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2026年1月FOMCプレビュー

様子見

前田 和馬

要旨
  • 1月FOMC(1/27~28開催)において、FRBは政策金利を据え置く見通しだ。FRBは2025年9月以降に3会合連続の利下げを実施しており、政策金利が中立水準に近付くなか、雇用の下振れリスクとインフレの高止まりリスクを見極める姿勢を示すとみられる。

  • ハト派のFOMCメンバーが引き続き利下げを主張するかが注目される。ミラン理事は2026年に1.5%ptの利下げを求めているほか、次期議長候補であるウォラー理事も1.0%ptの利下げ余地に言及しており、据え置きに反対票を投じる可能性がある。

  • 26年5月に任期を迎えるパウエルFRB議長の後任は近々発表されると見込まれる。一方、司法省によるパウエル議長への刑事捜査が、上院における後任議長承認の懸念として浮上している。

4会合振りの据え置き

1月FOMC(1/27~28開催)において、FRBは4会合振りに政策金利を据え置く見通しだ(政策金利: 3.50~3.75%)。FRBは2025年9月以降に3会合連続の利下げ(計0.75%pt)を実施しており、政策金利は中立水準とみられる3%前後へと近づきつつある。雇用の下振れリスクと関税によるインフレの高止まりリスクが残るなか、FRBは経済・物価の今後の展開を注視する姿勢を示すとみられる。FF金利先物に基づく1/21時点のFedWatchによると、同FOMCにおける据え置き予想は95%に達しており、0.25%ptの利下げ予想は5.0%留まる(図表1)。

12月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+5.0万人(11月:+5.6万人)と2か月連続で増加した。内訳をみると、引き続き医療・社会福祉の押し上げが目立っており、景気に敏感な専門・企業サービスや製造業の雇用は低調に推移している。また、失業率は4.4%(4.5%)と低下するなど、足下の悪化傾向に一服感がみられた。一方、11月の有効求人倍率(=求人数÷失業者数)は0.92(10月:0.98[当社試算値])と1倍割れに陥っており、解雇が広範化する場合には失業率が急騰するリスクがある。他方、12月の消費者物価指数は食品・エネルギーを除くコアベース指数で前月比+0.2%と、引き続き財価格を中心に関税による価格転嫁は限定的に留まっている。

1月地区連銀経済報告(ベージュブック;1月5日までの情報に基づく)では12地区中8地区で「経済活動は僅かに拡大した」とまとめられた。「雇用は概ね変化がなかった」と述べ、複数の地区で臨時労働者が増加し、採用は新たなポジションではなく欠員補充に活用されていると指摘された。また、「価格は緩やかに上昇した」と言及されたものの、企業は先行きの上昇率が鈍化すると予想している。

なお、1月FOMCまでに10・11月分のPCEデフレーターが1月22日に公表される(政府閉鎖の影響で公表が遅れており、2か月分をまとめて公表)。11月のコアPCEデフレーターの市場予想は前月比+0.2%と、緩やかな上昇が持続した可能性が高い。なお、PCEデフレーター作成にはCPI上の価格データが一部に用いられる一方、政府閉鎖の影響で10月分CPIは作成されておらず、こうした10月分の欠損データは9・11月の平均値で代替される。このため、特に前月比や3か月前比の結果に関しては一定の幅を持ってみる必要がある。

反対票の動向

12月FOMCの声明文においては、雇用判断における「失業率は低水準」との表現が削除されたほか、先行きの政策判断では「政策金利の更なる調整の程度と時期を検討するにあたり、委員会は今後のデータ、変化する見通し、リスクバランスを慎重に評価する」と、2024年12月と同様、「更なる調整の程度と時期」との表現を追加することで利下げペースを緩めることが示唆された。1月FOMCにおいても、こうした経済・物価判断を概ね維持する可能性が高い。

1月FOMCにおける金利据え置きの判断は、パウエル議長を中心とした理事メンバーの賛成多数で決定されると見込まれる。一方、ミラン理事は2026年に1.5%ptの利下げが適切と主張しており、本FOMCでも利下げを求めて反対票を投じる可能性が高い。なお、同氏は1/31に理事としての任期が切れるが、後任が指名されるまで留任の意向を示している。また、次期議長候補の一人であるウォラー理事もこうしたハト派スタンスを示すかが注目される。12/17、ウォラー氏は労働市場の冷え込みを緩和することが最優先であり、今後1.0%ptの利下げ余地があると指摘している。

パウエル議長の記者会見

12月FOMC後の記者会見において、パウエル議長は労働市場に対する懸念が3会合連続の利下げの背景にあると指摘した。また、インフレ動向を巡っては「関税の影響を除けば、インフレ率は2%台前半」、「26年Q1に高関税による財インフレがピークを迎える」、「景気過熱による(フィリップス曲線的な)インフレは見られない」及び「関税インフレは一時的に留まると想定するのが基本シナリオ」などと主張し、インフレ高止まりの可能性に否定的な見解を示した。1月FOMC後においても、パウエル議長は労働市場への警戒感を示す一方、政府閉鎖によるデータの歪みには留意が必要であるものの、足下でインフレの見通しとリスクが大きく変わっていないことを指摘する可能性が高い。また、引き続き先行きの政策変更はデータに基づき判断する姿勢を強調するだろう。

現パウエルFRB議長の任期は26年5月までであり、トランプ大統領は新たな議長候補を近々公表する方針だ。18日、従来有力視されていたハセット国家経済会議(NEC)委員長が自身は現職に留まる可能性を示唆するなか、現職のウォラーFRB理事、ウォーシュ元FRB理事、資産運用会社ブラックロックのリーダー氏などが引き続き候補に挙がっている。何れの候補が選ばれようとも、当面はパウエル議長よりも積極的な利下げスタンスを示すだろう。一方、司法省はパウエル議長の議会証言を巡り刑事訴追する可能性を示唆するなど、トランプ政権によるFRBへの政治的圧力が強まっている。同捜査には一部の共和党議員からも懸念の声が示されるなど、トランプ大統領がFRB議長の後任を指名しようとも、その後の上院承認が円滑に進行しないリスクが浮上している。

図表
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以上

前田 和馬


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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