関税政策への懸念も9月ISM製造業指数は小幅上昇

~米製造業の縮小ペースが鈍化~

桂畑 誠治

要旨
  • 5年9月のISM製造業景気指数(季節調整値)は、49.1(前月48.7)と市場予想中央値の49.0(筆者予想49.4)を上回ったものの、拡大縮小の分岐点である50を7ヵ月連続で下回った。企業の回答では、引き続き関税によるコスト増加や不確実性に対する指摘が多数を占めている。国内需要に支えられながらも、関税賦課などトランプ政権の政策による不確実性の高まりやコストの上昇によって、米国の製造業部門は緩やかに縮小している。ただし、9月の製造業景気指数は前月比で0.4%ポイント上昇しており、米製造業部門の縮小ペースの鈍化を示している。
  • 9月下旬に、トランプ大統領は大型トラックに25%、布張り家具に30%、キッチンキャビネット、洗面化粧台に50%、ブランド医薬品や特許取得済み医薬品に100%の関税を賦課する方針であることを発表した。その後、署名された大統領令では、10月14日から輸入木材・製材に10%、布張り家具製品、キッチンキャビネットに25%の関税を課し、2026年1月に家具製品は30%、キャビネットは50%にそれぞれ引き上げられる。
  • 関税引き上げや計画の発表が続くなか、新規受注が再び縮小に転じたものの、生産が拡大に転じ、入荷遅延が上昇した。また、雇用が減少ペースを鈍化したことで、景気指数は押し上げられた。ただし、仕入価格指数は低下したが、依然高い水準にとどまっており、コスト増が示された。
  • 9月のISM製造業景気指数の構成項目別の動向をみると、前月比で、新規受注、在庫が低下した一方、生産、入荷遅延、雇用が上昇した。また、水準では、生産、入荷遅延が50を上回ったが、新規受注、雇用、在庫が50を下回り、全体で縮小を示す水準にとどまった。
  • 新規受注は、48.9(同51.4)と縮小を示す水準に低下、需要が縮小に転じたことが示された。拡大した業種数は18業種中6業種(同8業種)と減少し、縮小は9業種(同6業種)に増加した。拡大した業種は、繊維、家具・関連製品、加工金属、その他製造業、一次金属、電気機器・電化製品・電気部品の6業種。縮小は、木材製品、非鉄、プラスチック・ゴム製品、紙製品、輸送機器、コンピューター・電子機器、一般機械、食品・飲料・タバコ製品、化学製品の9業種となった(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。また、在庫は、47.7(前月49.4)と50を下回って低下しており、在庫の縮小ペース加速が示された。
  • 一方、生産は、51.0(前月47.8)と上昇し拡大に転じたことが示された。拡大した業種数が8業種(同6業種)に増加し、縮小した業種が6業種と変わらなかった。ただし、新規受注が縮小に転じたほか、受注残が減少を示す水準で低下しており、生産は依然脆弱な状況といえよう。 また、入荷遅延は、52.6(同51.3)と上昇し、配送がさらに遅れたことが示された。需要の持ち直しや関税引き上げによる納品の遅れが影響したと考えられる。さらに、雇用は、45.3(同43.8)と上昇したが、50を大幅に下回っている。事業環境の不透明感の強まりを背景に、レイオフ、自然減、採用凍結を中心とした人員削減が継続されている。雇用の増加した業種数は18業種中で非鉄の1業種(同2業種)にとどまった。
  • インフレの動向を示す仕入価格指数は、61.9(同63.7)と低下したが、高い水準にとどまっており、コストの高止まりを示した。
  • 9月に拡大した業種は、全18業種のうち石油・石炭製品、一次金属、繊維、加工金属、その他製造業の5業種(前月7業種)に減少(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。主要6業種で拡大した業種は、石油・石炭製品の1業種と、前月の2業種から減少した。一方、縮小した業種は、木材製品、アパレル・皮革製品、プラスチック・ゴム製品、紙製品、家具・同関連、化学製品、電気機器・電化製品・電気部品、輸送機器、非鉄、一般機械、コンピューター・電子機器の11業種(前月10業種)に増加した。なお、食品・飲料・タバコ、印刷・関連サポート活動は横ばいとなった。
  • 今後の製造業部門の活動は、対中貿易協議の継続(関税引き下げ期限は11月10日)のほか、分野別関税で半導体、医薬品、重要鉱物等への関税賦課が予想され、不確実性が残存するものの、主要な貿易相手国と通商協議で進展したため、対抗措置がほとんど行われずに相互関税の上乗せが実行されたこと、国内需要が底堅く推移していることもあり、製造業景気指数は25年4Qに拡大を示す水準を回復すると予想される。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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