株高不況 株高不況

パウエル議長の待ちが促す円安

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月39,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.4%、NASDAQが+0.3%で引け。VIXは23.6へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.273%(▲1.6bp)へと低下。

実質金利は1.987%(▲1.9bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+48.7bpへとプラス幅縮小。

  • 為替はUSDが全面高。USD/JPYは143後半へと上昇。コモディティはWTI原油が58.1㌦(▲1.0㌦)へと低下。銅は9419.5㌦(▲118.5㌦)へと低下。金は3391.9㌦(▲30.9㌦)へと低下。

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注目点

  • 5月FOMCでは予想どおり金融政策の現状維持が決定され、FF金利(誘導目標レンジ上限)は4.5%で据え置かれた。通商政策の不透明感に起因する景気減速は、消費者マインド指標など一部にその兆候があるものの、現時点では駆け込み需要もあり、景気が明確に減速している証拠はない。トランプ関税それ自体の帰趨が不明確な上、関税が実体経済にどういった影響を与えるのか不確実な状況で、金融政策を据え置くのは理にかなっている。

  • 声明文では、関税導入を前にした駆け込み輸入がデータを攪乱しているとしつつも景気と労働市場は「堅調」で、インフレ率は幾分高止まりしているとして現状判断は3月FOMCから維持した。輸入の増加は、GDPを減らす方向に寄与する。他方、先行き判断については「不確実性は一段と高まった」として、警戒レベルを引き上げた。3月は単に「不確実性は高まっている」と表現していた。その上で5月は「失業率とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断した」として、新たにスタグフレーションのリスクに言及した。この部分のみに着目すればハト派的な印象を受ける。

  • しかしながら、パウエル議長は「より多くのデータを見るまでは、適切な対応が何なのか実際には分からないため、先手を打てる状況ではない」として、いわゆる予防的利下げを講じる考えが現時点でないことを示した。その上で通商交渉の帰趨がある程度判明するまで「様子見(Wait and See)」に徹する構えを強調した。パウエル議長は「政策調整の前に待つ時間がある」、「(政策判断を)急ぐ必要はなく、忍耐強くいられる」、「事態の進展を見守り、明確になるのを待てる」、「待つことのコストは比較的低い」、「現在は待つことが適切、不確実性が非常に高い」などと様々な表現で様子見姿勢を続けることを明確にした。事実上、6月FOMCにおける利下げを排除した形だ。

  • それでも金融市場参加者は、年内3回強の利下げを織り込んでいる。筆者は①米国経済が急減速を回避しつつ、②関税由来のインフレが(急速ではなく)段階的に進むとの前提で、9月(17日)と12月(10日)FOMCにおいて利下げが決定されるとみている。現時点で市場参加者が織り込んでいる3回(ないしは4月上中旬に織り込まれていた4回)の利下げは、原油価格が更に下落すれば現実味を帯びてくるが、早期にデータの蓄積が進まない可能性が高く、その点において行き過ぎだと判断している。もちろん通商交渉の行方次第で見通しが大きく変わることはあり得るが、今回Fedが発した一連の情報に鑑みると、7月でも政策判断は時期尚早ではないか(7月時点における最新のハードデータは5月のものが多い)。利下げが俎上に載るのはジャクソンホールシンポジウム後の9月FOMCが最も自然に思える。

  • 筆者はコンセンサスにやや逆行する形でUSD/JPYが150円近傍まで円安方向に戻すとの予想を示してきた。その前提にあるのは、Fedの利下げ観測剥落に起因する日米金利差の再拡大であり、その点で今回のパウエル議長会見は円安方向への流れを支持したように思える。当面は、Fedの利下げ観測の剥落が円安を促すのではないか。

藤代 宏一


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