トランプ関税で米製造業の縮小持続(7月ISM製造業)

~生産拡大も受注など需要の弱さを背景に、雇用の削減継続~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年7月のISM製造業景気指数(季節調整値)は、48.0(前月49.0)と拡大縮小の分岐点である50を5ヵ月連続で下回った。市場予想中央値の49.5への上昇に反して、前月比1.0%ポイント低下し、米製造業部門の縮小ペースの拡大が示された。企業の回答では、引き続き関税に関する懸念が多く指摘された。新規受注の縮小ペースが鈍化するなか、一部の業種主導で生産が拡大した。一方、在庫、雇用の減少ペースが加速した他、需要の鈍化やサプライチェーンの改善によって、入荷遅延が大幅に低下し、景気指数を押し下げた。他方、仕入価格は低下したが、依然高い水準にとどまり、コスト増を示唆。

  • トランプ政権は、10%の相互関税の引き上げ期限を7月9日から8月1日に延期し、最終的に8月7日に、国ごとに異なる税率で相互関税の引き上げを行うことを決定した。また、分野別関税では、25%の自動車関税や自動車部品関税を継続するもと、6月4日に、鉄鋼・アルミニウムの追加関税を50%に引き上げたうえ、6月23日に、鉄鋼・アルミニウム関税の対象を冷蔵庫、洗濯機、冷凍庫、乾燥機、オーブン、電子レンジ、食器洗浄機、調理用コンロなどに拡大した。鉄鋼・アルミニウムの含有量に応じて輸入製品に関税が課した。さらに、8月1日には、銅関税が発動された。対象は、銅管、銅線などの半製品や銅を多く含む派生品。銅の原材料となる銅鉱石や銅スクラップなどは、対象外とされた。 この間、トランプ政権は、各国・地域と通商協議を行っており、これまで英国、EU、日本、ベトナム、フィリピン、インドネシア、韓国などと合意した。ただし、詳細な合意内容を記した文章化の作業が遅れているほか、トランプ政権は合意しても、米国側の要求(米国からの輸入製品に対する関税ゼロ、米国投資拡大、米国製製品の市場シェア拡大等)を実現できなければ関税を引き上げる可能性を指摘するなど、不確実性は高いままとなっている。

  • 7月のISM製造業景気指数の構成項目別の動向をみると、前月比で、生産、新規受注が上昇した一方、入荷遅延、雇用、在庫が低下した。生産は、51.4(前月50.3)と上昇し、拡大ペースの加速を示した。ただし、拡大した業種は、7業種(同8業種)にとどまった他、新規受注や受注残が減少を示す水準で推移しており、生産は脆弱なままといえよう。 また、新規受注は、47.1(同46.4)と上昇し、需要の縮小ペース鈍化が示された。ただし、拡大した業種数は18業種中4業種(同7業種)と減少した(8業種が縮小)。トランプ関税のコスト負担に関連する買い手と売り手の交渉、先行きの不確実性の高まり等の影響で、需要の減少が続いており、50を下回って推移している。 一方、入荷遅延は、49.3(前月54.2)と大幅に低下した。需要の鈍化やサプライヤーとの関税負担の交渉等による納品の遅れに改善がみられたことが示された。また、雇用は、43.4(同45.0)とさらに低下した。事業環境の不透明感の強まりを背景に、レイオフ、自然減、採用凍結を中心とした人員削減が継続され、50を下回ったままである。雇用の増加した業種数は18業種中3業種(同4業種)と限られた。さらに、在庫は、一部の業種での関税上乗せ前の材料等の早期納入を求める動きを受け、48.9(前月49.2)と50を下回って低下しており、在庫の縮小ペース加速を示した。

  • インフレの動向を示す仕入価格指数は、64.8(同69.7)と低下したが、高い水準にとどまっており、コストの高止まりを示した。

  • 7月に拡大した業種は、全18業種のうちアパレル・皮革製品、プラスチック・ゴム製品、非鉄、繊維、その他製造業、家具・同関連、一次金属の7業種(前月9業種)に減少した(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。

  • 今後の製造業部門の活動は、各国との貿易交渉の影響を受けるが、合意内容や交渉の進展ペースがそれぞれ異なるとみられ、交渉を受けた相互関税の上乗せ率や関税の引き下げ率なども多様な結果になる可能性が高く、少なくとも8月7日の相互関税上乗せ、11月10日の対中関税引き下げ期限まで不確実性の高い状況が続くとみられ、製造業の景況感は10月まで縮小を示す水準にとどまると予想される。ただし、夏の間に多くの通商合意が行われれば、製造業景気指数は25年4Qに拡大を示す水準を回復すると予想される。

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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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