株高不況 株高不況

米国:9月の利下げはほぼ固まった

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲0.3%、NASDAQが▲0.4%で引け。VIXは16.0へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.415%(▲1.1bp)へと低下。
    実質金利は1.904%(▲7.9bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+44.9bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは148後半へと上昇。コモディティはWTI原油が69.2㌦(+2.5㌦)へと上昇。銅は9798.0㌦(+5.0㌦)へと上昇。金は3324.0㌦(+14.0㌦)へと上昇。

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注目点

  • 7月30日に発表された米JOLTS統計は、良くも悪くも企業の様子見姿勢が強まっていることを示した。後述するとおり求人件数は小幅に減少したものの、解雇による人員削減は限定的で、労働市場が急速に冷え込む事態に至っていないことが示された。

  • 6月の求人件数は前月比▲3.6%、743.7万件となり市場予想(750.0万件)を下回った。もっとも、3ヶ月平均値では前月比+1.1%、751.4万件と底堅さを維持しており、昨秋来のレンジ内で推移している。Fedが重視する失業者1人当たりの求人件数は1.06であった。失業者数と求人件数が共に横ばい状態となり、ある種の均衡が保たれている。求人率(求人件数÷労働力人口)は4.45%、失業率は4.1%となり、過去1年程度ほとんど動きがない。右下方向(求人率低下・失業率上昇)に向けた動きが観察されていないことは、企業の雇用計画に大きな変更がないことを物語る。

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  • 解雇率は1.00%とほぼ横ばいであった。2024年秋に1.1%を上回る局面があったが、その後は低位で安定している。2021-23年に深刻な人手不足を経験したこともあって、機動的な人員整理は実施していない模様。これは新規失業保険申請件数が低位で抑制されていることと整合的である。通商交渉の不透明感が強い状況下、企業は労働力の増減に対して静観を貫いている格好にみえる。

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  • 平均時給の先行指標として注目される自発的離職率は1.97%へと0.08%pt低下。3ヶ月平均値でみても2.01%と低下基調にあり、2019年水準も下回っている。転職活動の活発度合いがやや消沈気味であることを示唆しており、ここから判断すると賃金インフレ再燃を懸念する必要性は乏しい。

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  • 以上JOLTS統計をまとめると、企業が労働力削減を急いでいる様子は見受けられず、この点において労働市場は安心感があった。他方、求職者側からみた雇用環境は不気味な様相を呈してきた。同日発表された7月のCB消費者信頼感によると雇用判断DIは11.3となり、2022年3月につけた47.1から趨勢的に低下している。消費者信心理を示す指数は3・4月に急低下した後、幾分回復したものの、雇用環境が悪化方向にあることは、労働市場が冷え込んでいることを浮き彫りにする。

  • こうした弱さを含むデータは「FRBはもはや景気を減速させる金融政策スタンスを必要としていない」、「雇用に関する責務へのリスクは高まっている」と発言するウォラー理事の認識に沿っており、早期の利下げを正当化する。もっとも、パウエル議長を筆頭にFedの中枢は関税由来のインフレ動向を見極める必要があるとして、利下げを待つ構えを堅持している。政治的な圧力があったとしても、やはり7月の利下げは考えにくく、利下げ再開は9月FOMCが最も有力と判断される。

藤代 宏一


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