- 要旨
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- 日経平均株価は先行き12ヶ月57,000円程度で推移するだろう
- USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
- 日銀は利上げを続け、政策金利は26年7月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
- FEDはFF金利を26年6月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう
金融市場
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前営業日の米国市場は、S&P500が▲1.3%、NASDAQが▲1.6%で引け。VIXは29.5へと上昇。
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米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.352%(+3.1bp)へと上昇。
実質金利は1.783%(▲2.9bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+57.4bpへとプラス幅拡大。
- 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは157後半で推移。WTI原油は90.9㌦(+9.9㌦)へ上昇。銅は12862.0㌦(▲40.0㌦)へ低下。金は5158.7㌦(+80.0㌦)へ上昇。
注目点・経済指標等
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世界的に原油高が懸念事項となるなか、2月米雇用統計は失望的な結果であった。1月雇用統計が示した労働市場の底堅さは帳消しとなり、脆さが浮き彫りになった。
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雇用者数は前月比▲9.2万人と市場予想(同+5.5万人)に反して減少した。過去分の下方修正は同▲6.9万人となり、雇用者数変化の3ヶ月平均値は同+0.6万人、6ヶ月平均値は同▲1.0万人とゼロ近傍で推移。雇用の量的拡大は風前の灯火とも言うべき状態にある。

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業種別にみると、これまでの雇用増に貢献してきた教育・ヘルスケアが前月比▲3.4万人と減少に転じた。その他では、金融が同+1.0万人の増加であったが、宿泊・飲食が同▲2.7万人、製造業が同▲1.2万人、建設が同▲1.1万人、運輸・倉庫が同▲1.1万人、ITが同▲1.1万人、専門職が同▲0.5万人と広範な業種で弱さがみられた。
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失業率は4.41%へと0.15%pt上昇した。人種別では、黒人が7.7%へと0.5%pt上昇したほか、アジア系が4.8%へと0.7%ptもの上昇となった。白人の失業率が目立って低い状況はK字型経済を象徴する。この間、失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人等を失業者と見なす基準は7.9%(前月8.1%)へと低下した。この点は2月雇用統計で唯一の救いであった。逆に言えば、それ以外に良い所はほとんどなく、たとえば労働参加率は62.05%へと0.53%ptも低下した。雇用の吸収力に疑問を呈する数値である。
- 平均時給は前月比+0.4%となり、前年比では+3.8%となった。もっとも、瞬間風速を示す3ヶ月前比年率(3ヶ月平均)は+3.52%とやや減速基調にあり方向感は定まらない。この間、週平均労働時間は34.3時間と過去2年の平均的な値となり、この結果、民間名目総賃金(就業者数×時給×労働時間)は4%台前半へと減速した。
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これまでのところGDPの約7割を占める個人消費が堅調に推移していることから、景気後退が間近に迫っている訳ではない。しかしながら、「雇用増なき景気拡大」の持続性は心許ない。仮に株安が進行すれば、米国経済を支えてきた富裕層の高額消費は減衰し、個人消費は全体として鈍化する公算が大きい。もちろん原油価格が高止まりすれば、低所得者を中心に所得が蝕まれる。
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なお、原油価格上昇と労働市場悪化という組み合わせは、Fedの金融政策を難しくさせる。産油国の顔を持つ米国は、原油高の影響が(日本ほど)甚大ではないものの、それでもインフレへの警戒は高まる。労働市場の軟化に対応して利下げを進めるというのが、現時点における金融市場参加者の中心的な見方であるが、原油価格次第では利下げに慎重にならざるを得ないだろう。その点、日銀の悩みはそれほど深刻ではない。日本にとって原油価格上昇は、交易条件の悪化を通じてデフレ的な圧力を生じさせる(GDPデフレーターの低下要因)。インフレの「質」にこだわる日銀は、原油高由来の表面的な物価上昇を「基調的」なものとみなすことはないと考えられる。原油高は利下げを遅らせる要因となるだろう。
藤代 宏一
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