米国 雇用増も基調は弱く失業率は上昇(9月米雇用統計)

~9月までの労働市場の緩やかな軟化を示す~

桂畑 誠治

要旨
  • 政府機関の一部閉鎖によって公表の遅れていた9月の雇用統計が、政府機関の再開を受けて、11月20日に公表された。10月分に関しては11月分と同時に12月16日に公表される予定。
  • 25年9月の非農業部門雇用者数(事業所調査)は、前月差+11.9万人(前月同▲0.4万人)と増加に転じ、市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の同+5.1万人(筆者予想同+5.2万人)を上回った。政府部門が同+2.2万人(前月同▲2.2万人)と増加に転じたうえ、民間部門は同+9.7万人(同+1.8万人)と市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の同+6.5万人を上回って、加速した。7、8月合計で非農業部門雇用者数は、▲3.3万人の下方修正となった。 米雇用の基調をみると、非農業部門雇用者数が3カ月移動平均で前月差+6.2万人(前月同+1.8万人)と加速したが緩やかな増加ペースにとどまっているほか、6ヵ月移動平均では前月差+5.9万人(同+5.9万人)と緩やかなペースで変わらなかった。
  • 民間部門では、医療・社会支援が強い需要や人手不足を背景に、同+5.71万人と引き続き最大の増加となったうえ、飲食店(同+3.65万人)、建設業(同+1.9万人)、小売業(同+1.39万人)、芸術・エンターテイメント・余暇(同+1.27万人)が高い伸びとなった。また、卸売業(同+0.94万人)、不動産・リース(同+0.29万人)、教育サービス(同+0.18万人)、商業銀行(同+0.13万人)等が増加した。情報産業は同0.0万人と横ばい。一方、輸送・倉庫(同▲2.53万人)、派遣業(同▲1.59万人)、製造業(同▲0.6万人)、鉱業(同▲0.3万人)、専門・技術サービス(同▲0.28万人)、宿泊(同▲0.23万人)、その他サービス(同▲0.2万人)、保険(同▲0.07万人)が減少した。
  • 金融市場では、9月の非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったが、失業率が予想外に上昇したこと等を受け、FF金利先物の示す12月の利下げの可能性が約40%(前日約30%)に上昇し、据え置きの可能性が約60%(前日約70%)に低下した。また、2年国債金利、10年国債金利は低下した(P6)。ドルは主要通貨に対して弱含んだが、ドルが買い戻されるなど反応は限定的だった。主要株価指数は一旦上昇したものの下落に転じ、水準を切り下げた。 トランプ2.0では、制度や政策の大幅な変更を多数の大統領令によって早期に実行しているため、混乱を招き、米経済は減速している。通商政策では、関税の賦課・撤回・上乗せの実行や、大幅な追加関税賦課などの発言を繰り返すことで不確実性を高めたため、企業が採用抑制や人員削減の動きを強め、民間部門雇用の増加ペースを鈍化させた。また、移民規制や不法移民の取り締まりの強化によって、労働供給の抑制に繋がっている。
  • 平均時給は、前月比で+0.2%(前月+0.4%)と市場予想中央値+0.3%(筆者予想+0.3%)を下回った。前年同月比では+3.8%(前月+3.8%)と変わらず、市場予想中央値+3.7%(筆者予想+3.7%)を上回った。依然として物価上昇を上回る伸びを維持し個人消費を支えているものの、22年3月の前年同月比+5.9%をピークに低下傾向を辿っている。労働投入量は、前月比で+0.1%(前月同▲0.3%)と増加に転じ、3ヵ月移動平均・3ヵ月前対比年率で0.0%(前月▲0.5%)と横ばいとなったが、労働需要の弱い状況が続いている。8月には、20年7月以来のマイナスに転じ、労働需要の縮小が示されていた。
  • 9月の失業率(U3、家計調査)は、4.4%(前月4.3%)と市場予想中央値4.3%(筆者予想4.3%)を上回り、21年10月の4.5%以来の高い水準となった。再び職探しを始めた人の増加によって失業者が増加した。労働参加率も62.4%(前月62.3%)と上昇した。労働市場の緩やかな軟化傾向を示している。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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