株高不況 株高不況

利下げを引き寄せた2月米CPI

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月43,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.5%、NASDAQが+1.2%で引け。VIXは24.2へと低下。

  • 米金利はカーブ全体で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.337%(+2.0bp)へと上昇。
    実質金利は1.974%(+1.3bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+32.0bpへとプラス幅縮小。

  • 為替はUSDが中位程度。USD/JPYは148前半へと上昇。コモディティはWTI原油が66.3㌦(+0.2㌦) へと上昇。銅は9662.5㌦(+134.0㌦)へと上昇。金は2920.9㌦(+21.5㌦)へと上昇。

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注目点

  • トランプ関税が本格的に発動される前の段階である2025年2月の米CPIは家賃と(家賃以外の)サービス物価に主導され、インフレ沈静化が進展していることを示し、スタグフレーション懸念を和らげた。1月CPIが発表された時点で1.3回に留まっていた年内の利下げ回数は、2月CPIを受けて2.8回まで高まった。景気減速にもかかわらず、インフレ率が高止まりしているため、Fedが利下げに動けないという「詰んだ」状態に陥る危険性は低下した。ナスダックは直近高値からの下落率が13%程度と調整局面入りしているが、似たような株価下落局面にあった2022年とは「Fedが利下げに踏み切れる」という点で異なる。

  • 総合CPIは前月比+0.22%(市場予想は同+0.3%)、前年比+2.82%(同+2.9%)であった。エネルギーは前月比+0.2%と1月の同+1.0%から減速。食料は同+0.2%とこちらも1月の同+0.5%から落ち着きがみられた。食料・エネルギーを除いたコアCPIは前月比+0.23%(市場予想は+0.3%)、前年比+3.11%(同+3.2%)へと減速。コアCPIの前月比年率は+2.75%、3ヶ月前比年率は+3.59%と瞬間風速は下方屈折。前年比でみると、コア財価格のマイナス幅が縮小する反面、コアサービスが緩やかな減速基調にある。コア財は中古車(前月比+0.9%)が上昇した他、関税引き上げを睨んだ駆け込み需要によって価格上昇圧力が生じた可能性が指摘できる。ISM製造業景況指数ではサプライヤー納期の長期化と仕入価格の上昇が示唆されていた。

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  • CPIで最大のウェイトを有する家賃は前月比+0.3%。前年比+4.3%となり、全体のインフレ率低下に寄与。2023年3月に記録した前年比+8.2%から減速が続いており、先行きも、先行指標のZillow Indexやケース・シラー住宅価格指数などから判断すれば、上昇鈍化が見込まれる。しばらくはCPI全体を押し上げる構図が続くと判断されるが、家賃インフレの正常化は時間の問題と言って差し支えないだろう。

  • こうした中、家賃を除いたコアサービス、いわゆるスーパーコアも低下している。前月比では+0.22%となり、3ヶ月前比年率では+4.86%まで減速し、前年比でも+3.78%まで鈍化した。賃金由来のインフレ圧力が減退したことの意味は大きい。

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  • Fedは、これまで主に賃金由来のインフレ圧力と関税引き上げによるインフレ圧力を警戒し、利下げに慎重な姿勢を示してきた。この内、関税については、どれほどのインフレ押し上げに繋がるか不明確である他、それが一回限りであるならば、それを金融引き締めによって対処するかは微妙なところだろう。金融引き締め効果が6~12ヶ月程度のタイムラグを伴って発現する頃には、関税由来のインフレが収まっている可能性もある。Fedが財物価の上昇を「一時的」とみなすならば、物価の見極めにあたって、専らサービス物価が重視されるかもしれない。サービス物価を決定するのは基本的に人件費であるから、2月雇用統計で示されたような平均時給の鈍化が続けば、Fedはインフレ沈静化に自信を深めるだろう。そうであれば6月FOMCにおける利下げも可能になってこよう。金融市場が荒れるなら5月の可能性もあり得る。

藤代 宏一


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