トランプ関税で生産が顕著な落ち込み(4月ISM製造業)

~コストの大幅な上昇、生産、雇用、新規受注の縮小を示す~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年4月のISM製造業景気指数(季節調整値)は、48.7(前月49.0)と拡大縮小の分岐点である50を2ヵ月連続で下回り、米製造業部門の縮小ペースの加速を示した。ただし、前月比0.3%ポイントの低下にとどまっており、市場予想中央値の47.9(筆者予想49.2)を上回った。トランプ関税の影響で、生産が落ち込んだが、新規受注、雇用が悪化の度合いを弱めた他、企業の関税負担の交渉などによる入荷遅延の上昇で、景気指数を下支えした。企業の回答では、トランプ関税に対する懸念や影響が引き続き多数を占めた。
  • トランプ関税政策では、3月4日にメキシコ、カナダからの輸入品の一部に25%の関税を課したほか、中国からの輸入品に対して2月に10%、3月に10%の関税を課した。また、3月12日に鉄鋼・アルミに25%の関税を賦課した。4月に、10%の相互関税、対抗措置を取った中国に対してスマホなどを除く輸入製品に125%の関税上乗せ、25%の自動車関税などを発動し、トランプ関税が本格的に始まった。ただし、相互関税の上乗せ部分は、90日間延期された。
  • 4月の構成項目別の前月からの変化では、新規受注、雇用、入荷遅延が上昇した一方、生産、在庫が低下した。水準では、在庫、入荷遅延が50を上回ったが、新規受注、生産、雇用が50を下回り、縮小が示された。
  • 新規受注は、47.2(同45.2)とトランプ関税による不確実性の高まりにもかかわらず上昇し、拡大した業種数は18業種中8業種(同6業種)と増加した。ただし、50を下回っており、関税コストの負担に関連する交渉等の影響で発注の減少が続いている。また、雇用は、46.5(同44.7)と上昇したものの、事業環境の不透明感の強まりを背景に、レイオフ、自然減、採用凍結を中心とした人員削減が継続され、50を下回ったままである。増加した業種数は5業種(同1業種)に増加した。さらに、入荷遅延はサプライヤーとの関税負担の交渉等によって、納品が遅れ、55.2(同53.5)と上昇した。
  • 一方、生産は、新規受注や受注残の減少を背景に、44.0(同48.3)と低い水準に大幅低下した。なお、拡大した業種数は18業種中7業種(同5業種)に増加しており、一部の業種の落ち込みによって押し下げられたと考えられる。また、在庫は、50.8(前月53.4)と、在庫の増加ペース鈍化を示した。関税賦課の影響を警戒し、材料の早期納入を求めた動きが弱まり始めた。 サブ項目では、輸出受注DIが43.1(前月49.6)と低下し、輸出の減少幅が拡大したことを示した一方、輸入DIが47.1(前月50.1)と低下、駆け込みの動きが終わり、輸入が減少に転じたことを示した。
  • インフレの動向を示す仕入価格指数は、69.8(前月69.4)と6ヵ月連続で上昇し、コストの増加を示した。
  • 4月に拡大した業種は、全18業種のうちアパレル・皮革製品、石油・石炭製品、プラスチック・ゴム製品、電気設備・部品、繊維、コンピューター・電子機器、非鉄、その他製造業、一般機械、化学製品、一次金属の11業種(前月9業種)に増加した(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。主要6業種で、拡大した業種は石油・石炭製品、コンピューター・電子機器、一般機械、化学製品の4業種と前月の3業種から増加した。
  • 今後の製造業部門の活動は、各国との貿易交渉の影響を受けるが、合意内容や交渉の進展ペースがそれぞれ異なる可能性が高く、交渉を受けた相互関税の上乗せ率、引き下げ率なども多様な結果になるとみられ、少なくとも7月4日ごろの相互関税上乗せ期限まで不確実性の高い状況が続く可能性が高い。また、半導体、医薬品、銅、木材などへの25%の関税賦課も計画されており、製造業の景況感は7月まで悪化を続ける可能性が高い。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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