株高不況 株高不況

日本株の先行指標としての鉱工業生産統計

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月39,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.4%、NASDAQが+0.4%で引け。VIXは19.2へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.333%(▲0.9bp)へと低下。実質金利は2.076%(▲5.2bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+47.7bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは144前半へと低下。コモディティはWTI原油が60.9㌦(▲0.9㌦)へと低下。銅は9568.0㌦(+3.0㌦)へと上昇。金は3317.1㌦(+22.2㌦)へと上昇。

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注目点

  • 日本の2025年4月鉱工業生産は前月比▲0.9%と2ヶ月ぶりに減産となった。3月分は速報値の同▲1.1%から確報段階で同+0.2%へと大幅上方修正されていたため、3ヶ月平均でみれば同+0.5%と底堅さを増している。4月単月では市場予想(同▲1.4%)を上回り、経産省経済解析室の予測値(同▲2.5%)に対しても上振れた。増産となったのは、電子部品・デバイス工業、はん用・業務用機械工業、化学(無機・有機化学)など8業種、その反面減産となったのは生産用機械工業(フラットパネル・ディスプレイ製造装置)、自動車を除く輸送用機械工業、金属製品工業など6業種。

  • 5月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は5月が前月比+9.0%と強く、6月が同▲3.4%の減産となっている。経産省経済解析室が生産予測指数の上振れバイアスを補正した5月の予測値は同+5.2%と明確な増産が見込まれており、仮にそうなれば生産水準は2024年以降のレンジ上限を上抜ける。

  • 鉱工業生産全体の方向感を決める自動車工業の生産は前月比▲1.1%と落ち込んだ。4月に発動済みのトランプ関税の影響が懸念されてはいるが、各種報道から判断すると現時点において国内生産を調整する動きは限定的であると判断される。そもそも日系メーカーは関税を米国の新車価格に転嫁していないため、数量ベースの影響がでないのはある意味当然と言える。米国の新車販売台数も堅調に推移している。そうした中、国内では認証問題に起因する供給制約が緩和し、新車販売台数が持ち直し傾向を強めていることに鑑みると、先行きは緩慢ながら増産が期待される。輸送機械工業の生産計画は5月に同+7.0%の増産となった後、6月は同▲4.0%と減産が見込まれているが、均してみれば増産傾向にある。

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  • 自動車と並ぶ重要産業である半導体関連については、電子部品・デバイス工業が前月比+5.4%と3ヶ月連続の増産となった。2024年後半の落ち込みを埋め、一段と増加基調を強めている。増産を主導しているのは、集積回路(IC)であり2020年を100とする指数水準は162まで高まっている。なお、この増産が昨年12月から量産を開始したと伝わっている、TSMCの熊本工場の生産分によるものなのかは判然としない。経済産業省からの情報発信もない。他方、生産用機械に分類される半導体製造装置は同▲4.2%となった。3ヶ月ぶりの減産となったものの、均してみれば増産基調にある。関連指標の機械受注統計(機種別集計の電子計算機等)も反転の兆候があり、半導体製造装置の引き合いがなお底堅いことがわかる。

  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産に注目すると、上述のとおり4月の生産は前月比+5.4%となり、前年比では+11.0%となった。生産計画は5月に前月比+6.0%となった後、6月は同▲2.9%と控えめながらも増産傾向が見込まれている。次に出荷と在庫に注目すると、4月は出荷が前年比+11.6%とプラス圏に浮上、在庫は同▲1.1%と3月から概ね横ばいとなり、出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)は+12.7%ptへと急上昇した。3月単月では19ヶ月ぶりにマイナス圏へ転落していたので、その反動もあったとみられるが、出荷の伸びを伴った需給バランス改善が確認できたことは朗報と言える。出荷・在庫バランスは、3ヶ月平均でみても+6.4%ptと反発の兆候が窺える。

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  • ここで長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと、日経平均株価が連動性を有してきたことを再確認したい。株価指数において半導体を直接手掛ける企業の存在感は必ずしも大きくはないが、半導体製造装置や化学品など「広義半導体」で見ればその存在感は大きく、結果的に日本株全体のうねりを作り出す構図があると筆者は理解している。

  • 先行きの出荷・在庫バランスを見極めるために在庫循環図の位置取りを確認すると、直近12ヶ月は、右下領域(在庫減・出荷増)から左下領域(在庫減・出荷減)へと逆走した後、大きくみれば北上している。過去の経験則に従えば、今後は東方に進路をとった後、徐々に右上領域(在庫増・出荷増)に向けて北上すると予想される。もちろん、米国の通商政策次第ではあるが、AI向け半導体以外のPC、スマホ、自動車向けが復調すれば、出荷・在庫バランスの大幅悪化は回避され、再び上向きのカーブを描くと期待される。2020年に販売されたPCが徐々に買い替えサイクルに突入することも頭の片隅に入れておく必要があろう。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。