株高不況 株高不況

不気味な兆候がでている米雇用統計

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月43,000円程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。

  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。

  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。

目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.6%、NASDAQが+0.7%で引け。VIXは23.4へと低下。

  • 米金利はベア- フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.346%(+0.8bp)へと上昇。
    実質金利は1.955%(+1.6bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+29.9bpへとプラス幅縮小。

  • 為替はUSDが中位程度。USD/JPYは148近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が67.0㌦(+0.7㌦)へと上昇。銅は9613.5㌦(▲120.5㌦)へと低下。金は2914.1㌦(▲12.5㌦)へと低下。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

注目点

  • 2月米雇用統計は、事前に警戒されていたほどの弱さはなく、労働市場の雇用吸収力がなお健全であることを印象付ける結果であった。もっとも、最近の景気減速や政策不透明感の高まりを受けて強まった利下げ観測を否定するほどの強さはなく、一部に弱さがみられた。こうした強弱区々の結果を受けて、FF金利先物から逆算した年内の利下げ回数は3回で大きな変化はなかった。

  • 2月の雇用者数は前月比+15.1万人となり、市場予想(同+16.0万人)を僅かに下回り、過去2ヶ月分も合計で0.2万人が下方修正された。もっとも、3ヶ月平均値は同+20.0万人と堅調な推移を続けている。2024年8月に同+8.2万人まで減速して米国の景気後退懸念を惹起した後、特殊要因で減速した10月を除くと同+20万人前後で安定している。12ヶ月平均値も同16万人台で下げ止まっている。

  • 景気減速の兆候が増しても、人手不足を恐れる企業は依然として解雇に消極的である。そのため労働需給が急速に弛緩している様子はない。2月の業種別動向は教育- ヘルスケア(同+7.3万人)という景気循環との関係が希薄な業種によって押し上げられたものの、金融(同+2.1万人)、建設(同+1.9万人)、運輸(同+1.8万人)が底堅さを示すなど全体的に堅調であった。なお、イーロン- マスク氏が主導する政府部門の雇用削減は、3月雇用統計に反映される見込みであるが、2月の段階で政府部門の雇用増は同+1.1万人へと減速しており、それまでの6ヶ月平均である同+3.5万人から減速した。労働市場全体を就業形態別にみるとフルタイム労働者が減少、パートタイム労働者が大幅増加となり、雇用ミックスは軟化した。

米国雇用者数増加幅
米国雇用者数増加幅

米国フルタイム労働者比率
米国フルタイム労働者比率

  • 失業率は4.1%へと0.1%Pt上昇。小数点2桁では1月の4.01%に続き、2月は4.14%であった。失業者数は前月比+20.3万人の増加となったが、過去6ヶ月程度は概ね横ばいとなっている。他方、失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人も失業者と見なす基準では8.0%へと0.5%Ptもの上昇を記録した。U6基準の失業率は、労働市場の変調を早期発見する指標として必ずしも有用ではないが、向こう数ヶ月は注意深く見た方が良いだろう。

米国 失業率
米国 失業率

  • 賃金インフレの帰趨を読む上で重要な平均時給は前年比+4.02%(1月:+3.95%)と、前月からやや加速した。もっとも、前月比では1月に+0.42%となった後、2月は+0.28%へと減速。短めの週平均労働時間(34.1時間)にもかかわらず、フルタイム労働者比率の低下が効く形となった。平均時給の瞬間風速を示す3ヶ月前比年率は+3.61%(1月+4.00%)へと減速、同3ヶ月平均値は+3.89%とどちらでみても減速基調にある。移民の強制送還による労働需給逼迫が過度な賃金上昇を助長する懸念は残存するが、賃金由来のインフレ圧力はFedの利下げを阻害する存在ではない。当面は、関税引き上げに伴う財物価の上昇、もう少し長い目でみれば、それがサービス物価にどういった影響を与えるのかが焦点になってこよう。

米国平均時給
米国平均時給

藤代 宏一


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