米国 トランプ関税の影響顕在化もまだ限定的(5月CPI)

 ~財コア価格は前年比+0.3%と小幅ながら上昇~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年5月の消費者物価(総合CPI)は、前月比+0.1%(前月同+0.2%)と低下し、市場予想中央値の同+0.2%(筆者予想同+0.2%)を下回った。食品が外食で低下したものの穀物・ベーカリー製品、野菜・果物の上昇によって、同+0.3%(同▲0.1%)と上昇に転じた。一方、エネルギーがガソリンの下落やガスの低下を背景に同▲1.0%(同+0.7%)と下落に転じたほか、エネルギー・食品を除く消費者物価(コアCPI)が同+0.1%(同+0.2%)と、市場予想中央値の同+0.3%(筆者予想同+0.3%)への上昇に反して、低下した。
  • FRBは、6月のFOMCでも政策金利を据え置くと予想される。先行きの不確実性の高い状況が続く中、5月のCPI統計はインフレの上昇モメンタムの落ち着きを示したものの、コアCPIは前年比で+2.8%と高い上昇率にとどまっている他、労働市場が堅調さを維持していることから、FRBはトランプ2.0の政策の進展を見極める時間的な余裕がある。
  • 金融市場では、総合CPI、コアCPIがともに市場予想を下回ったことを受け、FF先物の利下げの織り込み度合いが強まり、10年国債利回りが低下した。ドルは主要通貨に対して下落し、主要株価指数は一旦上昇した。
  • トランプ関税は、2月に中国からの輸入品に対して10%賦課され、3月に中国からの輸入製品に対して10%上乗せされたほか、カナダ、メキシコからの輸入製品の一部に25%の関税が課された。4月に25%の自動車関税、10%の相互関税が発動されたうえ、中国からの輸入製品に対して125%の関税が上乗せされた(トランプ2.0での対中関税賦課は計145%)。5月に25%の自動車部品関税が発動された。一方、5月12日に米中がそれぞれ115%の関税引き下げ(14日に引き下げ)や、米国が90日間相互関税の上乗せを行わないことで合意したため、貿易の停止や異常な価格高騰は一旦回避できた。ただし、中国からの輸入製品に対する30%の関税は課されたままとなったため、財価格の押し上げ要因となっている。
  • このような関税政策のもと、玩具、家電等の上昇率が高まった。一方で、駆け込み輸入による在庫増加の効果の他、駆け込み需要の剥落による値下げ、貿易相手国の輸出価格の引き下げ等の影響で、5月のコアCPIは低い伸びにとどまった。しかし、今後在庫の減少によって、財価格の押し上げ圧力が強まっていくと予想される。
  • コアCPIでは、財コアが前月比0.0%(前月同+0.1%)、サービスコアが+0.2%(同+0.3%)とともに低下した。財コアでは、トランプ関税の影響によって、自動車部品が上昇に転じたうえ、家庭用耐久品・消耗品、医療用品が上昇した。また、余暇商品は同率の伸びを維持し、教材が変わらずとなった。特に、玩具、家電の上昇ペースが加速した。一方、在庫の積み増しや駆け込み需要の反動によって、新車、アルコール飲料が下落に転じた他、衣料品が下落幅を拡大、中古車は下落を続けた。さらに、情報機器、その他財が低下した。サービスコアでは、自動車メンテナンス・修理、電話サービスが下落に転じたほか、帰属家賃、賃貸料、専門医療、病院・関連サービス、医療保険、レンタカー、上下水道・ゴミ収集サービスが低下した。
  • CPIコアの上昇モメンタムをみると、6ヵ月前対比年率で+2.6%(前月+3.0%)と高い水準にとどまっているが、3ヵ月前対比年率で+1.7%(前月+2.1%)と2%を下回る伸びに低下しており、短期的なインフレ圧力の緩和を示した。
  • 前年同月比では、総合が+2.4%(前月+2.3%)と上昇し、市場予想中央値(筆者予想同+2.4%)と一致した。食品は、外食の低下も食材の上昇によって、+2.9%(同+2.8%)と上昇したほか、エネルギーが▲3.5%(同▲3.7%)と下落幅を縮小した。一方、コアCPIが+2.8%(同+2.8%)と横ばいとなり、市場予想中央値の+2.9%(筆者予想同+2.9%)を下回った。コアCPIを財、サービス別にみると、財コアが+0.3%(同+0.1%)と上昇したほか、サービスコアが+3.6%(同+3.6%)と同率となった。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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