デジタル国家ウクライナ デジタル国家ウクライナ

BOEは年内利下げを見送りか?

~QT減額で長期国債の需給悪化に配慮~

田中 理

要旨
  • BOEは9月のMPCで7対2の賛成多数で政策金利を据え置いた。これまで景気の下振れを警戒してきたラムスデン副総裁が据え置き支持に転向したことや、景気が底堅さを保っていることからは、追加利下げへの切迫感は後退している。年内の利下げ見送りの可能性が高まった。

  • 向こう1年間の量的引き締めの方針を決定し、国債の売却額を年1000億ポンドから700億ポンドに減額するとともに、長期債の売却割合を引き下げ、長期金利の上昇抑制を目指す。

イングランド銀行(BOE)は9月の金融政策委員会(MPC)で政策金利を4%に据え置いた。BOEは昨年8月の利下げ開始以降、四半期に1回の金融政策レポート(旧物価レポート)の発表月に合わせて、25bp刻みの利下げを続けてきた(図表1)。前回8月は利下げを決定したものの、4名の政策委員が据え置きを主張、「十分な期間、引き締め的であり続ける必要がある」との文言が声明文から削除され、ベイリー総裁の発言からもハト派トーンが後退し、中期的な物価見通しが僅かに上方修正されるなど、先行きの利下げのペースダウンの可能性が示唆されていた。

図表
図表

その後に発表された経済指標は限られ、今回の利下げ見送りは事前に広く予想されていた。7名の政策委員が据え置きを主張し、利下げ支持は最ハト派で前回のMPCで当初50bp利下げを主張したテイラー外部委員と、一貫して利下げを主張してきたディングラ外部委員の2人のみ。労働市場の弱さを背景に景気の下振れリスクへの警戒姿勢を示唆してきたラムスデン副総裁が据え置き支持に回った。利下げを支持したメンバーは、足元のインフレ率の再加速は公共料金の引き上げや世界的な食品インフレによるもので、何れも需要動向とは無縁で、一過性のものであると整理し、景気後退、インフレ率の目標下振れ、供給能力の更なる悪化などのリスクに備え、より引き締め的でない政策パスが正当化されると主張した。声明文は「金融政策の引き締め度合いの更なる緩和には、緩やかで慎重なアプローチが適切である」との従来の文言を維持し、追加利下げの可能性を残しているものの、ラムスデン副総裁の据え置き支持への転向や、景気が底堅さを保っていることからは、追加利下げへの切迫感は後退している。11月のMPCでの利下げ見送りの可能性が一段と高まった。11月が見送られた場合に12月に利下げを行うかは、労働市場を中心に景気の下振れを示唆する経済指標が確認されるか、高止まりする物価や賃金の上昇率が鈍化に向かうか、11月26日に発表される秋季予算の内容などが影響しよう。金融政策レポートの発表月以外のタイミングでの利下げには相応の切迫度が必要とみられ、筆者は利下げ再開を来年2月と考える。

なお、今回のMPCでは、過去の量的緩和で市中に供給された資金を向こう1年間にどの程度のペースで吸収するか(量的引き締め)が決定され、過去1年間の1000億ポンドから700億ポンドに減額された(図表2)。量的引き締めによる国債需給悪化は、足元の英国債利回り上昇の一因となっていた。これまでは各年限の国債売却額を概ね同じ割合で行ってきたが、今後は長期ゾーンの売却割合を引き下げ、長期債利回りの上昇を抑制する。具体的には、短期債(3~7年)と中期債(7~20年)の売却割りを各40%、長期債(20年超)を20%とする。

図表
図表

以上

田中 理


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ