株高不況 株高不況

トリプル安(株・円・金利)の裏に大統領選

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。

  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。

  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%、26年末までに3.00%まで引き下げるだろう。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.9%、NASDAQは▲1.6%で引け。VIXは19.2へと上昇。

  • 米金利はベア- フラット化傾向。予想インフレ率(10年BEI)は2.321%(▲1.6bp)へと低下。実質金利は1.924%(+5.4bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+16.3bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はJPYが最弱。USD/JPYは152後半へと上昇。コモディティはWTI原油が70.8㌦(▲1.3㌦)へと低下。銅は9521.5㌦(▲61.5㌦)へと低下。金は2714.4㌦(▲29.8㌦)へと低下。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

経済指標

  • 9月米中古住宅販売件数は前月比▲1.0%、384.0万件であった。3ヶ月平均値でも同▲0.5%と減少が続いており、Fedの利下げが住宅ローン金利低下を通じて住宅販売を刺激している様子は見受けられない。先行指標の中古住宅販売成約指数も反転上昇の気配に乏しい。

中古住宅販売件数・成約指数
中古住宅販売件数・成約指数

注目点

  • 日経平均株価は4万円の大台回復を視野に入れた10月15日以来、6営業日中5営業日で下落し、累積1805円の下落となった。この間、10年金利はじりじりと上昇傾向にあり、8月1日以来となる0.983%まで水準を切り上げた。そしてUSD/JPYは149円台前半から、23日は一時153円台を付けた。

  • こうしたトリプル安は、いわゆる「日本売り」なのだろうか。円安にもかかわらず、株価下落となり「選挙は買い」というアノマリーが崩れたことは、与党の政権基盤が揺らぎ、政策遂行能力が低下するとの疑念が金融市場に存在することを窺わせる。

  • ただし株価- 為替- 金利ともに、米国要因に拠るところが大きいと判断される。このうち為替と金利は米金利上昇で説明可能だろう。米指標が堅調に推移していることを受けてFedの利下げ観測は剥がれており、FF金利先物が織り込む年内の利下げ幅は40bp程度まで縮小している。さすがに11月と12月FOMCにおける25bpの利下げ予想は維持されているものの、2025年入り後の予想利下げ幅は1%pt程度まで縮小しており、2025年12月FOMCにおける予想政策金利は3.5%程度まで切り上がっている。9月1日時点における2025年12月の予想政策金利は3.1%程度で、それは概ね下方ターミナルレート(利下げの最終到達点)に一致していたので、市場参加者が想定する利下げ幅が縮小していることがわかる。こうした下で(円金利上昇を伴って)日米の長期金利差が拡大し、ドル高- 円安が進むこと自体に大きな違和感はない。

  • ではなぜ株価が下落しているのかといえば、それは大統領選を巡る不透明感が大きいだろう。トランプ氏の優勢が伝わる中、特にその影響が懸念されているのは自動車- 同部品。TOPIX輸送用機器は円安の進行にも拘わらず、8月上旬の急落から目立った反発もなく年初の上昇を帳消しにしており、株式市場全体の重荷となっている。言わずもがなトランプ氏は(政治的に)関税を好んでおり、中国製品を中心に税率の引き上げを主張している。その他の国の製品に対しても10%の関税を課すとして、日本から米国への自動車輸出に課せられる税率は現在の2.5%から上昇する可能性がある。またメキシコ生産分については関税率200%とも言及しており、これは日系メーカーを含む自動車大手に打撃を与える公算が大きい。

TOPIX輸送用機器
TOPIX輸送用機器

  • 前回の大統領任期中、当初は日本からの自動車輸出に追加的な関税を課すと言及していたものの、交渉の末に見送られた経緯を踏まえると、今回も政治的な「脅し」である可能性はある。米国内で新車価格が上昇し消費者の不満を招くほか、その他財価格の上昇がインフレ再燃に繋がる懸念もあり、関税は政治的に成功しても、経済的に悪影響を及ぼす可能性が高い。そのため、「実務」は慎重に進められると期待される。大統領選の結果は蓋を開けて見なければ分からないため、当面は保護主義的な動きに対する警戒が続くだろう。この霧はトランプ氏が大統領選後に態度を軟化させる、或いはハリス政権の誕生によって晴れると期待される。

藤代 宏一


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