米国 トランプ関税で非製造業も縮小(5月ISM非製造業)

~大幅な低下となり、非製造業部門の縮小を示唆~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年5月のISM非製造業景気指数(総合、季節調整値)は、49.9(前月51.6)と市場予想中央値の52.0(筆者予想52.2)への上昇に反して、前月比1.7%ポイントの大幅低下となり、拡大縮小の分岐点である50を僅かながら下回った。トランプ2.0発足によって、製造業部門が縮小を続ける中、非製造業部門も縮小に転じたことが示唆された。雇用、入荷遅延が上昇を続けたが、トランプ2.0の混乱を招く政策運営を背景に企業は慎重になっており、新規受注が大幅低下したほか、活動指数が低下し、全体を押し下げた。また、拡大した業種数が18業種中10業種(前月11業種)と減少した。企業からの報告では、関税を巡る長期的な不透明感によって予測や計画の策定が困難となったため、影響がより明確になるまで発注を遅らせたり抑制したりしているとの指摘があった。
  • 非製造業総合指数の構成項目では、雇用が50.7(前月49.0、前月比+1.7%ポイント)、入荷遅延が52.5(前月51.3、前月比+1.2%ポイント)と上昇した一方、新規受注が46.4(前月52.3、前月比▲5.9%ポイント)、活動指数が50.0(前月53.7、前月比▲3.7%ポイント)と低下した。
  • 新規受注は、大幅に低下し、縮小を示す水準となった。拡大した業種が18業種中6業種(前月8業種)に減少し、縮小した業種が7業種(同5業種)と増加した。企業から回答では、問い合わせはあるものの成約に向けた動きは見られないこと等が指摘された。
  • また、活動指数は、大幅に低下したが50を維持した。拡大した業種が18業種中12業種(前月10業種)と増加した一方、縮小した業種が3業種(同4業種)に減少した。先行きの需要が縮小する可能性が高まるなか、関税引き上げに備える動きが弱まり、低下したと考えられる。
  • 一方、雇用指数は上昇し、拡大を示す水準を回復した。雇用の拡大した業種数が18業種中7業種(同8業種)と減少したが、雇用の縮小した業種数も7業種(同8業種)に減少した。企業からの回答では、新規、既存の補充が必要な全てのポジションで採用を抑制していると指摘された一方、大企業のレイオフを受け知識不足を補うために経験豊富な人材を採用していると報告された。 入荷遅延は、トランプ関税の影響によるキャンセルの増加で納入が早まった一方、機器などのリードタイムが長くなっていると指摘された。
  • インフレ関係では、仕入価格指数が68.7(前月65.1)とさらに上昇した。18業種中16業種(前月17業種)で上昇、低下した業種はなく、インフレ圧力の強まりが示された。労働コストの継続的な上昇のほか、鉄鋼製品、アルミニウム、ファスナー、銅合金、一部の木材、電気機器、事務用品等が上昇した。また、供給不足の分野として、労働、変圧器が挙げられた。
  • 5月に拡大した業種数は、18業種中10業種(前月11業種)と減少した。拡大した業種は、強い順に、宿泊・飲食サービス、芸術・娯楽・レクリエーション、公的部門、鉱業、公益、教育サービス、不動産・賃貸・リース業、情報産業、医療・社会支援、専門・科学・技術サービスと続いた(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。
  • 米国経済全体の景気動向を示す「ISM総合景気指数(非製造業景気指数と製造業景気指数の合成)」は、5月に49.8(前月51.3)と低下し、縮小に転じたことが示された。四半期では、4、5月(平均)の製造業が48.6と1-3月期の50.1から低下し縮小に転じたうえ、非製造業が50.8と1-3月期の52.4から低下した。この結果、4、5月(平均)のISM総合景気指数は、50.5と1-3月期の52.1から低下し、4-6月期の米経済の減速を示している。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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