株高不況 株高不況

海外投資家の認識を覆す日銀の利上げ 利上げは景気を加速させる?

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月39,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+1.7%、NASDAQが+2.5%で引け。VIXは28.5へと低下。

  • 米金利はツイスト・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.305%(+3.1bp)へと上昇。
    実質金利は2.075%(▲4.9bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+50.6bpへとプラス幅縮小。

  • 為替はUSDが堅調。USD/JPYは143後半へと上昇。コモディティはWTI原油が62.3㌦(▲2.0㌦)へと低下。銅は9382.5㌦(+13.5㌦)へと上昇。金は3276.3㌦(▲124.5㌦)へと低下。

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注目点

  • 金融市場で「米国離れ」が進んでいることもあってか、トランプ政権の政策態度は軟化し、徐々に「元の世界」へ戻ろうとしている。トランプ大統領は対中関税の大幅引き下げを示唆している。4月22日に「かなり下がる」と発言した後、23日には「(各国と)素晴らしい取引になると思う。取引にならなければ関税を設定するだけだ。今後2~3週間でそうなると思う。中国ともあり得る」とした。WSJは対中関税が50~65%に下がるとも報じた。ベッセント財務長官は同報道を否定するも「米中双方に緊張緩和が必要だ」として関税率の引き下げに前向きな発言をした。

  • 日本に関しては、ベッセント財務長官が4月23日に「通貨目標、絶対にない」、「関税と非関税貿易障壁、通貨操作、労働力や設備投資に対する政府補助金など、われわれは複数の要素に目を向けている」とした。政府補助金が産業政策にあたるという文脈なのか判然としないが、何れにせよ変動相場制の根幹を揺るがしたり、他国(日本)の中央銀行に圧力をかけたりするような事態には発展しない可能性が高い。

  • それでも日銀は利上げを続ける可能性が高いと筆者は判断している。人手不足由来のインフレ圧力が強い中、輸入物価上昇を抑制する狙いがある他、日米交渉でトランプ大統領を刺激したくない意図もあって、日銀は利上げに前向きだろう。筆者は7月の追加利上げを予想している。

  • 株式市場では「利上げをする国」の株式が避けられる傾向にある。2024年夏以降、FedとECBが利下げ方向にあるのをよそに、日銀が利上げ方針を維持してきたこともあって、海外投資家は日本株を売り越してきた。2024年8月の株価暴落後は、トランプ関税に対する警戒、シリコンサイクル(≒世界半導体売上高)のピークアウトに対する懸念も重なり、ほぼ一貫した売り越し傾向にある。

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  • もっとも、今次局面における日銀の利上げは、従来対比で景気下押し効果は小さく、景気を安定させる、場合によっては景気が加速する可能性すらある。海外投資家がこの点を意識するようになれば、日本株の再評価となるのではないか。

  • 現在日本の家計が直面している食品など生活必需品の価格上昇は、その根源に円安がある。日銀の利上げが所期の効果を発現し、為替が円高方向に推移すれば、輸入物価低下を通じて家計の購買力回復に寄与し、個人消費が拡大する可能性はある。また家計の金利収支が改善する効果もある。4月23日に日銀が発表した金融システムレポートによれば、預金金利は平均で0.2%まで上昇した模様であり、こうした預金利子の受取増加が個人消費に回る可能性もある。2023年末時点で家計が保有する現預金は1150兆円程度(内閣府「国民経済計算」)とされており、負債を差し引いても800兆円近い純現預金がある。利上げによって家計の金利収支は改善する公算が大きい。

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  • 本格的な利上げが30年以上なかった日本において、利上げの不確実性は上下どちらの方向にも高いが、現在のところ0.5%までの利上げによって、金融引き締め効果が極端に強く出てしまう事態は避けられているように思える。金利敏感セクターの代表格である住宅市場に大きな変調は観察されていない。そう考えると、利上げを続けても景気が腰折れしないどころか、底堅さを増していくことは、引き続きあり得るだろう。こうした認識が海外投資家の間で広がっていけば、売り越し基調が反転する可能性はある。

藤代 宏一


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