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2025.07.14
アジア経済
米中関係
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トランプ政権
トランプ関税
中国の外需は米中関係改善に加え、米国「以外」が下支え役に
~景気への過度な悲観は後退するも、世界経済は中国の過剰生産能力に揺さぶられる展開が続く~
西濵 徹
- 要旨
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中関係はトランプ米政権の関税政策をきっかけに緊張が高まり、貿易戦争に発展した。しかし、スイスや英国での閣僚協議を経てその後は関係改善の兆しがみられる。その一方、中国はレアアースを交渉の切り札とする一方、米国も銅や医薬品への追加関税のほか、BRICS諸国への追加関税を示唆するなど強硬姿勢を崩さない。よって、先行きの米中関係は引き続きトランプ氏の一挙一動に左右される展開が続こう。
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融市場では、米国の政策運営への不透明感が米ドル安を招き、人民元は対ドルで緩やかに上昇している。ただし、人民元の通貨バスケットは調整の動きを強めるなど人民元安が進んでいる。これは、中国が対米輸出の減少を補うべく、人民元安により米国以外の輸出への競争力向上を目指していることがある。
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月の輸出額は、米中関係の改善を受けて前年比+5.8%と伸びが加速するなど底打ちしている。米国向けは引き続きマイナスで推移するも、ASEANやアフリカなど新興国向けのほか、EUやカナダ、英国、日本など先進国向けも堅調に推移する。輸入も前年比+1.0%とプラスに転じており、国内生産や輸出向け加工組み立ての需要増を反映して拡大するなど、外需を取り巻く環境が改善している様子が確認されている。
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悲観する必要性は後退している。さらに、足下の中国経済は外需が景気の下支え役として機能している様子もうかがえる。ただし、個人消費など内需が弱いなか、世界経済は中国の過剰供給能力に引き続き左右される可能性に要注意である。
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米中関係はトランプ米政権の関税政策に翻弄される展開が続いている。トランプ米政権は自動車や自動車部品、鉄鋼製品、アルミ製品に追加関税を課すとともに、4月にはすべての国に一律10%、一部の国や地域に税率を上乗せする相互関税を発動した。直後に中国が報復措置に動いた結果、米中が報復を応酬させて互いに高関税を課す貿易戦争に発展した。その後に5月のスイスでの閣僚協議を経て、米中双方が報復関税を撤廃した上で、関税の上乗せ分を90日間停止して追加協議を行うことで合意した。他方、その後の実務者協議では行き詰まりが懸念されるとともに、米国は中国への強硬姿勢を強めたほか、鉄鋼製品やアルミ製品への追加関税を大幅に引き上げる動きをみせた。しかし、先月の英国での閣僚協議では、米中両国がスイス協議の合意事項を再確認した上で、追加的な了解事項で合意したことも明らかにされるなど関係改善の兆しがうかがえる。その一方、一連の協議では、中国が世界の精製能力の大半を独占するレアアース(希土類)の扱いに焦点が当たるなど、中国にとっては協議の『切り札』となっていることが浮き彫りとなっている。さらに、トランプ氏は中国が世界精製量の大半を握る銅や、医薬品への追加関税を課す方針を示すほか、中国が加わるBRICS諸国への追加関税を表明するなど『圧力』を強めている。こうしたトランプ米政権の動きは、米国が関税政策を通じて『中国包囲網』の構築を目指していると捉えられる。ただし、トランプ氏の言動を巡ってはこれまで「TALO(暴言)」と「TACO(尻込み)」が繰り返されており、今後の協議も同様の展開をみせる可能性は考えられる。
一方、金融市場ではトランプ米政権の政策運営を巡る不透明感が米ドル安を招いている。結果、人民元の対ドル相場は緩やかに上昇する動きがみられる。さらに、金融市場では米中関係の改善を期待したリスク選好の動きが強まり、米ドルは主要通貨のみならず、新興国通貨に対しても調整する動きが確認されている。その結果、中国の主要貿易相手国の通貨を加味した通貨バスケットであるCFETS(中国外為取引センター)人民元指数はこのところ調整の動きを加速させており、足下においては2021年初以来の安値圏で推移するなど、『実態的』には人民元安が進んでいる(注1)。人民元がこうした動きをみせる背景には、人民元相場の特殊性が影響していることに留意する必要がある。人民元の対ドル相場は、中銀(中国人民銀行)が営業日前にその目安となる基準値を公表し、上下2%の変動幅の間で市場の取引が行われる管理変動相場制が採用されている。ただし、その基準値の設定については、当局の意向が反映されやすいなど恣意性が疑われており、米ドルに対しては緩やかな人民元高を容認しつつ、実勢レートを人民元安に誘導している可能性がある。この背景には、中国当局が米中摩擦の激化による対米輸出の減少を念頭に、人民元安による輸出競争力の向上を追い風に米国以外の国や地域向け輸出を下支えすることにより、その影響軽減を狙っていることが考えられる。事実、3月に開催された全人代(第14期全国人民代表大会第3回全体会議)では、米中摩擦の激化を念頭に、米国以外の国や地域向けの輸出拡大のほか、多国間や二国間、地域的な経済協力の深化を通じて外需下支えを図る方針が示された。個人消費をはじめとする内需は依然として力強さを欠くなか、経済成長率目標の実現のためには外需の掘り起こしが欠かせないことも影響している。

こうした状況は、過去数ヶ月の対米輸出が大幅マイナスとなる一方、米国以外の国や地域向けの輸出は前年を上回る水準を維持するとともに、輸出全体でも前年を上回る伸びを維持してきたことに現れている。さらに、上述したように5月のスイス協議を経て米中関係に改善の兆しが出ており、大きく下振れした対米輸出を取り巻く環境が改善することも期待される。6月の輸出額は前年同月比+5.8%と前月(同+4.8%)から伸びが加速しているほか、当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比も3ヶ月ぶりの拡大に転じている。種類別の輸出額は、一般的な中国製品である通常輸出(前年同月比+5.4%)の伸びが加速するのみならず、加工組立輸出(同+9.2%)も引き続き堅調な伸びをみせるとともに、輸入した素材・部材に関連した加工組立輸出(同+1.8%)は3ヶ月ぶりのプラスに転じるなど、幅広く輸出が底入れの動きを強めている様子がうかがえる。財別の輸出額も、ハイテク関連(前年同月比+6.9%)や、コンピュータや携帯電話関連をはじめとする電気機械関連(同+8.2%)などで堅調な伸びが確認されるとともに、米国との関係改善を受けて玩具関連(同+8.1%)も3ヶ月ぶりにプラスに転じるなど改善している。さらに、国・地域別の輸出額も米国向け(前年同月比▲16.1%)は3ヶ月連続のマイナスとなるも、前月(同▲34.5%)からマイナス幅が縮小している。他方、トランプ米政権が隣国メキシコに対して中国からの迂回輸出を抑えるべく圧力を掛けていることを反映して、中南米向け(前年同月比▲2.1%)は4ヶ月ぶりにマイナスに転じるなど、関税政策の影響が強まる動きもみられる。その一方、人民元安による価格競争力の向上も追い風に、ASEAN向け(前年同月比+16.8%)やアフリカ向け(同+34.8%)は引き続き旺盛な動きをみせているほか、インド向け(同+9.4%)も堅調な推移をみせるなど、安い中国製品の輸出が拡大するいわゆる『デフレの輸出』が活発化する動きもみられる。また、米国との関係にすき間風が吹く動きがみられるEU向け(前年同月比+7.6%)やカナダ向け(同+2.0%)も堅調な動きをみせるとともに、日本向け(同+6.6%)や英国向け(同+10.8%)もプラスで推移しており、米国以外の国・地域向けの輸出の堅調さが足下の輸出を支えている様子がうかがえる。


一方、足下の輸出が米国以外の国・地域向けの堅調さに加え、米国向けも最悪期を過ぎつつある様子がうかがえるなか、6月の輸入額は前年同月比+1.0%と前月(同▲3.4%)から4ヶ月ぶりのプラスに転じている。当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比も2ヶ月ぶりの拡大に転じるなど一進一退の動きをみせているほか、中期的な基調も拡大傾向に転じるなど頭打ちが続いた流れに変化の兆しがうかがえる。種類別の輸入額も、中国国内における需要を前提とする通常輸入(前年同月比▲2.1%)は引き続きマイナスで推移しているものの、加工組立関連の輸入(同+8.1%)の伸びが加速するとともに、加工組立関連の素材・部材輸入(同+16.4%)も高い伸びとなるなど、輸出を巡る環境改善が輸入を下支えする動きがみられる。さらに、中国国内における生産拡大を見据える形で加工組立に関連する装置の輸入(前年同月比+114.2%)は大きく押し上げられており、米中関係の改善が輸入を後押しする動きもみられる。なお、国・地域別の輸入額は米国から(前年同月比▲15.5%)が4ヶ月連続のマイナスで推移しており、米国からの輸入を引き続き抑制している様子がうかがえる。その一方、米国と関係が悪化するカナダから(前年同月比+19.2%)が3ヶ月ぶりのプラスに転じるとともに、EUから(同+0.4%)もわずかながら4ヶ月ぶりにプラスとなるなど、米国との関係にくさびを打つ動きを鮮明にしている。さらに、南米から(前年同月比+1.9%)やアフリカから(同+3.9%)の輸入額もともにプラスで推移が続くとともに、ASEANから(同+0.1%)やインドから(同+14.7%)もプラスとなるなど、トランプ米政権の関税政策に翻弄される新興国との関係深化を図る動きもみられる。財別の輸入額も、半導体関連(前年同月比+11.5%)や電子部品関連(同+12.5%)は引き続き高い伸びで推移しているほか、コンピュータ関連(同+6.0%)、ハイテク関連(同+9.6%)も堅調な推移をみせるとともに、先行きの生産拡大を見越して銅(銅+15.7%)の輸入も旺盛な推移をみせている。さらに、数量ベースでは鉄鉱石(前年同月比+8.5%)や原油(同+7.4%)、石油精製品(同+13.9%)の輸入量は軒並みプラスに転じるなど、需要の底打ちを期待する向きもみられる。

足下の輸出が底打ちする動きが確認されていることは、年前半の経済成長率を巡って外需が引き続き下支え役となっている可能性を示唆している。先行きについては、引き続き米中協議の行方やそれに伴う輸出環境に左右される展開が見込まれる。ここ数年は中国景気の勢いの乏しさが世界経済の足を引っ張る傾向がうかがわれたものの、当面は過度に悲観する必要性は低下していると判断できる。ただし、個人消費など内需が依然として力強さを欠くなか、世界経済は中国の過剰供給能力に左右されることは避けられないであろう。
注1 7月2日付レポート「米ドル安の背後で進む「実態的な」人民元安」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

