株高不況 株高不況

日銀 短期金利と長期金利は別の議論

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月39,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲1.1%、NASDAQが▲1.3%で引け。VIXは20.8へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.289%(+2.0bp)へと上昇。

実質金利は2.098%(+1.7bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+44.9bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは144半ばへと下落。コモディティはWTI原油が73.0㌦(+4.9㌦)へと上昇。銅は9645.0㌦(▲57.0㌦)へと低下。金は3431.2㌦(+50.3㌦)へと上昇。

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注目点

  • 日経新聞は「日銀、2026年春から国債買い入れ減額幅圧縮へ 四半期ごと2000億円案」と題する記事を6月14日の17時に報じた。記事には、四半期ごとの国債買い入れ減額幅を現行の4000億円から2000億円程度へと縮小させる案が浮上しており、同案に対して「過半の政策委員が支持する」とある。当記事の確度は高い印象を受ける。2000億円(=四半期ごとの減額幅、以下同じ)という数値は、債券市場参加者会合で登場した数値であり、その後も報道各社の観測記事や専門家サーベイなどで言及され、いつの間にかコンセンサスになりつつあった。5月下旬に日本の30年金利が3%を突破してドイツの水準に比肩するなど、超長期金利の上昇が目立つ中、「(国債買入れの)中間評価」で国債買入れの減額幅を調整するとの観測が高まってきた。仮に報道どおり2026年4月から2000億円の減額となれば、最終的な買入れ額は月額2.1兆円程度になる。なお、2026年3月までの計画(四半期ごとに4000億円減額)が変更される可能性は極めて低い。

  • もっとも、現状維持(4000億円減額)という予想もそれなりにある。報道どおりの結果となれば、債券市場では需給の弛みに対する警戒感が和らぎ、長期金利の低下要因となるだろう。例えばブルームバーグ調査(調査期間:6月3~10日)によれば、4000億円以上の減額を予想する市場関係者は25%、同3000億円は25%、同2000億円は40%であった(判断し難いが10%)。

  • 買入れ減額の減速は、短期的にみれば金利低下要因である。もっとも、日銀の国債保有額が減少していくことに変わりはないため、長い目でみれば、ストック効果の減衰を通じて金利上昇要因となる。ストック効果とは、日銀が国債を大量に保有し、市場に流通する国債を減らすことで生じる、金利の下押し圧力であり、日銀は2024年7月の減額開始決定前まで、長期金利を約1%下げたと試算していた。資金循環統計に基づくと、国債発行残高に占める日銀の保有高は2024年末時点で46.3%と2023年の47.5%から低下したとはいえ圧倒的であり、現在もストック効果は強く効いていると考えられる。この点について内田副総裁は6月7日の講演で「(バランスシートを拡大した政策効果について)資産サイドで国債を買入れることによって、市中から金利リスクを吸収し、タームプレミアムを押し下げる効果(いわゆる『ストック効果』)が中心であると分析されています」としている。今後、国債市場において日銀の存在感が低下し、金融機関(銀行、保険・年金)が国債の主要な買い手に移り変わっていく過程で、ストック効果による金利低下圧力は弱まっていく公算は大きい。

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  • 国債買入れ減額の減速は、今後の政策金利にどういった影響を与えるだろうか。これを考える上で鍵になるのは長期国債の買入れ減額を「能動的な手段として使いたくない」という2024年4月の金融政策決定会合後の記者会見における植田総裁の発言だろう。植田総裁は、「長期国債の買入れを減額する場合に、経済・物価への影響をどの程度考慮するのか」という記者からの問いに対して、下記のように回答している。

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  • これは「金融緩和度合いの調整は短期金利の引き上げが基本であり、長期金利の引き上げを通じた金融引き締めはしたくない」と換言できる。今回、長期国債買入れ減額を減速させるのであれば、(超)長期金利の上昇圧力は幾分低下することになる。そう聞くと、日銀が緩和方向に傾斜したと考えたくなるが、そうした意図はほぼないだろう。むしろ、長期金利の急上昇という短期金利引き上げの阻害要因が取り除かれることで、利上げの道筋が拓けるという考え方もできる。筆者は、明日の決定が将来的な利上げの可能性を高める方向に作用すると読む。

藤代 宏一


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