- 要旨
-
- 日経平均株価は先行き12ヶ月66,000円程度で推移するだろう
- USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
- 日銀は利上げを続け、政策金利は26年6月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
- FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう。
- 6月3日に植田総裁が講演を実施した。この講演は6月15~16日の金融政策決定会合における利上げの有無を探る観点から非常に注目されていた。結論を先取りすると、植田総裁は6月の利上げを比較的強く示唆した。以下で講演のポイントを整理する。太字は植田総裁の講演原稿。
<はじめに>
本日は、私どもの経済・物価に対する見方をご説明したうえで、今回のような供給ショックに対する政策対応のあり方を含め、日本銀行の金融政策運営の考え方について、お話ししたいと思います。
→本題は供給ショックと金融政策であり、現在進行中のインフレにどう対応するかについて考え方を示した。
<中東情勢の影響と経済・物価情勢>
輸入価格が上昇すれば、その分、海外への所得流出が増加し、企業収益や家計の実質所得を圧迫することになります。
→原油価格は交易条件の悪化を通じて企業や家計の所得を蝕む。これは原油由来の外生的インフレに対して利上げが必ずしも適切ではないことを示す際によく使われる考え方である。
原油価格上昇を起点とする価格転嫁のスピードはこれまでよりも速く、かつ、幅広い品目の値上げに波及しやすくなっている可能性が高いと考えています。
→2022年以降、デフレマインド解消によって企業の価格設定行動が積極化しているため、過去の原油高とは異なる反応がみられる可能性に言及した形。
<中東情勢の影響と経済・物価情勢>
人手不足感が強い状況が続くなかで、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると見込まれることなどから、一時的な変動要因を除いた基調的な物価上昇率も徐々に高まっていき、今年度後半から来年度にかけて「物価安定の目標」である2%と概ね整合的な水準になると考えています
→デフレ期における原油高は、賃金上昇率が低かったことから賃金と物価の相互刺激的上昇は観察されなかった。それに対して現在は賃上げの流れが既にある。これが過去との大きな相違点であり、金融政策もそれに応じて変化することを意味していると考えられる。
中東情勢を巡る混乱が長期化し、原油価格が高止まりした場合には、中心的な見通しに比べて経済が下振れる一方、物価が上振れる可能性があります。
→物価の上振れリスクを再度指摘。経済・物価の中心的な見通しは、原油先物のカーブに沿って原油価格が下落していくことを前提に置いている。この前提は「楽観的」との評価が多い。
<金融政策運営>
供給ショックによる物価上昇は、通常、一時的ないし特定の品目の範囲内にとどまり、私どもが重視している基調的な物価上昇率に大きな影響を及ぼさないと考えられるため、金融政策では対応しない、というのが基本的な考え方です。
→4月の金融政策決定会合で利上げを据え置いた理由のひとつ。
供給ショックが発端であっても、状況次第では、物価上昇の動きが広範囲に広がり、それが人々の予想物価上昇率の上昇を通じて、基調的な物価上昇率の上振れにつながる可能性があります。このような「2次的波及効果」が生じる可能性がある場合、持続的な物価の安定を目指す中央銀行としては、金融政策によって必要な対応を講じることも検討しなければなりません。
→今後の利上げの論拠になる。
企業の賃金・価格設定行動が積極的であればあるほど、物価上昇の波及効果は早く、大きくなるほか、金融環境が緩和的な状態にあれば、その分、波及効果を後押しすることになると思われます。
→実質政策金利がマイナスの状況では物価の上振れリスクが高まるとの認識。早期かつ大幅な利上げが選択肢にあることを示唆しているように思える。
価格転嫁の動きが限定的で、賃金も殆ど上がらなかった4年前と異なり、現在は、賃金と物価が相互に参照しながら上昇していくメカニズムが復活しています。金融環境についてみると、政策金利が中立領域にあるとみられる米欧とは異なり、わが国の実質金利はなお低く、緩和的な状況にあります。このように、現在のわが国は、他の主要国や過去のわが国と比べても、原油高を起点とする物価上昇の「2次的波及効果」が基調的な物価の上振れに繋がりやすい状況にあり、日本銀行としても、このことを前提に、今後の政策を判断していく必要があると考えています。
→欧米対比で物価の上振れリスクが大きいとの認識。筆者の知る限り、これは初めて示す見解。個人的には、労働組合の力が強く賃金インフレが発生しやすい欧州、労働市場が流動的で賃金インフレが発生しやすい米国よりも、日本の二次的波及効果は弱いと判断しているが、日銀は強い警戒感を抱いているようだ。
日本銀行としては、経済の下振れリスクを意識しつつも、物価上昇率が大きく上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことを、より警戒する必要があると考えています。
→政策態度が「物価>景気」に傾いていることを示した形。
経済の下振れリスクに比べて、物価の上振れリスクが高まると判断される場合には、それが経済や金融市場に悪影響を及ぼすことを防ぎ、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現していく観点から、利上げの是非についてしっかりと議論する必要があると考えています。
→2025年12月の金融政策決定会合は、それに先立つ講演で「利上げの是非について、適切に判断したいと考えています」と、かなり明示的に利上げを示唆していた。それほど直球ではないが、「利上げ」の語句を用いたことは、十分に踏み込んだ印象がある。
講演内容を踏まえると、6月に利上げが決定される可能性はかなり高いと判断される。原油価格次第では、「半年に一度」という暗黙の前提が変わり、10月会合に追加利上げが決定される可能性がある。
藤代 宏一
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

