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台湾・頼政権に痛手、リコール投票全否決で国民党が勢いを増すか

~対中姿勢を巡る政府と議会の対立激化も予想され、台湾情勢を巡る不確実性が増す可能性も~

西濵 徹

要旨
  • 台湾では26日、最大野党・国民党の立法委員24人に対するリコールを問う国民投票が実施されたが、すべての選挙区で否決された。昨年の総統選で民進党の頼清徳氏が勝利するも、立法委員選で民進党は少数派に転落した。国民党は民衆党などと連携して多数派を形成し、政権と議会の「ねじれ」が生じている。このねじれ状態を背景に、昨年は野党が提出した立法院職権行使法などを巡って頼政権と対立し、民進党支持者による抗議運動(青鳥運動)が激化した。さらに、民進党支持者は国民党の議員が中国本土の影響を受けていると批判してリコール運動を展開した。一方、国民党側も民進党議員のリコールを模索したが、署名偽造疑惑が浮上して混乱が広がった。こうしたなかで実施された今回の国民投票でリコールは不成立に終わり、頼政権や民進党への打撃は必至である。この結果を受けて国民党は勢いづくとともに、対中政策を巡る頼政権との対立が一段と深まる可能性がある。中国本土やトランプ米政権の動向を含め、台湾情勢を取り巻く状況に急速に不確実性が高まる可能性にこれまで以上に注意を払う必要性は高い。

台湾では26日、立法院(議会:定数113)で多数派を占める最大野党・国民党の立法委員(議員)24人に対するリコール(解職請求)の賛否を問う国民投票が実施された。即日開票が行われた結果、中央選挙管理委員会の発表によれば、すべての24選挙区で必要票に届かず、リコールは否決された。台湾では、昨年実施された総統選挙において、与党・民進党から出馬した頼清徳氏が勝利する一方、同時に実施された立法委員総選挙では民進党が大きく議席を減らして少数派に転じた(注1)。さらに、その後に第1党となった国民党は第3党の台湾民衆党などと連立を組んで多数派を形成しており、政府と議会は『ねじれ状態』となっている。また、頼政権と立法院の対立が深まったことを受けて、今年度予算においては野党の主張が強く反映される形で防衛予算を含む幅広い分野で歳出の削減、凍結を迫られるなど、政権運営は困難を極めている(注2)。

こうしたなか、昨年野党が立法院に提出した立法院職権行使法や刑法改正案を巡って、頼政権や民進党支持者が反発を強めるとともに、いわゆる『青鳥運動』と称される反対運動が活発化した。一連の法改正について野党は、民進党による長期政権の下で権限が集中したことに歯止めを掛けることを目指したとして、事実上頼政権の弱体化を目指した。しかし、青鳥運動が激化したことを受けて、最終的に法案は一部修正を余儀なくされたものの、昨年5月末に可決成立した。その一方、昨年10月に憲法裁判所が立法院職権行使法の主要部分について、憲法が定める立法院の職権を逸脱しているとの見方を示すなど、事実上の『違憲判決』を下した。憲法裁判所を巡っては、すべての判事が民進党政権下で任命されており、この判断については政権の意向が少なからず影響したとの見方がある。さらに、その後も青鳥運動をきっかけに、民進党支持者などは国民党の立法委員が中国本土の影響を受けていると主張して、選挙区で当選したすべての国民党議員のリコールを求める動きに発展した。

なお、こうした事態を受けて、国民党も民進党議員のリコールを求める運動を活発化させたものの、署名の偽造疑惑が噴出して当局の捜査を受ける事態となるなど混乱が広がった。その結果、民進党支持者を中心にリコール投票の実施に必要な署名を集められた24選挙区を対象に国民投票が実施されることが決定した。さらに、民進党が国民投票を「反共護台(中国共産党への反対と台湾防衛)」の闘いと位置付けたこともあり、民進党対国民党の政治闘争の様相を強めることとなった。なお、国民投票においては、賛成票が反対票を上回るとともに、賛成票が有権者の4分の1以上となればリコールが成立する。頼政権や民進党としては、リコール成立後に実施される補欠選挙で6議席以上を獲得できれば立法院において多数派を形成してねじれ状態の解消を実現できるなか、その行方が注目された。そして、無党派層の投票行動がリコールの成否を大きく左右するなかで選挙運動が活発化した。他方、すべての国民党議員を対象とするリコールという異例の事態に対しては、少なからず反発が広がる動きがみられ、事前の世論調査では反対が賛成を上回るなど、成立のハードルは極めて高い展開が予想された。

こうしたなか、上述のように選挙結果はすべての選挙区でリコールに失敗するなど、頼政権や民進党にとって厳しい結果となった。なお、来月23日には7人を対象とするリコールを求める国民投票の第2弾が予定されているものの、今回の結果を踏まえればリコール成立のハードルは極めて高いと見込まれる。さらに、今回の結果を受けて国民党側は勢いを増すことが予想されるとともに、頼政権が立法院に提出している中国本土への対抗を念頭に置いた法案阻止など対決姿勢を強める可能性は高まっている。そして、こうした動きを追い風に中国本土は頼政権に対する揺さぶりをこれまで以上に強めることも考えられる。台湾情勢を取り巻く状況が急速に変化するかは見通しが立たない状況にあるものの、中国本土との対話を重視する国民党や民衆党が勢いを増す一方、トランプ米政権による台湾問題への対応に不透明感が高まるなか、これまで以上に地域情勢に対する不確定要素が増す可能性が高まっている。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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