性もある。このため、RBAにとっては当面、追加利上げを急がず様子見を続ける余地が生じているとみられる。こうしたなか、豪ドルは対米ドルでは上値が重くなる一方、円安圧力が続けば対円では底堅く推移する可能性がある。
- 目次
【RBAの「タカ派」姿勢が豪ドル相場を下支えする展開が続いている】
このところの金融市場においては、豪ドルが強含みする展開が続いている。日本と米国による協調介入に加え、米国によるバイバック(長期国債の買い入れ消却)の倍増表明を受け、その後の米ドル指数が軟調な動きを強めたため、豪ドル相場は一時2ヵ月半ぶりの高値をつけた。足元ではFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ実施が意識され、米ドル指数が持ち直しの動きをみせたことを反映して頭打ちしているものの、依然として底堅く推移している(図1)。背景には、RBA(オーストラリア準備銀行)が「タカ派」姿勢を維持していることがある。RBAは8月会合で政策金利を2会合連続で据え置く一方、ブロック総裁は会合後の記者会見においてインフレの上振れリスクを警戒し、必要に応じて追加利上げに動く可能性に言及した。このため、その後の金融市場ではRBAによる追加利上げが意識されるとともに、豪ドル相場の強含みを後押しした。

2024年の中銀法改正により、RBAの金融政策は、物価安定と完全雇用の維持という「デュアルマンデート」に基づいて運営されている。このため、市場では物価統計と雇用統計の動きが注目される。こうしたなか、7月のインフレ率は前年同月比+3.5%と前月(同+3.8%)から鈍化したものの、13ヵ月連続で目標レンジを上回る伸びで推移していることが確認された(図2)。前月比は+1.02%と前月(同▲0.06%)から3ヵ月ぶりの上昇に転じ、原油高再燃によるエネルギー価格の上昇に加え、生鮮品をはじめとする食料品価格も上昇するなど、生活必需品を中心にインフレ圧力が強まっている。コアインフレ率(トリム平均ベース)は前年同月比+3.6%と前月(同+3.6%)から2ヵ月連続の横ばいとなり、10ヵ月連続で目標レンジを上回る伸びで推移している。前月比も+0.49%と前月(同+0.28%)から上昇ペースが加速し、財・サービスともに、さらに財価格については貿易財・非貿易財ともに上昇圧力がかかっている。コアインフレの高止まりが確認されたことを受けて、RBAが懸念するインフレリスクの高さが警戒される状況が続いている。

【足元の景気は鈍化基調が続くも、RBAにとって「心地よい水準」となっている可能性】
イラン情勢の悪化による原油などの価格上昇は、世界的にインフレを招いている。オーストラリアは世界の石炭輸出量の4分の1、LNG(液化天然ガス)輸出量の2割を占めるなど、エネルギー資源が豊富である。原油や石油製品、天然ガスの貿易収支はGDP比+0.8%程度の黒字と試算されるため、エネルギー価格の上昇はマクロ的に景気の押し上げ要因となり得る。しかし、このところの原油高は供給要因を理由としており、同国も供給制約に直面している。同国は原油備蓄が乏しいうえ、国内で稼働する製油所は2つにとどまり、燃料需要の8割を輸入に依存する。一方で、世界的なLNG需要の高まりに加え、石炭回帰の動きを反映してこれらの価格は高止まりしており、交易条件の改善が国民所得を押し上げるなど、景気の追い風となる可能性もある。
こうしたなか、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+1.69%と前期(同+1.15%)から加速したものの、2四半期連続で2%を下回る伸びにとどまった(図3)。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+2.1%と前期(同+2.5%)から鈍化して3四半期ぶりの低い伸びにとどまったものの、RBAが想定する「物価上昇を引き起こすことなく経済成長が可能となる水準=2%を大きく上回らない水準」に近付いている。また、RBAが8月会合時点で想定した成長率(前年比+1.9%)をわずかに上回っており、「心地よい水準」で推移していると捉えられる。

需要項目別の動きをみると、前期はトランプ関税の本格発動を前にした駆け込みの一巡、サイクロン被害の影響も加わる形で輸出は下振れしたものの、当期はその反動が出るとともに、エネルギー資源の需要が押し上げられたことも重なり輸出は拡大に転じている。一方で、RBAによる断続的な利上げ実施を前にした、企業部門による設備投資や不動産投資の駆け込みの反動が出る形で固定資本投資は下振れしている。さらに、公共投資の進捗鈍化も固定資本投資の重しとなったほか、政府消費も力強さを欠いている。また、月次の雇用統計は上下に振れる展開をみせているほか、断続的な利上げやインフレの影響が懸念されたものの、個人消費は引き続き底堅く推移している。なお、在庫投資による成長率寄与度は前期比年率ベースで▲0.39ptと2四半期連続のマイナスとなり、在庫解消の動きが景気の足かせとなった可能性がある。このため、足元の景気の実態は、数字が示すより底堅い可能性がある。
分野ごとの生産動向も、LNG・石炭などエネルギー資源輸出の堅調さを反映して鉱業部門の生産が拡大している。一方で、設備投資需要が頭打ちしたほか、原油供給の懸念やコスト上昇などが足かせとなる形で製造業の生産は5四半期ぶりの減少に転じるなど、拡大の動きに一服感が出ている。設備投資需要や不動産投資の一服、公共投資の進捗低迷の動きが懸念される一方、世界的なAI(人工知能)関連需要の旺盛さを反映したデータセンター建設が下支え役となり、建設業の生産は緩やかな拡大が続いている。そして、イラン情勢の悪化を受けた化学肥料価格の上昇のほか、異常気象の頻発も重なり農林漁業の生産も鈍化している。しかし、前述のように個人消費が底堅く推移しているほか、世界的な金融取引の活発化やIT需要などが下支え役となる形でサービス業の生産は拡大基調が続いており、足元の景気を下支えしている。
【RBAに様子見姿勢を維持する余裕が生じるなか、豪ドル相場はどうなるか?】
先行きの同国経済を巡っては、不透明要因が山積している。イラン情勢も見通しが立たず、原油などエネルギー価格の高止まりが懸念される展開が続く可能性は高まっている。ただし、LNGや石炭価格の高止まりは、交易条件の改善を通じて国民所得を押し上げると期待されるため、プラス・マイナス双方の影響が綱引きの様相となる展開が続くと予想される。
しかし、同国はガソリン・軽油など燃料需要の大部分を輸入に依存しており、価格の高止まりはインフレ圧力を招きやすい。さらに、足元の個人消費は引き続き底堅い動きをみせているが、物価高と高金利の共存が実質購買力の足かせとなるなか、雇用環境の行方も見通しにくい状況にある。そのうえ、RBAによる断続的な利上げに加え、不動産価格抑制を目的とする政府の税制改革の影響も重なり、不動産価格は下落基調に転じるなど変化の兆しがみられる(図4)。同国の家計債務はGDP比で110%を上回るなど世界的にも高水準であり、その大部分を住宅ローンが占めるため、不動産価格の動向は資産効果を通じて個人消費を左右する傾向がある。このため、先行きの個人消費にとっては、不動産価格の下落による逆資産効果が重しとなる可能性にも注意が必要になっている。

このため、RBAにとっては様子見姿勢に転じる余裕が生じていると見込まれ、当面の豪ドルは米ドルに対して上値が抑えられる可能性が考えられる。その一方、日本円に対しては円安が意識されやすい状況が続くなかで、結果的に豪ドルが対円では底堅い推移をみせる局面が想定される。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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