株高不況 株高不況

植田総裁が語った

~試験範囲は明かさず、少しだけヒント~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国株は、S&P500が+0.6%、NASDAQが+0.8%で引け。VIXは13.5へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.268%(▲1.0bp)へと低下。
    実質金利は1.904%(▲8.3bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+1.3bpへとプラス幅縮小。

  • 為替はJPYが最強。USD/JPYは151半ばで一進一退。コモディティはWTI原油が68.0㌦(▲0.7㌦)へと低下。銅は9010.5㌦(+8.5㌦)へと上昇。金は2657.0㌦(+17.1㌦)へと上昇。

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注目点

  • 12月の金融政策決定会合(18-19日)が近づく中、植田総裁は日経新聞への単独取材に応じた。インタビューは28日に実施され、記事配信は11月30日午前2時であった。

  • 金融市場で、2024年12月もしくは2025年1月の金融政策決定会合で日銀が利上げに踏み切るとの観測が強まる中、植田総裁は追加利上げの時期について「データがオントラックに推移しているという意味では近づいているといえる」、「我々の経済・物価の見通し通りに経済が推移して、特に見通し期間(24〜26年度)の後半に基調的な物価上昇率が2%に向けて着実に上がっていく、そういう自信というか確度が高まれば、適宜のタイミングで金融緩和度合いを調整するということだ」などと発言した。次回の利上げに関する具体的な時期については言質を与えなかったものの、利下げを阻害する要因についての言及はさほど多くなく、全体として利上げに前向きな印象を受けた。筆者は2024年12月に25bpの利上げを実施するとの予想に自信を深めている。以下で同紙が掲載した一問一答について筆者の受け止めを示す。

Q:利上げ判断へチェックすべき指標は?
A:「賃金でいえば、25年の春闘がどういうモメンタムになるか。それはみたい。そこは確認にもう少し時間がかかるが、それを待たないと金融政策が判断できないわけではない」
→3月のマイナス金利解除は、驚くほど強かった春闘の集中回答日の速報値が決定打になったが、連合は同程度かそれ以上の要求方針を掲げており、2025年度の名目賃金は1990年代前半と同程度の推移が期待される状況にある。既に賃金上昇の持続性は高まっており、12月(もしくは1月)の利上げを判断するにあたって、春闘の結果を必要があるとは思えない。なお、筆者は2025年3月中旬に予定されている春闘の集中回答日(例年通りなら3月中旬)の結果を受け、4/5月(4/30-5/1)の金融政策決定会合で追加の25bp利上げ(新たな政策金利は0.75%)を予想する。
Q: 徐々に次の利上げのタイミングは近づいていると言えるか?
A: 「経済データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいていると言える。ただ米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある。当面、どういうものが出てくるか確認したい。例えば(トランプ次期大統領から)関税の話が出てきているが、どうなるか見極めが必要だ」
→日銀は「オントラック」を事実上の利上げの条件としている。植田総裁が、現在それを満たしているという判断であれば、素直に利上げの示唆として受け止めて良いと思われる。後段の米国経済に対する言及は、トランプ政権の不透明感後退を待っていては、半年や1年といった時間軸で見極めが必要になってしまう。その間に急速な円安が進む可能性もあるため、現実的には不透明感後退を待つという選択肢は採用されないと思われる。
Q: 円安が大きな副作用という見方がある。
A: 「例えば2010年代前半は円高が進んだ。デフレの時期だったこともあり、一層の円高は困るものになる。一方でインフレ率が2%を超え始めているときに一段の円安になれば、それは中央銀行にとってはリスクが大きい動きとして、場合によっては対応しないといけなくなる」
→現在の為替水準が直ちに「対応」を必要とするかは議論の余地があるものの、植田総裁が円安による輸入物価上昇を警戒しているのは明白であり、4月(25-26日)の金融政策決定会合と似たような事態は避けたいと考えているのではないか。4月は、総裁会見がハト派と受け止められ急速な円安が進行し、週明けの4月29日と5月2日に財務省が為替介入に踏み切った。いわゆるトランプ・トレードによってドル高・円安が意識され易いこともあり、日銀内部では急速な円安に対する警戒感が高まっているのではないか。
  • また質疑応答以外の視点として、12月に利上げを見送った場合、1月の金融政策決定会合(22-23日)までの間に金融市場に大きなショックが発生するなどすれば、利上げ時期は一段と遅れてしまうこともあるだろう。日銀としては将来的な景気後退時への備えとして、利下げという政策手段を確保しておきたいとの動機もあり、現在のような「穏やか」な環境で利上げを決定したいと考えているだろう。量的緩和、マイナス金利、YCCなどと言った奇策の使用を避ける意図もあり、利上げの条件が完全に揃うのを待つような姿勢には距離を置くのではないか。

藤代 宏一


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