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米国:2026年中間選挙の展望

~ねじれ議会となるのが一般的だが、ゲリマンダーがかく乱要因~

前田 和馬

要旨
  • 米国の2026年中間選挙まで1年を切った。3分の1が改選される上院選は共和党が過半数を維持する可能性が高い一方、全議席が改選される下院選は依然流動的な情勢である。
  • 過去の中間選挙では特に下院において政権与党が苦戦する傾向があり、2025年11月実施の2つの知事選における民主党候補の勝利はこうした見方を裏付ける。一方、一部の州において進行中の選挙区割りの恣意的な変更(ゲリマンダー)は共和党への追い風となる可能性がある。
  • 過去10回の中間選挙前後における米国株の推移をみると、中間選挙前までは先行きの政策不透明感の高まりを背景に軟調に推移する一方、その後は再び上昇基調に転じる傾向がみられる。

政権評価としての中間選挙

2026年11月3日、米国では連邦議会や地方議会等で選挙が実施される。4年毎の大統領選の間に実施される中間選挙は政権評価としての意味合いを持つ。連邦議会では上院の約3分の1、下院の全議席が改選される。現時点において、上院(全100議席)は共和党が53、民主党系が47、下院(全435議席)は共和党が219、民主党が213、欠員が3と、上下院共に共和党が第一党である。

各種世論調査等による「270towin」に基づくと(11月7日時点;図表1)、上院は共和党が第一党を維持するとの見方が強い。改選議席は共和党が22と民主党の13を上回るものの、共和党は19議席が優勢な状況(safeとlikelyの合計)にあり、これに非改選議席の31を足すと過半数の50議席に達する。一方、民主党はミシガン、ミネソタ、ニューハンプシャーの3州でベテラン議員が再選を目指さないなど、現時点では過半数を奪回するうえでは劣勢にある。

一方、下院は共和党が206議席、民主党が192議席でそれぞれ優勢な状況にあるものの、残りの37議席は接戦が予想され(共和党がやや優勢が5議席、民主党がやや優勢が13議席、ほぼ互角が19議席)、どちらかが第一党になるかは依然流動的とみられる。

中間選挙は与党が苦戦する傾向

現在のトランプ政権は上下院も共和党が支配するトリプルレッドの状況にある。一方、過去の中間選挙では与党が苦戦するのが一般的であり、特に全議席が改選される下院選でこの傾向が強い。クリントン政権以降の中間選挙・下院選において、8回中7回は与党が全米得票率を減らした結果、ねじれ議会に陥っている。具体的には、政権与党は野党との全米得票率の差が平均的に7.1%pt悪化する。なお、中間選挙の年にねじれ議会を回避したのは2002年のブッシュ政権に限られ、この際には2001年同時多発テロを背景に、ブッシュ政権におけるテロ対策への姿勢が米国民の支持を受けた。

2024年下院選挙は共和党が220議席、民主党が215議席を獲得したものの、議席数の差は5と僅差に留まった。また、両党候補の得票率の差が5%pt以内で勝敗を決した選挙区は37に達し、このうち共和党が勝利したのは15ある。すなわち、共和党に多少の向かい風、或いは民主党に多少の追い風が吹くだけで、下院の第一党は交代する可能性がある。

政府閉鎖はトランプ政権への向かい風

歴代政権と同様、トランプ政権は中間選挙における向かい風を受けているように思われる。トランプ政権の支持率は、物価高止まりへの不満、関税による景気悪化懸念、或いは政府職員や大学予算の削減などに対する強権的な姿勢を背景に低下傾向にある(図表2)。また、10月より続く政府閉鎖を巡っても、トランプ政権及び共和党議会に責任があるとの意見がやや多い(図表3)。民主党の要求する医療費(オバマケア)補助金等の延長が、より多くの国民に支持されていることが背景にあると考えられる。

2025年11月に実施された2つの知事選(バージニアとニュージャージー)では民主党候補が勝利した。両州はもともと民主党寄りの青い州であるものの、各候補は24年大統領選における民主党・ハリス候補よりも支持を伸ばしている。民主党候補の共和党に対するリードは、バージニア州知事選で+14.8%pt(24年大統領選:+5.8%pt)、ニュージャージー州知事選で同+13.8%pt(同、5.9%pt)と拡大した。ただ、各種世論調査で民主党への期待感が高まっている様子はなく、単に共和党への不満がこうした選挙結果に結びついた可能性が高い。

図表
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ゲリマンダーのかく乱?

2026年中間選挙では選挙区割りの変更(ゲリマンダー)がかく乱要因となりうる。ゲリマンダーは自党の当選数が多くなるように恣意的に選挙区を変更するものであり(注1)、通常は10年おきの国勢調査(次回は2030年)が行われた後のタイミングで、各州においてこうした動きが活発化する。一方、トランプ大統領は中間選挙後のねじれ議会を回避するため、共和党基盤の州に対してゲリマンダーを推進するよう働きかけている(図表5)。

この結果、共和党基盤のテキサス州がゲリマンダーを実施し、テキサス州選出の共和党下院議員は現状の25から30へと増加する見込みだ。一方、こうした動きに対抗し、民主党地盤のカリフォルニア州では11月に新たな選挙区割りの住民投票が実施され、賛成多数によるゲリマンダーを通じて民主党が同州で5議席を増やす。なお、これ以外にも複数の州でこうしたゲリマンダーの動きがあり、下院議席全体ではやや共和党に有利となる可能性がある。

なお、ゲリマンダーは有権者の反発を招く可能性があるほか、前提としていた各地域の投票傾向(主に2024年大統領選の投票結果)が従来と異なるなど、意図せざる結果を生むことがある点に留意が必要だ(いわゆる「ダミーマンダー」)。  

図表
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中間選挙年の金融市場

先行きの政策不透明感の高まりを背景に、中間選挙年の米国株は軟調なパフォーマンスを示す傾向が強い。例えば、過去10回の中間選挙におけるS&P500に関して、前年末から中間選挙直前の10月末までの平均変化率は-0.1%と、横ばい圏の推移に留まることが多い。一方、中間選挙後はねじれ議会になることが一般的であるものの、こうした政治イベントを通過した後には株価が再び上昇基調に転じる傾向が目立つ。

図表
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【注釈】

  1. ゲリマンダーの方法としては、特定政党の支持者を複数の選挙区に分散させる「クラッキング」、逆に一つの選挙区に集中させ、それ以外の選挙区で当選できなくする「パッキング」などがある。なお、各州の選出議員数は人口に基づき配分される一方、各州の選挙区割を決定する権限は主に州の議会や知事などにある。
以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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