トランプ関税の発動も4月の米労働市場は堅調(雇用統計)

~底堅い需要が労働市場の支えに~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年4月の非農業部門雇用者数(事業所調査)は、前月差+17.7万人(前月同+18.5万人)と市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の同+13.8万人(筆者予想同+16.6万人)を上回った(2、3月合計5.8万人下方修正)。政府部門が連邦政府の減少にもかかわらず同+1.0万人(前月同+1.5万人)と増加した他、民間部門が同+16.7万人(同+17.0万人)と小幅鈍化にとどまり、市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の同+12.5万人(筆者予想同+14.8万人)を上回った。
  • トランプ2.0では、制度や政策の変更を多数の大統領令によって早期に実行しているため、米経済は混乱した状況に陥りつつある。4月に、25%の自動車関税、10%の相互関税、合計145%の対中関税等が発動されたが、コスト増加などの影響がまだ限定的だったほか、個人消費など民間需要が底堅く推移していること等を背景に、4月の労働市場は堅調さを維持した。しかし、25%の自動車関税、10%の相互関税、合計145%の対中関税、25%の自動車部品関税等の発動によるコスト増やサプライチェーンの混乱を背景に、民間での採用抑制や人員削減の動きがさらに強まるとみられ、雇用の増加ペースは年末にかけて鈍化傾向を辿ると見込まれる。
  • 政府部門では、連邦政府が政府効率化省(DOGE)による政府支出の削減のための職員解雇で、前月差▲0.9万人と減少したものの、州・地方政府が同+1.9万人の増加となったことで、政府全体で同+1.0万人(前月同+1.5万人)と増加した。州・地方政府では、解雇された連邦職員などを採用する動きがでている。
  • 民間部門では、トランプ関税による悪影響を緩和するためにコスト削減が必要な小売業(同▲0.18万人)、製造業(同▲0.1万人)が減少に転じた。一方、医療・社会支援が強い需要や人手不足を背景に、同+5.82万人と引き続き最大の増加となったほか、輸送・倉庫が駆け込み輸入や作業の増加などの影響で、同+2.9万人と加速した。また、底堅い需要や良好な天候等を背景に飲食店(同+1.66万人)、建設業(同+1.14万人)、教育サービス(同+1.15万人)が高い伸びとなった。
  • 雇用の増加基調は、3カ月移動平均で前月差+15.5万人(前月同+13.3万人)、6ヵ月移動平均で前月差+19.3万人(同+17.1万人)とともに加速し、堅調なペースを維持した。 平均時給は、前年同月比+3.8%(前月+3.8%)と変わらず、市場予想中央値+3.9%(筆者予想+3.9%)を下回った。労働投入量は、3ヵ月移動平均・3ヵ月前対比年率で+2.1%(前月+0.8%)と加速し、労働需要の拡大モメンタムが強まったことを示している。
  • 4月の失業率(U3、家計調査)は、4.2%(前月4.2%)と変わらず、市場予想中央値と一致した(筆者予想4.2%)。失業率は、23年4月の3.4%をボトムに緩やかに上昇しているが、依然低い水準にとどまっており、労働市場の良好な状態での安定を示している。労働参加率は、62.6%(同62.5%)と小幅上昇したが横ばい圏での推移を続けている。 「広義の失業率(U6)」は、7.8%(前月7.9%)と2ヵ月連続で低下した。これは、上述の失業率(U3)に“現在は職探しをしていないが過去1年間に求職活動を行った人“と”正規雇用を探しているがパートタイムで働いている人“を失業者に加えた数値。U6は、緩やかな上昇傾向を辿っており、労働市場の緩やかな軟化を示しているが、U3と同様に低い水準にとどまっている。 また、高いほど労働環境が良好であることを示す自発的失業率が11.9%(前月12.3%)と低下し、労働市場の軟化を示したが、高い水準を維持している等、家計調査は全体的に労働市場の緩やかな軟化を示している。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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