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米国:7月利下げ「見送り」へ 日本:賃金統計は利上げ「可」を示唆

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は休場。USD/JPYは144半ばで推移。

注目点

  • 7月3日に発表された6月米雇用統計によると、雇用者数は14.7万人増と市場予想(10.6万人増)を上回り、表面上は景気減速懸念を和らげた。3ヶ月平均値でみても、15.0万人増と堅調であった。一方的な減少を回避している求人件数、一方的な増加を回避している新規失業保険申請件数などその他の労働市場統計と整合的な結果であった。

  • もっとも、6月の雇用者数増加をけん引したのは政府部門であり、ここだけで全体の約半分に相当する7.3万人の雇用増となったことには留意が必要。政府部門の雇用増は、マクロ的にみると、消費の源泉という視点で歓迎される一方、景気(労働需要)の強さを示すものではないことを割り引いて評価する必要がある。その他業種では教育・ヘルスケアが5.1万人増、レジャー・ホスピタリティが2.0万人増、建設が1.5万人増となり、民間部門全体では7.4万人増であった。民間部門の直近12ヶ月平均値が11.7万人増であることを踏まえれば、「軟調」との評価が妥当に思える。

図表
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  • 失業率は4.1%へと0.1%pt低下。小数点2桁では5月の4.24%の後、6月は4.12%であった。2024年6月に4%を突破して以降、概ね横ばいで推移している。もっとも、失業率低下の背景には労働参加率の低下(62.37%→63.28% )があり、必ずしも労働市場の改善を意味していないことには留意が必要だろう。また足もとでは、新規失業保険申請件数が抑制されている一方、失業保険継続受給者数がやや増加傾向にある点も不気味。求職環境が厳しくなっている可能性がある。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす基準の失業率が7.7%と上昇が一服している点は安心材料だが、労働市場は「堅調」とは言い切れなくなってきた。

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  • 6月雇用統計は、労働市場の軟化を示すデータが複数内包されており、Fedの利下げを正当化する結果であったと言える。ただしそれが「早期」、すなわち7月FOMCかといえば、そこまで緊急性を帯びている弱さではなかった。また関税交渉を巡っては、米国は大半の国との間で協議がまとまっておらず、交渉期限は事実上、8月1日まで延長された。トランプ大統領は、新たに発表する税率について「60〜70%程度から10〜20%程度まで幅広くなるだろう」とし、その税率に基づく関税は8月1日から適用するとの計画を示している。関税インフレの帰趨を見極める必要があるとしているパウエル議長からすれば、交渉成立前の利下げは時期尚早であり、距離を置きたいところだろう。FF金利先物が織り込む7月FOMCにおける利下げ確率が5%程度へと低下し、9月FOMC(17日)が73%に上昇していることに鑑みても、やはり9月の利下げが最も蓋然性が高いと言える。

注目点②

  • 本日発表された日本の5月毎月勤労統計によると、共通事業所版における一般労働者の所定内給与は前年比+2.4%と回復が足踏みした。2・3月に前年のうるう年の反動とみられる伸び率急低下を経験した後、4月に下落の半分程度を埋めたが、5月に戻りは観察されなかった。もっとも、今後、多くの企業で新年度入り(≒賃上げ)後の賃金が支給開始となることを踏まえれば、所定内給与が2%半ばに留まる可能性は低いと判断される。伸び率が3%に向けて回復していくならば、日銀の利上げ方針はより強固なものになるだろう。

図表
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藤代 宏一


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