株高不況 株高不況

日本株 トランプ関税との付き合い方 崩れた円安・株高

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月43,000円程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。

  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。

  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。

目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+1.1%、NASDAQが+1.5%で引け。VIXは21.9へと低下。

  • 米金利はカーブ全体で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.340%(▲1.5bp)へと低下。
    実質金利は1.938%(+5.1bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+27.0bpへとプラス幅拡大。

  • 為替はJPYが最弱。USD/JPYは149後半へと低下。コモディティはWTI原油が66.3㌦(▲2.0㌦)へと低下。銅は9585.0㌦(+242.0㌦)へと上昇。金は2926.0㌦(+5.4㌦)へと上昇。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

注目点

  • 日経平均株価は2024年10月以来のレンジ下限であった38000円を割れている。株価下落の直接的なきっかけはトランプ関税に対する脅威であり、自動車、半導体など最終需要地としての米国が重要な業種を中心に広範な銘柄が売られている。それに加えてこの1ヶ月程度、米経済指標が総じて軟調に推移していたことも大きい。関税引き上げに伴うインフレ警戒がCB消費者信頼感指数に表面化したのを皮切りに、個人消費(PCE)が弱く、住宅関連指標(NAHB住宅市場、新築・中古住宅販売件数、中古住宅販売成約指数、住宅着工件数)は総崩れとなり、いずれも予想比軟調で前月から悪化方向に動いた。その他ではISM製造業景況指数も予想に届かず前月から軟化。この間、エコノミスト予想がどちらの方向に外れたかを示す、エコノミックサプライズ指数は明確な下向き方向にある。これはエコノミストの想定を上回る速度で米国経済が軟化していることを意味する。

図表
図表

  • それらを映じてアトランタ連銀が算出するGDPNow(GDP成長率をリアルタイムで予測するモデル)は直近値が▲2.8%と垂直的な落下となっている。この指標がマイナス圏に沈むのは2022年7月以来のことで、米国独り勝ちの構図が変調をきたしている様子が窺える。もちろん、失業率が4%という低水準にあり、なおかつFedの政策対応余地が豊富であることを踏まえると、景気後退を懸念する必要性には乏しいが、株価については実質金利対比でかなり上昇した状態にある高PERが正当化されにくくなってきたのは事実だろう。

図表
図表

図表
図表

  • その点、3月5日に発表された2月ISMサービス業景況指数が市場予想に反して改善したことは好感される。サプライヤー納期(入荷遅延)が53.4へと0.4pt長期化するなど関税引き上げを睨んだ駆け込み需要がかく乱要因となったものの、雇用(52.3→53.9)が力強さを増した他、新規受注(51.3→52.2)も上向くなど、全体的に底堅い印象であった。類似指標のサービス業PMIも速報値(49.7)から確報段階で51.0へと大幅に上方修正され、安心感をもたらした。なお、明日発表の雇用統計は、雇用者数が前月比+16.0万人、失業率は4.0%と横ばいの予想になっている。これらが市場予想に届けば、投資家心理の好転に繋がるのではないか。

図表
図表

  • この間、USD/JPYは150円割れの水準に低下している。基本的な背景は、米国の利下げ観測が復活する下、日銀の利上げ観測が高まったことで生じた日米金融政策のベクトル相違。FF金利先物で計測したFedの利下げ回数は12月FOMCまでに2.7回と増加傾向にあり、OISで計測した日銀の利上げ回数は12月金融政策決定会合までに1.5回と増加傾向にある。

  • 為替を読む上で筆者は米指標の下げ止まりに注目している。ISMサービス業の改善がその起点となったかは微妙なところだが、最近の円高方向への動きが概ね米エコノミックサプライズ指数の低下で説明できることを踏まえれば、米指標の好転に伴い、USD/JPYは反転上昇する可能性がある。

図表
図表

  • その場合、日本株は円安を追い風に失地回復と言いたいところだが、2024年8月の暴落以降、為替が円安方向に戻ったにもかかわらず、米国株に対して大幅に劣後した状態にある。トランプ関税が重く圧し掛かっている他、半導体市況の拡大一服を受けて半導体関連銘柄が精彩を欠くなど、為替以外の要因も効いている模様。

  • 反転のきっかけになり得る要素としては、やはり自社株買いが注目される。過去3年と同様、5月の決算シーズンに向けて自社株買いが一段と加速すれば、相対劣後は幾分解消に向かうのではないか。自社株買いは2月時点で年間18.8兆円と空前の水準にあるが、依然としてPBR1倍割れの企業は多い。資本効率改善に向けた取り組みの一環として自社株買いが加速する可能性は高い。

図表
図表

図表
図表

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。