株高不況 株高不況

世界経済の先行指標としての台湾

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150程度で推移するだろう。
  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.2%、NASDAQは▲0.3%で引け。VIXは15.9へと上昇。

  • 米金利はブル・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.073%(▲0.3bp)へと低下。
    実質金利は1.732%(▲6.2bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲18.1bpへとマイナス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは145前半へと低下。コモディティはWTI原油が74.0㌦(▲0.3㌦)へと低下。銅は9204.0㌦(▲48.0㌦)へと低下。金は2511.3㌦(+9.5㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

米国 イールドカーブ、前日差、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差
米国 イールドカーブ、前日差、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差

注目点

  • 筆者が世界経済の先行指標として注目する台湾の輸出受注は7月に前年比+4.8%と6月の同+3.1%から加速。輸出受注の約6割を占める電子製品と情報通信技術製品が双方とも増加した。電子製品は同+2.2%、情報通信技術製品は同+11.0%であった。発表元の台湾経済部は7月の受注増加について「高速コンピューティングに対する旺盛な需要や、新しい消費者向けエレクトロニクス製品の準備が進められていることが主因」と説明。AI向け半導体の爆発的需要に加え、民生機器の需要が芽生えてきたことを窺わせる兆候があったことは朗報だろう。スマホの高機能化が進展している他、コロナ期の2020-21年に購入されたPCの一部が買い替え期に差し掛かっている可能性が指摘できる。この間、7月の製造業PMIは52.9まで水準を切り上げている。

  • もっとも、先行きはやや慎重にみておく必要がありそうだ。鉱工業生産統計の出荷・在庫バランス(出荷と在庫の前年比伸び率の差分)は依然としてプラス圏を維持しているものの、下向きの曲線を描いている。春節影響によって、直近ピーク値の2024年1月(+28.6%)が高めに出ていたことを割り引く必要があるとはいえ、過去数ヶ月、出荷の伸びに対して在庫の伸びが増勢を強めているのは事実。先行きについてはAI市場(含むデータセンタ)の拡大やPC需要の回復を踏まえれば、悲観的になる必要性に乏しいと考えるが、輸出受注の伸び率が加速度的に拡大していくかは心許ない。

  • 一方で、ここから回復が期待されるのは米国の製造業指標。7月のISM製造業景況指数の46.8という数値が前年比20%超の上昇軌道にあった株価(S&P500)を否定し、世界同時株安の契機になったことは記憶に新しい。グラフをみれば株価の違和感は一目瞭然であり、「AIバブル崩壊」という説明も一定の説得力がある。

ISM製造業・S&P500
ISM製造業・S&P500

  • もっとも、ISM製造業景況は弱さが誇張されている可能性が大きい点に留意が必要だろう。類似指標の製造業PMIとの乖離が認められている他、地区連銀サーベイとの比較では弱さが目立っている。8月NY連銀製造業景況指数をISM製造業のウェイトを用いてISM換算した数値は47.1、フィラデルフィア連銀製造業景況指数のそれは52.7であった。それらを基に推計(2005年以降のデータで回帰)した8月のISM製造業景況指数は51.4となり、8月ISM製造業が7月の46.8から鋭い改善を示す可能性を示唆している。9月3日発表の8月ISM製造業が米景気全体の減速懸念を払拭するとは考えにくいが、それでも景気減速に対する懸念は幾分和らげるのではないか。

米国 製造業景況感
米国 製造業景況感

ISM・地区連銀サーベイ
ISM・地区連銀サーベイ

米国 製造業景況感、ISM・地区連銀サーベイ
米国 製造業景況感、ISM・地区連銀サーベイ

  • 因みに均等ウェイト版S&P500(通常のS&P500は時価総額加重平均指数)でみても現在の株価はやや行き過ぎの印象がある。現在の株価指数は大型テックとAI半導体を手掛ける少数の銘柄にけん引されているのは否定しようのない事実であるが、それ以外の銘柄もISM対比では買われ過ぎの印象がある。筆者は乖離の理由を「弱すぎるISMとやや行き過ぎている株価」と理解している。

ISM製造業・均等S&P500
ISM製造業・均等S&P500

藤代 宏一


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