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2025.02.21
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米国経済再加速で追加利下げ見送りも
~インフレは資源価格次第で左右されるものの、コア物価は下がりにくいか~
嶌峰 義清
- 要旨
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ここのところ米国経済指標には、主に製造業分野に持ち直しの兆しが見られ、米景気が再加速する可能性が出ている。
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ウクライナ情勢が一定の解決を見て資源価格が下落すれば、インフレ率はある程度の鈍化は見込まれるものの、景気から判断すればコア物価は下がりにくく、FRBは追加利下げをためらう可能性がある。
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- 目次
米国経済に再加速の兆候
ここのところ米国経済指標の一部に、米国経済が再加速する兆候を示すものが見られる。もっとも注目されるのは、生産活動に半年程度先行する傾向があるISM製造業新規受注判断DIの改善だ。25年1月の同DIは55.1ポイントと3ヶ月連続で判断基準の分かれ目となる50ポイントを上回り、水準としても22年5月以来の高い水準を記録した。
同DIは24年4月から10月まで6ヶ月連続で50ポイントを下回り、受注が減少傾向にあったことを示唆していた。米国をはじめ、主要国の生産活動はこの1~2年ほどは伸び悩みが続いていた。背景には、23年頃から始まった在庫調整の影響などが挙げられるが、これも出荷の伸びが在庫の伸びを上回るようになってきたことで、生産抑制圧力はかなりの程度軽減してきたものと判断される。

持ち直しの動きは雇用統計にも見られる。23年に入ってから上昇傾向を辿っていた失業率は、24年7月には4.2%にまで上昇(コロナ禍以降の最低水準は23年4月の3.4%)した後上昇には歯止めがかかり、直近(25年1月)には4.0%と2ヶ月連続で低下した。同じく1月の非農業部門雇用者増加数の3ヶ月平均値は23.7万人と、23年3月(27.8万人)以来の高い増加数を記録した。

雇用が持ち直しつつある姿は、ISM雇用判断DIでも確認される。1月の同DIは製造業では8ヶ月ぶりに50ポイントを上回った(50.3ポイント)一方、非製造業は4ヶ月連続で50ポイントを上回り、回復基調にあることを示している。

前述したように、米国の失業率は24年半ばから上昇傾向に転じていたものの、上昇は小幅にとどまっていた。総じて見れば、失業率は歴史的な低水準にとどまっており、労働需給は引き続き逼迫した状態にあるといえる。このため、民間部門の時間あたり賃金の伸び(前年比)は22年をピークに鈍化しているものの、1月の伸びは+4.1%とコロナ禍前を上回る水準を維持している。一方で、物価の伸びが鈍化したこともあり実質時間あたり賃金の伸びは23年5月以降プラス圏を保ち、好調な米国の個人消費を支える原動力となっている。1月の小売売上高は前月比▲0.9%と5ヶ月ぶりに減少したものの、消費を取り巻く環境に大きな変化は見当たらないことから、年末商戦や自動車のインセンティブ販売の反動、悪天候などによる一時的なものと考えられ、基調に変化は無いと判断される(同統計の詳細な内容分析については弊社HPをご参照ください)。

このように、牽引車である個人消費を支える所得環境が好調な状態を維持している中で、生産活動や雇用が勢いを取り戻すことになれば、今後米国経済は再加速していく可能性が高まってくる。
FRBの目標水準よりも高い水準で鈍化に歯止めがかかっているインフレ率
気の再加速は、国内の需給が再び引き締まる方向に動き出すことに繋がるため、インフレ圧力を高めることになる。FRBが中長期的なインフレ目標の指針としているPCEデフレーター(個人消費デフレーター)の前年対比伸び率は、1月には+2.6%を記録した。コロナ禍の需給逼迫と、ロシアのウクライナへの軍事侵攻に伴うエネルギーを中心とした資源価格の高騰により、同指標は22年6月に+7.2%まで加速したが、その後は鈍化基調に転じ、24年以降はFRBの利下げを演出している。しかし、同指標は24年9月に+2.1%まで鈍化した後、再び上昇率が加速に転じ、FRBの物価目標(2%)から上方に乖離し始めている。
より身近な消費者物価で見ると、1月は前年同月比+3.0%と7ヶ月ぶりに3%台に乗せた。上昇率が加速している背景には、エネルギー関連物価が前年対比マイナスからプラスに転じ、物価押し上げ要因に転じたことが挙げられる。ただし、食料品物価の上昇率も小幅ではあるが拡大気味であるほか、エネルギーと食料を除いたコア物価の上昇率も24年半ば以降+3.2~3.3%で下げ止まっており、物価は全般的に鈍化に歯止めがかかってしまっている。
このうちエネルギー物価については、OPEC+による生産調整の影響で原油価格が1バレル=70~80ドル(WTIベース)で推移していることで下落寄与が消失していることや、ロシアから欧州へのガスパイプラインでの天然ガス供給が大幅に減少し、国際的にLNG(液化天然ガス)価格が比較的高い水準で推移していることが影響していると考えられる。こうしたエネルギー価格の高止まりについては、ロシアのウクライナへの軍事侵攻による戦争が終結し、ロシアとの貿易制限が解かれれば、価格が下落することで物価押し下げに寄与する可能性がある。足元では米国のトランプ大統領の強い意向もあって、停戦に向けての話し合いが始まっていることから、先行きのエネルギー価格下落に対する期待もある一方で、ウクライナや欧州サイドが容易には受け入れられない条件が提示されている場合は交渉が難航する恐れもあり予断は許さない。

食料品価格については、特に食肉価格が上昇傾向を辿っており、物価の押し上げ要因となっている。その背景には、新興国の所得水準向上を背景にした世界的な食肉需要の増大や、代替エネルギー需要の高まりなどを背景にした穀物需要の多様化による飼料用穀物価格の高騰などが挙げられ、長期的に価格の上昇トレンドが続く懸念がある。

米国のコア物価については、消費者物価全体の約35%を占める住居費(家賃と帰属家賃で構成)が1月には前年同月比+4.4%と伸び率は鈍化基調を辿ってはいるものの、引き続き高い伸び率となっていることで、指数全体の伸びが押し上げられている側面が大きい。住居費が高止まりしている背景には、建材の上昇などによる住宅建設コストの上昇に加え、金利が高止まりしていることで、①米国では一般的な、住居の住み替えによる新規ローンの発生を避ける動きが強く、中古住宅の供給不足によって需給が逼迫し価格上昇に繋がっている、②金利が高いために持ち家の購入を避け、賃貸住宅需要が高いため家賃が上昇している、といったことが挙げられる。

米国の住宅市場については、住宅ローン金利が高止まりしていることで、住宅ローンの申請件数が低水準にとどまっている。住宅取得能力指数(住宅ローンを利用して住宅を購入するために必要な最低所得に対する現実の所得比率)を見ると、サブプライムローン問題で住宅バブルが崩壊した2000年代後半以来となる低水準にあり、足元の金利水準では住宅需要の回復は困難と考えられる。したがって、前述したような住居費が高止まりしている要因については、当面のところ改善は見込み難い状況だ。

労働コストの上昇も物価を押し上げており、景気再加速であればインフレ圧力はさらに高まる
次に、国内経済の包括的な物価指標と言えるGDPデフレーターについて見てみる。GDPデフレーターは、国内で生産された全ての最終財とサービスの価格水準を示す指標で、輸入物価の転嫁分を含まない。この価格の上昇分を労働者と企業との間でどのように分配されたのかを見るために、2020年以降のGDPデフレーターの累積上昇率(2019年平均比)をユニットレーバーコスト(以下ULC(図中も同様))、ユニットプロフィット(単位あたり企業収益:以下UP(図中も同様))とに要因分解すると、価格の上昇分の多くをULCが占めており、労働者に配分されていることがわかる。すなわち、賃上げのために価格が上昇している影響が大きいということだ。

企業部門のULC(前年比・5年移動平均)の長期推移を見ると、80年代半ばにかけては上昇率が加速する傾向にあったものの、その後は鈍化し、特に90年代半ばから2020年頃までは2%以下で推移していた。しかし、その後上昇率は再び高まり足元では2%を超えつつある。ULCを賃金要因と生産性要因とに分解すると、賃金の上昇によるULC押し上げ寄与が2020年以降大きくなっている。労働生産性については、伸び率に多少の浮き沈みはあるものの、長期的に概ね年率2%程度で推移しており、足元でも顕著な変化は見られない。

以上のことから、特にコロナ禍以降は労働需給が逼迫していることによる賃金の上昇がULCを押し上げ、これが製品やサービス価格に転嫁されて物価を押し上げているといえよう。したがって、今後米景気が製造部門を中心に再加速していくのであれば、コア部分の物価については住居費以外の分野でも上昇圧力が増してくることが考えられる。
FRBは年内の利下げ予想を撤回も
2月20日に公表された1月のFOMC(1/28~29開催)議事録によれば、「経済におけるリスクは概ね均衡」している一方で、「インフレ見通しへのリスクは上振れ方向」との見方を示した。FRBは年8回実施されるFOMCのうち、4回の会合でFOMCメンバーによる先行きの見通しを発表している。そのうち市場で最も注目されるのは先行きのFF金利見通しだ(その結果を示したグラフの形状から“ドットチャート”と呼ばれる)。
これによれば、2025年末のFF金利水準について、直近の見通しが開示された昨年12月のFOMCでは3.875%が中心予想値となっている。これは、同時点でのFF金利水準である4.25~4.50%(中心値4.375%)から0.5%低い水準であり、1回の金融政策の変更幅を0.25%とした場合、25年中に2回の利下げが実施されるとする予想が最も多かったことを示している。ただし、その1回前の予測公表が行われた9月の段階では、25年中の利下げ回数予想は4回(25年末の予想中央値は3.375%)であったことから、この3ヶ月の間に25年の利下げ予想回数は4回から2回へと縮小されたことになる。

米国では、10月分の経済指標が多く発表される11月頃から、前述したような経済指標の回復が目立ち始めており、同時にトランプ大統領の当選を囃す形で株価も上昇基調を強めていた。こうした環境の中で、FRBも利下げの必要性について慎重になり始めていると判断される。
前述した1月のFOMC議事録に加え、その後のFRB当局者の発言も、総じて足元の景気の堅調さと、物価が下げ止まっていることや物価を取り巻く環境の好調さなどから、こうした環境に変化がない限り、現行の金融政策の維持が妥当との判断が固まりつつあることを示唆している。次回の予測値公表は3月18~19日に実施されるFOMC終了後となる(日本時間3/20)。経済、金融市場に大きな環境の変化がなければ、3月開催のFOMCではFF金利水準は据え置かれ、2025年末時点でのFF金利水準の予想値は足元の水準である4.375%と、1回の利下げに相当する4.125%に集中する可能性が高い。予想中央値が年内据え置きを示唆する4.375%になった場合は、足元は1回の利下げを予想している各種マーケットにも金利上昇、株安、ドル高圧力の増大といった相応の影響が出る可能性がある。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 嶌峰 義清
しまみね よしきよ
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経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学
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