インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

堅調な豪ドル相場を支える商品高、対中関係、中銀のタカ派姿勢

~インフレの加速で追加利上げや引き締め長期化観測高まり、豪ドルの対円相場は一段の強含みも~

西濵 徹

要旨
  • このところの国際金融市場では「円弱」が意識される展開が続くなか、足下の豪ドルの対円相場は11年ぶりの高水準で推移している。これは米ドル一強の動きに一服感が出るなか、このところの商品市況の底入れの動きが「資源国通貨」を押し上げる動きが一助となっている。また、ここ数年悪化が続いた対中関係の改善が景気を押し上げるとの期待も追い風になっている可能性がある。さらに、インフレが長期化するなかで中銀は今月の定例会合で追加利上げや引き締め長期化を示唆する「タカ派」姿勢を示したことも豪ドル相場を押し上げている。4月のインフレ率は前年比+3.6%と加速しており、中銀による引き締め長期化が意識されるなかで当面の豪ドルの対円相場は強含みしやすい地合いが続く可能性が高まっている。

このところの国際金融市場においては日本円の『弱さ』が注目される展開が続いているなか、豪ドルの対円相場は9年半ぶりに1豪ドル=100円を突破するとともに、足下では底入れの動きを強めるなかで11年ぶりの水準で推移するなど強含みする展開が続いている。こうした背景には、先月以降の国際金融市場において『米ドル一強』の動きに一服感が出ていることを反映して、豪ドルが米ドルに対して強含みする動きをみせていることがある。さらに、中国政府が不動産支援策に動く方針を示しており、不動産に関連する非鉄金属に対する需要拡大への期待が高まる一方、このところの資源産出国では環境保護を目的とする抗議活動の活発化のほか、近年の異常気象の頻発などを理由に生産活動に悪影響が出るなど供給懸念が意識される動きがみられるなか、非鉄金属を中心とする国際商品市況が底入れの動きを強めており、これらを算出する国々の通貨に追い風が吹く動きがみられる。オーストラリアについては、鉄鉱石や石炭を主な産出資源としており、輸出に占めるこれらの割合が高い特徴があるなか、これらの市況は力強さを欠く展開が続いているものの、足下では銅やニッケルなどの市況底入れの動きが『資源国通貨』である豪ドルを押し上げる一助になっていると考えられる。他方、主要鉱物である鉄鉱石や石炭については中国が最大の輸出相手となっているが、上述のように中国による不動産支援策に加え、ここ数年冷え込んできた両国関係が改善する動きがみられるなか、関係改善の動きがオーストラリア経済を押し上げるとの期待も豪ドル相場の追い風になっているとみられる。その上、オーストラリアではここ数年の商品高や米ドル高、コロナ禍一巡による景気回復の動きが重なりインフレが上振れしたほか、不動産市況も急上昇してバブルが懸念されたため、中銀は物価と為替、不動産市況の鎮静化を目的に累計425bpの利上げを実施してきた。こうした中銀の対応を受けて一時は33年ぶりの水準に昂進したインフレは頭打ちに転じる動きをみせたものの、足下においても3年近くに亘ってインフレ率が中銀目標を上回る水準で推移している。また、中銀の利上げを受けて不動産市況は一時的に調整したものの、移民流入による需要拡大の一方で利上げによる供給減が需給ひっ迫を招くなかで昨年以降は再び上昇の動きを強めており、足下では過去最高値を更新する展開が続いている。中銀は今月の定例会合においてサービス物価を中心とするインフレの粘着度の高さに言及しつつ再利上げに含みを持たせるとともに、政策金利を来年半ばまで現行水準で据え置く考えを示すなど『タカ派』姿勢をあらためて強調しており(注1)、こうした中銀の姿勢も豪ドル相場の追い風になっている。よって、上述のように足下の豪ドルが日本円に対して強含みする背景には、日本銀行はゼロ金利の解除に動くも『次の手』が見通せない状況が続くなかでオーストラリア中銀がタカ派姿勢を強調していることが大きく影響していると捉えられる。こうしたなか、4月のインフレ率は前年同月比+3.6%と前月(同+3.5%)から加速しており、コアインフレ率(トリム平均値)も同+4.1%と前月(同+4.0%)から加速してともに5ヶ月ぶりの伸びとなるなど底入れの動きを強める動きが確認されている。前月比も+0.73%と前月(同+0.66%)から上昇ペースが加速しており、財、サービス双方で物価上昇の動きが確認されるなど全般的にインフレ圧力が強まる様子がうかがえる。サービス物価を巡っては医療費のほか、イースター(復活祭)が学校休暇などを受けた余暇関連で物価が押し上げられたことが影響している。なお、当局が注目する物価変動の大きい品目と旅行関連を除いたベースのインフレ率は前年同月比+4.1%と前月(同+4.1%)から横這いで推移しているほか、前月比は+0.41%と前月(同+0.66%)からわずかに上昇ペースは鈍化しており、中銀の政策判断を難しくさせることが予想される。ただし、中銀にとっては追加利上げの有無の判断は難しいものの、政策金利を長期に亘って現行水準で据え置く可能性は高まっていると判断され、当面の豪ドル相場は日本円に対して強含みしやすい展開が続きやすい展開となることが予想される。

図 1 豪ドル相場(対日本円)の推移
図 1 豪ドル相場(対日本円)の推移

図 2 インフレ率の推移
図 2 インフレ率の推移

図 3 豪ドル相場(対米ドル、日本円)の推移
図 3 豪ドル相場(対米ドル、日本円)の推移

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ