日銀は事前の観測記事どおり2024年7月以来となる利上げを決定。政策金利は25bp引き上げられ、0.5%となった。反対は中村委員のみ。「次回の金融政策決定会合において法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで、金融市場調節方針の変更を判断すべきである」とした。植田総裁は2024年12月の金融政策決定会合後の記者会見で、3月中旬に判明する春闘の大勢を見極めてから政策判断を決定する選択肢にも言及していたが、声明文には「昨年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている」とあり、こうした定性的な情報が利上げの決定打になったとみられる。またトランプ大統領の就任前後に金融市場が大荒れとなる事態が回避されていることも、利上げを後押ししたとみられる。
展望レポートで示された物価見通しは2024年度が+2.7%へと0.2%pt上方修正され、2025年度は+2.4%へと0.5%ptと大きく上振れた。2026年度も0.1%pt引き上げられ+2.0%となり、見通し期間を通じて2%以上となった。米価格の急騰に加え、既往の円安に伴う輸入物価の上振れを見通しに反映したという。
成長率見通しは、2024年度が+0.5%(前回対比▲0.1%pt)となった後、2025年度が+1.1%、2026年度が+1.0%とそれぞれ不変であった。0%台半ばから後半とされている潜在成長率を上回る成長率見通しであり、この点において物価上昇圧力が高まることに違和感はない。ただし今回に限って言えば、成長率見通しが不変であるにもかかわらず、物価見通しが上方修正されているので(政府の経済対策要因による変動を考慮したとしても)物価上昇の質は良くないものと推定される。
先行きの政策運営については「金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」という基本方針が維持された。中立金利(推計値のバンド下限値)の目安として1%が広く意識されていることを踏まえれば、そこに至るまでは「半年に一度」など一定の頻度で利上げを続けていくという基本計画が日銀内部にあるのではないか。次回の利上げは7月、次々回は2026年1月という時間軸が浮かび上がる。
もっとも、直近12ヶ月では3度(2024年3月、7月、2025年1月)の利上げを実施しているので、この点を踏まえると「半年に一度」より高頻度で政策変更が決定されても不思議ではない。1%への到達時期が2025年12月となる可能性も十分にあるだろう。また2025年6月会合に予定されている「長期国債買入れの減額計画の中間評価」で減額幅拡大の決定も考えられる。
藤代 宏一
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