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トランプ政権が強制労働を巡る関税案を公表

~粛々と進む代替措置の準備~

前田 和馬

6月2日、米通商代表部(USTR)は強制労働対策が不十分として、通商法301条に基づく60か国・地域への追加関税案を公表した。追加関税率は強制労働品への部分的な輸入対策がみられる14か国・地域(EU、カナダ、メキシコ、インドネシアなど)は10%、それ以外の国々(日本、中国、豪州など)には12.5%が適用される。対象は原則全ての輸入品となるものの、自動車などの品目別関税(232条関税)の対象品目や多くの食料品は除外されるほか、衣料品などに関しては関税率の軽減措置がとられる。

同提案は7月24日に失効する一律10%関税の代替的な措置とみられる。トランプ政権は2025年4月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税を導入したものの、同関税は26年2月に連邦最高裁で違憲判決が下され、撤回を余儀なくされた。現在は通商法122条に基づく10%関税を実施しているものの、同措置は7月24日に失効する(議会が承認すれば延長は可能であるものの、その可能性は低い)。

USTRが公表した報告書では、他国の強制労働により米国の輸出が悪影響を受けている事例として「マラウイのたばこ」「ミャンマーの米」「ブラジルの冷凍牛肉」、強制労働品が第三国を経由して米国の商取引に悪影響を及ぼしている事例として「中国のポリシリコン(太陽光パネル材料)」「中国の綿花」をそれぞれ指摘した。各国がこうした製品の輸入を制限しないことは、強制労働の根絶という普遍的目標を損ない、世界における公平な競争環境や米国企業の利益を損なう懸念を強調している。

同提案による関税措置は確定しているわけではなく、今後の公聴会や各国の交渉を経て、関税率や対象品目は変更される可能性がある。また、主要な貿易相手である16か国・地域に対する「過剰生産能力」への301条調査も現在進行中であり、両者を合わせた最終的な関税率の着地点が注目される。なお、3月に開始した301条調査を短期的に完了できるかは不透明との見方があったものの、トランプ政権は7月下旬の関税失効を見据えて、代替措置の準備を着々と進めている。とはいえ、仮に一部品目における強制労働への懸念があろうとも、その対策として多くの国の広範な輸入品へ関税を課す正当性があるのかは議論の余地がある。このため、今回の調査を基にした301条関税が発動される際には、民主党系の州政府や一部の企業が関税の無効を求めて政権を提訴する可能性がある。

以 上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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