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2025.11.13
アジア経済
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豪州・10月雇用は金利据え置きを後押し、豪ドル相場は堅調続くか
~豪ドルは米ドルに対して底堅さが、日本円に対しても堅調な推移が見込まれる~
西濵 徹
- 要旨
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- オーストラリア準備銀行(RBA)は11月4日の定例会合で政策金利を3.60%に据え置いた。RBAは年明け以降に計3回、計75bpの利下げを実施してきたが、7-9月のインフレ率が前年比+3.2%と目標の上限を上回ったため、市場では据え置きが予想されていた。RBAは想定を上回る物価上昇を認めるも、物価上昇は一時的要因によるとして2026年の利下げの可能性を残した。しかし、RBAのブロック総裁は現行の金利水準が中立水準に近いとの認識を示し、利下げの可否も明言せず、タカ派姿勢に傾く動きをみせた。
- こうしたなか、10月の雇用統計では失業率は4.3%に改善するとともに、正規雇用が増加するなど動労需給のひっ迫が続いているなど、雇用情勢の堅調さが確認された。不動産価格も上昇基調を強めており、金融緩和の余地が狭まっている様子がうかがえる。これらを背景に、金融市場では利下げ観測の後退は避けられない。米ドル高が再燃する動きはみられるものの、RBAの据え置き長期化で豪ドルは対米ドルで底堅く、日本円に対しても円安が意識される展開が見込まれるなかで堅調な推移が続くと見込まれる。
オーストラリアでは、準備銀行(RBA)が今月4日の定例会合で政策金利(OCR)を3.60%に据え置くことを決定した(注1)。RBAは年明け以降、2月、5月、8月と約3ヶ月ごとに計3回、累計75bpの利下げを実施するなど金融緩和を進めてきた。そのため、金融市場においては、前回の利下げから約3ヶ月後に当たる今次会合の判断が注目された。しかし、直前に発表された7-9月のインフレ率は前年同期比+3.2%と5四半期ぶりにRBAが定める目標(2~3%)を上回り、コアインフレ率も同+3.0%と上限に達した。よって、その後の金融市場ではRBAは金利を据え置くとの見方が広がり、RBAによる決定も予想通りの結果となった。

RBAは足元の物価動向について、前回の利下げを決定した8月の定例会合時点における想定を大幅に上回るとの認識を示している。しかし、足元の物価上昇は一時的な要因に拠るものとした上で、先行きの金融政策のシナリオについて、2026年に1回の利下げを行う可能性に含みを持たせる考えをみせた。その一方、実体経済については依然として不透明感が大きいとの見方を示しつつ、労働需給はややひっ迫した状況が続くなか、景気と物価の双方に不確実性があるとの認識を示した。その上で、先行きの政策運営について、一定のインフレ圧力が残る可能性があるとしつつ、データとリスク評価の動向を勘案しつつ決定すると明確な方向性を示すことを避けた。会合後に記者会見に臨んだRBAのブロック総裁も、今後1年にわたってインフレの上昇が見込まれるとの見通しを示した上で、足元の金利水準はほぼ中立水準に近いとの認識を示しつつ、さらなる利下げを行うか否かは不明との見方を示すなど、過去に比べて「タカ派」姿勢を強めている様子がうかがえた。
その一方、金融市場では、9月の雇用統計において雇用を取り巻く環境に悪化の兆しが出ていたため、こうした基調が今後も続けば追加利下げを後押しする可能性を指摘する向きもみられた。こうしたなか、10月の失業率は4.3%となり、約4年ぶりの水準に悪化した前月(4.5%)から0.2pt低下するなど改善している。失業者数も前月比▲1.7万人と前月(同+3.2万人)から2ヶ月ぶりの減少に転じ、雇用形態別でも非正規雇用に対する求職者数(同▲0.5万人)のみならず、正規雇用に対する求職者数(同▲1.2万人)もともに減少している。さらに、就業者数は前月比+4.2万人と前月(同+1.3万人)から増加ペースが加速しており、雇用形態別でも非正規雇用者数(同▲1.3万人)は減少しているものの、正規雇用者数(同+5.5万人)の拡大が雇用全体を押し上げている。地域別でも、最大都市シドニーを擁するニュー・サウス・ウェールズ州のほか、資源関連産業が集中する西オーストラリア州でも堅調な動きが確認されている。そして、労働力人口も前月比+2.5万人と前月(同+4.5万人)から2ヶ月連続で拡大しており、労働参加率は67.0%と前月(67.0%)から横這いで推移して、歴史的高水準であるなど労働需給はひっ迫状態が続いていると捉えられる。

さらに、年明け以降のRBAによる断続的な利下げ実施も追い風に、足元の不動産価格は上昇ペースを強めており、10月は前月比+1.1%と2年4ヶ月ぶりの高い伸びとなり、過去最高値を更新する動きをみせている。不動産価格の上昇は不動産所有者にとっては資産効果をもたらす一方、新規購入者にとっては購入のハードルが高まる。こうしたなか、足元では新規の住宅購入者を対象とする住宅ローン保証制度の拡充を追い風に、より安価な物件に対する需要が押し上げられて価格上昇を引き起こすなど、幅広く市況が押し上げられている。こうした事情もRBAによる追加利下げのハードルになっていると捉えられる。

足元の雇用環境の予想外の強さが確認されたことを受けて、RBAが警戒するサービス物価の上昇圧力の根強さが意識されるとともに、金融市場での利下げ観測の後退は避けられないと見込まれる。その一方、足元では米国における政府機関閉鎖の解除に目途が立っていることを受けて、米ドル高が再燃する兆しがみられる。こうした状況ではあるものの、RBAによる金利据え置き観測が高まっていることを反映して、豪ドルの対米ドル相場は比較的堅調な推移をみせる可能性が高まっている。また、日本円に対しては日銀の政策運営に対する見方に不透明感がくすぶるものの、高市政権は「責任ある積極財政」を掲げるなど拡張的な財政運営が見込まれるなか、米ドル/円相場は円安方向に傾く可能性が高まっており、豪ドルに対しても円安が意識される地合いが続くと考えられる。

注1 11月4日付レポート「オーストラリア準備銀、インフレ長期化を示唆し、緩和余地は限定的」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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