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南鳥島レアアース試掘結果公表

~中重希土類を豊富に含み、中国依存からの脱却に光明~

嶌峰 義清

要旨
  • 今年1~2月にかけて実施された、南鳥島近海におけるレアアース泥の採鉱システム接続試験において揚泥されたレアアース泥の成分が公表された。これによれば、レアアース総量の約54%がイットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの中重希土類であることが判明した。中重希土類は、中国以外での採掘量が少ない一方で、EV用のモーターなどに使われる永久磁石の製造に欠かせないジスプロシウムなどを含んでいる。これらが多く含まれていることが判明したことで、世界は中国に依存しないレアアースの安定確保に道が開けた。
  • ただし、レアアース泥にどの程度のレアアースが含まれているかについては、その濃度が公表されていないため不明だ。今後の課題は、レアアース酸化物や金属生成のための精製や精錬までを含めた設備の確保と技術開発、コストの算出となる。これらについては来年2月に本格的な採鉱試験を兼ねて実施、2028年3月までに産業化に向けた総合評価を行う予定とされている。
  • 中国による輸出規制強化策が世界のレアアース供給の不安定化にも繋がっており、南鳥島近海のレアアース開発の意義は大きい。

1. 中重希土類の割合が高い南鳥島産レアアース

今年1月~2月にかけて実施された、南鳥島近海におけるレアアース泥の採鉱システム接続試験において揚泥されたレアアース泥の成分が公表された。

これによれば、レアアース総量の約54%がイットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの中重希土類、残りの約46%がネオジムなどの軽希土類であることが判明した(図表1)。2010年代に行われた探査において、同海域の海底に眠るレアアース泥には多くの中重希土類が含まれている可能性が指摘されていたが、今回の調査でそれが裏付けられた形となった。

中重希土類は、現在本格稼働しているレアアース鉱山においては、中国以外での採掘量が極めて少ない(ミャンマーにも中重希土類を多く含む鉱床があるが、中国南部の同様の鉱床と同じ広域地質帯に属しているうえ、中国企業が主導となって開発されている)(図表2)。一方で、EV用のモーターなどに使われる永久磁石の製造に欠かせないジスプロシウムをはじめ、中重希土類は先端製品には欠かせない資源でもある。レアアースにおける中国の世界シェアは、生産において約70%、精製において約90%とされるが、中重希土類が中国に偏在しているために、中国への依存度をゼロにすることは困難な状況にあった。

今回、南鳥島近海に多くの重希土類が多く含まれていることが判明したことで、世界は中国に依存しないレアアース獲得の道が更に開けたと言える(注1)。

図表
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(注1)現在開発中にある豪州のBrowns RangeやWolverine鉱床では、中重希土類の比率が80~90%含まれており、中国依存度の引き下げに繋がる有望な鉱床とされている。

2. 商業化への道のりと課題

今回公表された中には、レアアース泥にどの程度のレアアースが含まれるかを示す濃度については開示されていない。このため、レアアース元素毎の成分割合は判明しているものの、どの程度の量が含まれるかは不明だ。平成28年に資源エネルギー庁が公表した「レアアース堆積物の資源ポテンシャル評価報告書」によれば、平成25~27年の3年間で採取した試料に基づけば、高濃度分布域のレアアース品位の最高値は5,366ppm、平均品位は1,221ppmであり、音響調査による構造データを加味した概略資源量は、レアアース酸化物量ベース77万トンと算定されている。この試算を参考にすれば、南鳥島近海では約42万トンの重希土類酸化物が生産可能ということになる(ただし、現実的には海底のレアアース泥を全て回収することは困難なため、実際に生産可能な量はそれよりも少なくなる)。

採掘コストを勘案した採算ラインは、レアアースの含有量が高いほど、またレアアース泥の採掘量(例えば一日あたりの)が多いほど低くなる。このため、現時点で開示された情報では、南鳥島近海のレアアースの採掘コストは不明だ。

一方、レアアース酸化物の生産コストの大半は精製コストが占めているとされている。現在、世界のレアアース精製に占める中国のシェアは90%を超えており、経済安全保障上の観点から、米国や欧州、豪州などを中心に中国以外での精製能力の引き上げが課題となっている。南鳥島近海のレアアース泥についても、脱水処理を行ったうえで、分離・精製・製錬までを国内(あるいは友好国内)で行い、中国に依存しないサプライチェーンを組むことが求められる。

今回の報告書では、今後のスケジュールとして2027年2月に約1ヶ月にわたる本格的な採掘を行い、揚泥したレアアース泥を南鳥島で脱水、その後本土へ輸送した上で、分離・精製・製錬のプロセス試験を実施する予定としている。さらに、人員輸送を含む産業的規模を見据えた本格的なオペレーションを行って、同規模でのレアアース生産プロセスを検証した上で、2028年3月までに国産レアアースの産業化に向けた総合評価を行う予定としている。

中国政府は、レアアースが軍事用品にも使用されていることから、軍事利用における中国産レアアースの輸出規制を強化する政策を打ち出している。これにより、一部のレアアースの輸出に際しては軍事利用目的ではないことを書面などで提出することが求められており、その審査に時間がかかることから、民生用においてもレアアースの入荷遅延などが生じている。また、日本においては重希土類を中心に事実上の輸出停止状態となっている。10月には、レアアースの供給網全般をターゲットとした輸出規制強化策が実行される可能性がある(昨年打ち出したものの、米国との協議で1年間延期された)。中国は、こうした政策を外交カードとして利用しており、政治的に価値観が異なる国ではレアアースの入手が非常に困難になるリスクに直面している。

こうした状況にあることからも、南鳥島近海のレアアースはコスト以外の面で大きな価値があると考えられる。今後は、友好国の協力も仰ぎながら、迅速なサプライチェーン網の確立と、商業化に向けた規模拡大が求められる。

以 上

嶌峰 義清


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

嶌峰 義清

しまみね よしきよ

経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学

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