株高不況 株高不況

市場との対話を終えた日銀 中心的な意見を採用か

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月44,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150程度で推移するだろう。
  • 日銀は7月に追加利上げを実施するだろう(政策金利は+0.25%)。
  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+1.0%、NASDAQは+1.2%で引け。VIXは12.9へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.281%(+1.5bp)へと上昇。

実質金利は2.002%(▲2.7bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲33.8bpへとマイナス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中程度。USD/JPYは161後半で推移。コモディティはWTI原油が82.1㌦(+0.7㌦)へと上昇。銅は9905.0㌦(+36.0㌦)へと上昇。金は2379.7㌦(+11.8㌦)へと上昇。

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注目点

  • 7月9・10日の日程で「債券市場参加者会合(第20回)」が実施された。今回の会合は6月の金融政策決定会合で示された長期国債の買入れ減額方針について、日銀が市場参加者と意見交換を実施する機会と位置付けられており、正に「市場との対話」である。会合の内容それ自体は公表されていないものの、日銀が9日に発表した「『債券市場参加者会合』(第20回) 金融市場局説明資料」に記載された、市場参加者の意見・要望をみることで会合の議論を推し量ることは可能であり、それは長期国債の買入れ減額方針を予想する一助になる。

  • 結論を先取りすると、今回発表された説明資料を踏まえても、毎月の買入れ額は現在の6兆円から1年後には4兆円程度、2年後には3兆円程度まで減少するという、市場参加者の中心的な見通しに近いものになると筆者は予想している。

  • 日銀は①減額の幅やペース、②減額のガイダンスの示し方、③残存期間別の減額の進め方、④その他、という質問を事前に送付していた。

  • まず先に「④その他」からみていくと、恐らく少数派(或いは1機関)の意見として「ストックベースで国債保有額の目標を定め、それに向けてフローを調整する方法が望ましい」との記載があった。例えば、現在の保有額600兆円程度を3年後に400兆円まで減らすという残高ベースの目標を決め、それに従属的に毎月の買入れ額を調整していくという方法だろう。ただ、さすがにフローからストックへの転換は円債市場のボラティリティを高めてしまう恐れがあり、採用には至らないだろう。それでも7月の金融政策決定会合で発表される減額計画に「残高」が記載される可能性はある。

  • 市場参加者にとって最大の関心事である「①減額の幅やペース」については、具体的な数値が記載された6つの意見が記載されていた。「国債買入れは、もはや主たる金融調節手段ではないため、買入れ額ゼロまでのパスを示すことが重要」(太字・下線・括弧は筆者、以下同じ)という声から「5兆円程度までの減額を一旦行い、その後は国債需給などの状況をみながら、さらなる減額を検討していくことでよいのではないか」という声まで様々であった。もっとも、中心的な意見としては以下のとおり、2~4兆円程度とみられる。他の4つの意見は「成長通貨の供給のための国債買入れという姿に戻るべきであり、国債買入れ額を大きく増加させる前の1~2兆円程度を目指すことが望ましい」、「海外中銀のQTの事例などを踏まえると、2~3兆円程度までの減額が望ましい」、「投資家の保有余力等を勘案すると、『量的・質的金融緩和』導入前の3兆円程度が一旦のめどとなるのではないか」、「IRRBB(金利リスク)上の制約等を踏まえると、国内銀行の債券購入ニーズは限定的と考えられ、4兆円程度までの減額が適当と考える」というものであった。

  • また減額のペースについては4つの意見が記載された。「国債買入れ減額という材料に出尽くし感がなく、買いが手控えられているという現状を踏まえれば、段階的な減額は不要」という意見があった一方、その他3つは段階的な減額が望ましいとの意見であった。具体的には「急激な減額は市場に不必要なボラティリティを発生させる可能性があり、 金利リスクを抱えている地域金融機関等のリスク許容度を低下させ、国債消化の不安定化を招くリスクがある。2年程度かけて段階的かつ予見可能な形で減額を行うべき」との記載があった。また「③減額のガイダンスの示し方」については「金利急騰時には、臨時オペや指値オペ等で機動的に対応できる余地を残しておくことが望ましい」との意見があった。長期国債の買入れ減額に伴う長期金利の急騰を避けたい日銀にとってみれば、こうした要望は歓迎だろう。

  • 日銀は市場との対話の観点から、当該資料に記載された「中心的な意見」を採用するのではないか。指値オペを残しつつ、段階的な買入れ減額に着手、2年後をめどに買入れ額は(ゼロ、5兆円ではなく)2~4兆円に落ち着くのではないか。

※最近の株価上昇を踏まえ、日経平均の予想値を44,000円に引き上げる。Fedの利下げ確度が増し海外株の上振れリスクが高まる中、日本ではIT関連財を手掛ける企業の業績好調、高水準の自社株買い、円安の業績嵩上げ効果が続くと判断した。詳細は近日中にお示しする予定。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。