- Economic Trends
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2025.11.17
日本経済
日本経済見通し
景気全般
景気指標(日本)
2025~2026年度日本経済見通し(2025年11月)(2025年7-9月期GDP1次速報後改定)
新家 義貴

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実質GDP成長率の見通しは25年度が+1.0%(9月時点予測:+0.7%)、26年度が+0.8%(同+0.7%)である。暦年では25年が+1.3%(同+1.1%)、26年が+0.6%(同+0.5%)となる。過去の数値が遡及改定されたことに伴って、25年度への成長率のゲタが0.2%Pt上方修正されたことや、米国経済が想定よりも底堅く推移していること等を理由として、25年度を中心に成長率見通しを上方修正した。なお、成長率見通しは25年度の方が26年度よりも高いが、これは成長率のゲタの影響が大きい。ゲタを除いた年度内成長率では25年度が前年比+0.3%、26年度が同+0.7%となる。
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25年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率▲1.8%のマイナス成長となった。法改正に伴う駆け込み需要からの反動減によって住宅投資が急減したことが押し下げたほか、輸出が減少したことも影響した。もっとも、住宅投資の落ち込みは一時的なものにとどまる可能性が高いことに加え、輸出も4-6月期の増加からの反動が生じた面もあるため、7-9月期の成長率の弱さについて過度に悲観視する必要はない。これまでのプラス成長と均してみれば景気は上向きと判断できる。米国経済が関税引き上げのもとでも底堅さを保っていることで、当初懸念されていたような日本からの輸出が失速する事態は避けられており、景気腰折れに直結する動きは現時点で確認されない。
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もっとも、輸出の先行きには不安が残る。米国経済は底堅く推移しているが、方向としては減速傾向にある。関税引き上げの価格転嫁も徐々に進んでいくことに加え、雇用情勢に陰りが出ていることが、低所得者層を中心として個人消費を下押しするだろう。また、日本からの対米自動車輸出については、これまでは輸出価格を関税の分だけ引き下げることで現地での販売減を回避してきたが、関税率が15%に定まったことで今後は値上げに踏み切る可能性が高く、米国内での販売台数も下押しされるだろう。輸出は10-12月期も減少する可能性が高い。住宅投資の落ち込みに歯止めがかかることや設備投資の増加によって10-12月期のGDP成長率はプラスに転じるとみられるが、輸出の下押しが影響することで、7-9月期の落ち込みと比べると小幅な持ち直しにとどまるとみている(前期比年率+0.4%と予想)。牽引役に欠けるなか、年度下期の日本経済は緩やかな持ち直しにとどまるだろう。
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26年度の景気は緩やかに持ち直すと予想する。米国では、関税引き上げによる悪影響が残るものの、これまでの利下げの効果がタイムラグをもって景気を支える。減税の実施も米国経済の押し上げに寄与するだろう。米国景気が安定に向かうことで、日本からの輸出も底入れが予想され、企業業績の悪化にも歯止めがかかるだろう。収益環境の好転や先行き不透明感の和らぎから、設備投資も緩やかな増加が期待できる。
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もう一つの好材料が実質賃金の下げ止まりである。26年春闘では、賃上げ率を5.20%(厚生労働省ベース)と、3年連続で5%台の賃上げが実現すると予想する。①深刻化する人手不足、②歴史的な物価高の継続と実質賃金減少への対応、③高水準の企業収益、が賃上げに寄与するだろう。こうしたなか、コストプッシュの一巡に伴って物価上昇率が鈍化することで、実質賃金はマイナス圏から脱すると予想している。このことが個人消費の安定化につながるだろう。もっとも、実質賃金の増加幅は小幅で、個人消費が力強く伸びることまでは期待できない。あくまで緩やかな回復にとどまるとみられる点には注意が必要である。
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リスク要因は、①日中関係の悪化と②米国株式市場の動向である。中国からの訪日自粛が長期化すればインバウンド需要の減少を通じて景気に悪影響を及ぼす。これまでインバウンド需要が景気を支えてきた面があったため、仮に下振れれば影響は小さくない。また、インバウンドにとどまらず、仮に日本企業への不買運動や貿易取引の縮小までエスカレートすれば、悪影響は一段と広がるだろう。また、米国の株価は、AI関連需要への将来の強い期待から好調な推移を続けているが、足元では過熱感を警戒する声も上がっている。今後なんらかのきっかけで期待が後退した場合、一定の調整が生じる恐れがある。米国経済の底堅さには、高所得層における資産効果が大きな役割を果たしているとみられることから、株価動向には注意が必要である。
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消費者物価指数(生鮮食品除く総合、CPIコア)は25年度が+2.7%、26年度が+1.8%と予想する。円安が進んでいることもあってこの先も食料品値上げが実施される可能性が高いが、前年の上昇率が高かったことの裏が出ることにより、前年比では伸びの鈍化が見込まれる。加えて、ガソリンの旧暫定税率廃止に加え、電気・ガス代補助金が今冬も実施されることもあり、26年1-3月期にCPIコアは前年比+2%を下回るとみられる。26年度についても、サービス価格の上昇が押し上げ要因となる一方で、コストプッシュによる食料品価格の上昇が一巡することから、CPIコアは前年比+2%をやや下回って推移する可能性が高い。



新家 義貴
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