株高不況 株高不況

日銀が利上げを待つ必要性は低下した

藤代 宏一

※総裁会見前に執筆
  • 日銀は金融政策の現状維持を決定し、政策金利は0.5%とされた。2024年7月、2025年1月と半年に一度のペースで利上げを実施してきたが、4月にトランプ関税の全容が明らかになるとその影響を見極める必要があるとして、4会合連続の現状維持となった。日米の関税交渉は7月下旬に合意に至り、その後EU、韓国など米国の主要貿易相手との合意も相次ぎ、日本を含む世界経済の不透明感は後退しているが、金融市場との対話を重ねる必要性などから、今会合も様子見となった。

  • 注目の展望レポートは、成長率見通しが小幅に引き上げられ、物価見通しも上方修正となった。日米の通商合意を踏まえ、2025年度の実質GDP成長率見通しは+0.6%と、5月1日に示した数値から0.1%pt上方修正された。そして物価見通し(除く生鮮食品)は2025年度が+2.7%と前回から0.5%ptも上方修正され、2026年度は+1.8%、2027年度は+2.0%とそれぞれ0.1%pt引き上げられた。2025年度の上方修正は、米価の高止まりに伴う食料品価格上昇が主因と説明された。

  • 今回の展望レポートでは、食料品価格上昇の背景として、「天候要因等の影響が大きく、 消費者物価の押し上げ寄与は次第に縮小していく」との見通しは踏襲しつつ、「人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある」として、「一時的」であるとの見方に対する確度を落とした。現在進行中の酷暑を踏まえると、秋以降に生育不良から野菜・果物を中心に食料品の価格が上昇する可能性もあり、その影響で物価見通しが再び上方修正されることも考えられる。ちなみに、日銀が政策目標としているのは消費者物価(総合)の前年比上昇率を2%にすることであり、日銀が物価動向を重視する際に参照している生鮮食品を除いたベースではない。「基調的な物価上昇率」を重視するあまり、食料品の上昇を軽視してしまうことに疑問を呈する議論が日銀内部で今後浮上してくるのではないか。

  • トランプ関税に対する懸念は5月1日対比で低下している。そうした変化を踏まえ、展望レポートでは「内外経済・物価に及ぼす影響を巡る不確実性は、高い状況が続いている」と、5月に記載のあった「きわめて(高い状況が続いている)」が削除された。日本経済にとって大きな懸念事項であった自動車の関税率が15%で落ち着いたことを考慮したとみられる。こうした関税交渉の不透明感後退を踏まえると、日銀が利上げをこれ以上待つ可能性は低下したと考えられる。展望レポートの公表のない9月に利上げを再開するかは微妙だが、9月を見送ったとしても10月までに利上げが実施される可能性は高いと判断している。

藤代 宏一


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