株高不況 株高不況

FRB も50・50 達成の公算

中立金利までは飛ばす覚悟

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。
  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%26年末までに3.00%まで引き下げるだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.3%、NASDAQは▲0.3%で引け。VIXは18.2へと上昇。

  • 米金利はベア・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.111%(+0.3bp)へと上昇。

実質金利は1.591%(+5.4bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+8.0bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは140前半へと低下。コモディティはWTI原油が70.9㌦(▲0.3㌦)へと低下。銅は9400.5㌦(+30.5㌦)へと上昇。金は2574.9㌦(+6.0㌦)へと上昇。

図表
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経済指標

  • 9月米住宅着工件数は前月比+9.6%、135.6万件と市場予想(131.8万件)を上回り、3ヶ月平均でも130.7万件へと持ち直した。中古住宅の販売可能在庫が枯渇する中、新築住宅に対する需要は比較的底堅く推移している。足もとでは住宅ローン金利が低下基調に転じており、住宅着工を取り巻く環境は改善傾向にある。

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注目点

  • Fedは50bpの利下げを敢行。FF金利(誘導目標レンジ上限)は5.00%とされた。またドットチャートは年内に追加で50bpの利下げを示唆した。7月に利上げを見送った後、労働市場のデータは雇用統計の年次改定を含めて広範な指標が軟化。政策対応が後手に回る、いわゆるビハインド・ザ・カーブに陥るのを避けるため、パウエル議長は大幅利下げを選択した。事前にウォーラー理事やウィリアムズ・NY連銀総裁は慎重な手段、すなわち25bpの利下げを選択することを仄めかしていたが、景気後退の責任を問われる立場にあるパウエル議長は思い切りの良さを重視した形だ。今思えば、ジャクソンホール・シンポジウムで「労働市場を支えるために何でもする(we will do everything we can to support a strong labor market )」と、2012年にドラギ総裁が放った名言「ユーロを守るためなら何でもする」を彷彿とさせる発言をしたのは、この50bp利下げの伏線だったのかもしれない。

  • ドットチャートが示した政策金利(中央値、誘導目標レンジ上限)の経路は2024年末が4.50%(前回:5.125%)、2025年末が3.50%(同4.125%)、2026年末が3.00(同3.125%)%、2027年末が3.00%とされた。平均値は2024年末が4.63%、2025年末が3.47%、2026年末が3.21%、2027年末が3.18%であった。中立金利の推計値は2.875%へと2.75%から上方シフト。2.50%と推計されていた2023年12月時点の数値から上方修正が続いている。それでもなお中立金利が2.875%超であると推計するFOMC参加者が9名存在することを踏まえると、更なる上方修正も考えられる。このことは下方ターミナルが上方に動くことを意味する。

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  • ドットチャートから示唆される年内の利下げ経路は11月FOMCと12月FOMCにそれぞれ25bpの利下げが講じられるというもの。パウエル議長は「(政策対応が)後手に回らないという我々のコミットメントのあらわれ」とした上で「50bp利下げは新しいペースではない」として、次回の利下げ幅が25bpになることに含みを持たせた。もっとも、初回利下げに50bpを選択した以上、次回以降の利下げ幅を25bpに縮小させるにはそれなりの根拠が必要となってくるだろう。雇用者数が大幅に増加したり、株価が上昇して金融環境が緩和したりする場合などがそれに該当する。反対に労働市場が一段と軟化するなら、たとえば11月FOMCで50bp、12月FOMCで追加の25bpなどドットチャートの想定を上回るペースで利下げがあっても驚きではない。中立金利推計値である3%を明確に上回っている状況なら、大幅利下げの決断およびその説明は比較的容易であろう。Fed内部には、政策金利が中立金利近辺に到達するまでは急速な利下げを実施、中立金利に近づいてから利下げ幅を調整するという選択肢もあるように思える。

  • 今回の利下げに対する金融市場の反応は、株価は横ばい圏、金利はカーブ全般で小幅上昇、ドルは中位程度であった(USD/JPYはやや円安)。事前に50bpの織り込みが進んでいたこともあって一旦「50bpトレード」を手仕舞いする動きも多かったとみられる。また事前にFF金利先物は下方ターミナルレートが3%近傍にあることを織り込んでいたので、ドットチャートの下方シフトに対する反応も限定的であった。また中立金利が上方修正されたことも一定程度材料視されたとみられる。

  • 筆者は先行き12ヶ月のUSD/JPY見通しを145円に修正する(従来150円)。従来見通しからさほど円高方向への推移を予想しないのは、米国の景気後退が回避される下、中立金利の上方シフトが続くことで、下方ターミナルレートの予想値が切り上がり、日米金利差の縮小が限定的となるとの見方に基づく。

藤代 宏一


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