インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

5月利下げの可能性が高まるなかで豪ドル相場はどうなる?

~1-3月のコアインフレ率は3年強ぶりに目標域に収束、日本円に対しては上値の重い展開も~

西濵 徹

要旨
  • 米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感は世界経済や国際金融市場を揺さぶる展開が続く。オーストラリア経済に対する相互関税の直接的な影響は限定的とみられる一方、米中貿易戦争の影響は間接的に及ぶことは必至と見込まれる。ここ数年の同国経済は、中国の景気減速や物価高と金利高による内需鈍化で頭打ちしてきた。しかし、商品高の一服や電力補助金政策などによりインフレは落ち着きを取り戻している。RBAは2月に利下げに動くも、不動産価格や雇用環境の底堅さを理由にタカ派姿勢を維持したため、物価動向に注目が集まった。1-3月のインフレ率は前年比+2.4%、コアインフレ率も同+2.9%とともに目標域に収束し、金融市場では5月の追加利下げを織り込む動きが進む。来月3日の総選挙は接戦が予想されるが、経済政策に大きな違いはなく、政策転換の可能性は低い。一方、豪ドル相場は米ドル相場の動向に影響を受けるほか、日本円には米ドル/円相場の影響を受ける形で上値の重い展開が続くと見込まれる。

このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感に揺さぶられている。米トランプ政権は、すべての国に一律で10%の関税を課した上で、一部の国を対象に非関税障壁に応じて関税を上乗せする相互関税を課す方針を示した。なお、オーストラリアに対する相互関税は10%と一律関税と同水準である上、対米輸出額も名目GDP比で1%に満たないことに鑑みれば、直接的な影響は限定的と見込まれる。他方、相互関税をきっかけに米国と中国は報復合戦に発展するとともに、双方が高関税を課す貿易戦争に突入している。オーストラリアにとって中国は最大の輸出相手であるとともに、近年は中国景気の影響を受けやすくなっていることを勘案すれば、トランプ関税による影響が同国経済に間接的に伝播する可能性に留意する必要はある。

このところのオーストラリア経済を巡っては、中国景気の変調が外需の足かせとなるとともに、物価高と金利高の共存長期化が内需の重石となるなど、頭打ちの様相をみせてきた。しかし、商品高の一巡に加え、アルバニージー政権が実施した電力料金に対する補助金政策の効果も重なり、昨年後半以降のインフレ率はRBA(中銀)が定める目標域内で推移するなど落ち着きを取り戻している。よって、RBAは今年2月の定例会合で4年3ヶ月ぶりの利下げに動くも、先行きの政策運営について『タカ派』的な姿勢を維持する考えをみせた。その理由について、RBAは高金利政策の長期化にもかかわらず雇用環境が引き続き強含んでいる上、不動産価格の上昇が続くなどインフレ圧力に繋がるリスクを警戒しているとした。なお、アルバニージー政権は今月から2年間、外国人投資家による中古住宅の購入を禁止するなど不動産市況の沈静化を目的とした政策を打ち出している。しかし、足元の不動産価格はRBAの利下げを追い風に再び上昇の動きを強めて過去最高値を更新するなど、需給ひっ迫が続くなかで政策対応の難しさがあらためて確認されている。

図表1
図表1

一方、頭打ちの兆しがうかがわれた雇用環境は引き続き底堅い動きをみせており、RBAの判断を難しくさせている。RBAは今月1日の定例会合で政策金利を2会合ぶりに据え置く一方、『トランプ関税』による不確実性の高まりに留意しつつ、タカ派姿勢を後退させるなど将来的な追加利下げの可能性に含みを持たせる考えをみせた(注 )。なお、その後に公表された議事要旨では「5月の定例会合が追加利下げの可能性を再検討する好機になる」との見方を示しており、RBAが重視する四半期ベースの物価統計の動きが注目された。1-3月のインフレ率は前年同期比+2.4%と前期(同+2.4%)から引き続き目標域で推移し、コアインフレ率(トリム平均値ベース)も同+2.9%と3年強ぶりに目標域に収束するなど、全般的にインフレが落ち着きを取り戻す動きが確認された。前期比は+0.86%と前期(同+0.29%)から上昇ペースが加速し、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇のほか、教育関連など一部のサービス物価が上昇したことが影響している。一方、貿易財を中心とする財価格は下振れするとともに、全体としてのサービス物価も上昇ペースが鈍化するなど、総じてインフレ圧力が後退していると捉えられる。さらに、アルバニージー政権が先月公表した来年度(2025-26年度)予算案では、電力料金への補助金政策の延長、公立学校に対する資金援助拡大、学生ローンの負担軽減、公的医療の拡充など、家計部門の負担軽減を重視する内容が盛り込まれている。よって、先行きのインフレは引き続き落ち着いた推移をみせる可能性がある。

図表2
図表2

金融市場においては、RBAが5月20日に開催予定の次回会合での追加利下げを織り込む動きがみられる。足元のインフレ率は引き続きRBAの目標域で推移するとともに、コアインフレ率も3年強ぶりに目標域に収束するなど落ち着きを取り戻していることに鑑みれば、5月会合で利下げに動く可能性は高まっていると判断できる。また、来月3日に実施される総選挙(連邦議会下院(代議院)選挙)を巡っては、長らく世論調査では野党・保守連合の支持率が与党・労働党を上回る推移をみせてきたが、最大野党・保守党のダットン党首の相次ぐ不手際や失言を理由に支持率を低下させており、直近では労働党が保守連合をわずかに上回るなど激戦が予想されている。また、経済政策面では与野党の間で大きな違いがないことから、総選挙の後も大幅な政策転換が図られる可能性は低いと見込まれる。こうしたことから、トランプ関税の発表直後の金融市場の混乱を受けて豪ドル相場は大きく調整したものの、足元で米ドル安の動きも追い風に調整の動きは一巡している。とはいえ、先行きについては引き続き米ドル相場の行方に左右される展開が続くことは避けられないほか、日本円に対しては当面は米ドル/円相場が円高方向に振れやすいことに鑑みれば、上値を抑える展開が続く可能性に留意する必要がある。

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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