“投資詐欺広告”
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「金利のある世界」で株式投資 長期金利1%との付き合い方

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。

  • 日銀は、10月に追加利上げを実施するだろう。

  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は年末に5.25%(幅上限)への低下を見込む。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.7%、NASDAQは+1.1%で引け。VIXは11.9へと低下。

  • 米金利はツイスト・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.328%(+0.7bp)へと上昇。
    実質金利は2.143%(▲1.7bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲48.5bpへとマイナス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが最弱。USD/JPYは157近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が77.7㌦(+0.8㌦)へと上昇。銅は10324.0㌦(▲93.5㌦)へと低下。金は2334.5㌦(▲2.7㌦)へと低下。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

注目点

  • 日本の長期金利が1%を超え、いよいよ「金利のある世界」が戻ってきた。日銀の追加利上げが意識されていることに加え、早ければ6月にも金融政策決定会合で長期国債の買い入れ減額が決定されるとの観測が燻っており、これが長期金利の上昇圧力となっている。5月14日の定例(輪番)オペにおける買入れ減額(5-10年:4750億円→4250億円)がその布石だったとの見方もある。なお、輪番オペの買入れ額は(毎回の金融政策決定会合の決定事項ではなく)金融市場局に裁量が委ねられている面がある。したがって、買い入れ額の変更に「政策的な含意」はないというのが日銀の公式説明だが、5月9日に発表された「(金融政策決定会合における)主な意見」には、長期金利の自由化や日銀のバランスシート縮小を進めるべきとする声が多く記載されていただけに、買入れ減額に対する警戒感が強まっている。

  • 一般論として、金利上昇は株価下落要因となる。債券利回りの上昇が株式の魅力を減じる効果(イールドスプレッドの縮小)や、借り入れコスト増加が企業収益を圧迫する、などといった複数の経路がある。金利上昇と株価下落が併存した例としては2022年の米国株があり、当時はFedの利上げが進む下、NASDAQは高値から30%程度の下落を経験した。他方、日本において金利と株価の関係は不明確であった。より正確に言えば、日銀の金融緩和によって長期金利が硬直的だったため、株価への影響を直接観察できなかった。

  • もっとも、長期金利が解放されたことで今後は株式市場にとって金利が重要な要素になってくる。ここで一口に金利上昇と言っても、それが予想インフレ率主導なのか実質金利主導なのかによって株式市場に与える影響が異なってくる点に留意が必要だろう。名目金利は予想インフレ率と実質金利の合計で決まる(ここではリスクプレミアムは考慮しない)。したがって、インフレ率が高まると予想される時、または(予想インフレ率の上昇が行き過ぎないように)中央銀行が短期金利を引き上げる時に金利上昇は観察される。

  • では、現在の日本で起きている長期金利上昇がどちらであるかと言えば、それは基本的に予想インフレ率の上昇によるものである。名目10年金利を分解すると、実質金利が▲0.5%近傍で推移するのを横目に予想インフレ率は1.5%まで水準を切り上げている。この尺度で見る限り、債券市場参加者は2022年頃までは輸入物価主導の物価上昇を一時的と判断してきたようだが、2023年に続き、24年も賃金上昇が続く見込みであることを踏まえ、現在はインフレ環境が長期化するとの予想に傾いていると言える。

日本10年金利
日本10年金利

  • ここで、株式がインフレによる価値の目減りを防ぐための有用な資産であると言われていることを思い出したい。それは株式の価値が名目値であるが故に、インフレによって価値が膨らむためだ。だとすれば、現在の予想インフレ率上昇は、株価に好影響をもたらすインフレ環境が定着するとの予想に投資家が自信を深めていることを意味するから、株式に追い風との見方も可能であろう。デフレ期に株価が長期停滞を強いられたことと真逆の環境が訪れつつある。

  • そうした見方に基づけば、予想インフレ率主導の金利上昇は必ずしも株価下落を引き起こさない。今後、日銀がタカ派度合いを強め、実質金利主導で名目金利が上昇していくならば話は変わってくるが、少なくとも現在の金利上昇はそういった性質のものではない。最近の金利上昇に日本株が持ち堪えているのは、こうした文脈で説明できるのではないか。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。