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2023.12.15
アジア経済
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台湾中銀、3会合連続の金利据え置きも、物価安定への苦労を滲ませる
~米ドル高一服で様子見維持の一方、食料インフレなど物価安定への難局は続く可能性はくすぶる~
西濵 徹
- 要旨
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- 台湾中銀は14日の定例会合において3会合連続で政策金利を1.875%に据え置く決定を行った。一昨年来は商品高と米ドル高、コロナ禍一服も重なりインフレが昂進したため、中銀は昨年3月から1年強に亘る断続利上げに動いた。物価高と金利高の共存に加え、世界経済の減速や中国本土との関係悪化も景気の足かせとなる懸念が高まった。しかし、年明け以降のインフレ鈍化に加え、主要国向けを中心とする外需の堅調さが景気底入れを促す展開が続く。足下では食料インフレ懸念はくすぶるが、米ドル高一服を受けて中銀は様子見姿勢を維持している。他方、物価動向は来月に迫る総統選の行方に影響を与えるなかで中銀は難しい対応を迫られる展開が続く。総統選の行方も含め、中銀にとっては舵取りが難しい状況が続こう。
14日、台湾中央銀行は定例の金融政策委員会を開催して政策金利を3会合連続で1.875%に据え置く決定を行った。台湾では、一昨年以降に商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨台湾ドル安に伴う輸入インフレに直面したほか、昨年以降はコロナ禍の一巡による経済活動の正常化の動きも重なりインフレが一段と上振れする事態に見舞われた。中銀は昨年3月に10年半ぶりとなる利上げ実施に舵を切るとともに、その後も物価と為替の安定を目的とする断続利上げに動いたものの、インフレは高止まりし続けたことで物価高と金利高が共存するなど景気に悪影響を与える懸念が高まった。さらに、昨年8月の米国のペロシ合衆国議会下院議長(当時)による訪台を理由に、中国本土は台湾に対して経済制裁を課す「経済的威圧」に動いたため、台湾経済は輸出依存度が高く、中国本土との連動性も高いなかで外需の重石となる事態に見舞われた。結果、内・外需双方に下押し要因が山積するなかで、昨年末から年明け直後にかけて2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど景気が下振れした。しかし、昨年末以降は商品高と米ドル高の動きに一服感が出るなどインフレ圧力が後退したため、年明け以降のインフレは頭打ちするなど落ち着きを取り戻す動きがみられた。よって、中銀は今年6月の定例会合で1年強に及んだ利上げ局面を休止させた。なお、その後は主要産油国による自主減産やその延長、中東情勢の悪化を理由に国際原油価格が底入れの動きを強めたほか、エルニーニョ現象などの異常気象が頻発するなかで農産物の生育悪化など理由に穀物などの国際価格が上振れするなど、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレ再燃に繋がる動きがみられた。さらに、商品高によるインフレ長期化が警戒されて米ドル高の動きが再燃したことに加え、台湾においては来月の次期総統選を前に中国本土による様々な圧力が意識されるなかで台湾ドル安の動きが進行するなど輸入インフレに繋がる動きがみられた。こうした状況にも拘らず、台湾中銀は9月の定例会合において政策金利を据え置く一方、景気と物価の両面に不確実性が高いなかで比較的長期に亘って引き締めスタンスを維持する考えを示すなど慎重姿勢をみせた(注1)。他方、上述のように昨年末から年明け直後にかけてテクニカル・リセッションに陥ったものの、その後は世界経済を巡る不透明感が強まる展開が続くも、外需をけん引役に景気は底入れの動きを強めており、足下の実質GDPはコロナ禍以降で最も高水準となるなど改善している様子がうかがえる。また、その後は食料インフレの懸念は一段と高まる動きが続く一方、世界経済の減速懸念が意識されるなかで国際原油価格は一転して頭打ちの動きを強めるなどインフレ圧力の後退に繋がる動きもみられる。さらに、足下の国際金融市場においては米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げが意識されるなかで米ドル高圧力は後退しており、結果的に台湾ドル相場は底入れするなど輸入インフレ圧力の後退に繋がる動きもみられる。こうした状況は中銀が14日の定例会合での金利据え置きを決定することを後押ししたとみられる。会合後に公表した声明文では、同国経済について「世界的な需要低迷にも拘らず輸出は堅調に推移しており、今年の経済成長率は+1.40%になる」と前回見通し(+1.46%)からわずかに下方修正する一方、先行きは「内・外需双方で回復の動きが強まり来年の経済成長率は+3.12%」になると前回見通し(+3.08%)からわずかに上方修正している。物価動向については「食料品価格の上昇による上振れを反映して今年のインフレ率は+2.46%になる」と前回見通し(+2.22%)から上方修正したほか、先行きは「緩やかな上昇が続いて来年のインフレ率は+1.89%になる」と前回見通し(+1.83%)からわずかに上方修正している。会合後に記者会見に臨んだ同行の楊金龍総裁は、先行きの景気動向について「家計消費は緩やかに回復する一方、インフレは2%前後に落ち着く」としつつ、「中国本土景気の減速や地政学、主要国の金融政策が不確実性となり、世界経済の減速は景気の足かせとなるが、新たな技術が輸出や投資のモメンタムを押し上げる」との見方を示した。その上で、「金利据え置きは経済及び金融の安定に資する」との見方を示すとともに、今回の決定については「金融市場の期待に沿ったもの」としたものの、「物価安定が最優先課題である」としつつ「物価見通しは一段と困難になっている」と物価安定の難しさを滲ませている。また、先行きの政策運営については「インフレが2%を下回る推移が続けば引き締め姿勢は終わりに近い」としつつ、「我々だけで政策判断を行うことは出来ず、とりわけ米国の金融政策の行方を注視する必要がある」との認識を示した上で「来年前半に利下げを行う余地はなく、今回はいずれの政策委員も利下げを提案していない」と市場の利下げ観測を諫める姿勢をみせた。その意味では、先行きも相当期間に亘って現行の政策スタンスを維持する可能性が高まっていると判断出来る。他方、来月の次期総統選では野党が候補者の一本化に失敗する一方(注2)、足下の世論調査では最大与党の国民党(侯友宜氏)が与党の民進党(頼清徳氏)を猛追する動きがみられるほか、同時に実施される立法委員選挙では国民党や民衆党が議席を増やすとの見方が高まっており、仮に頼氏が総統選で勝利しても少数与党化する可能性も取り沙汰されている。民進党が苦戦を強いられている一因には、足下の物価高により前回総統選で民進党(蔡英文氏)を後押しした若年層を取り巻く環境が厳しさを増していることも影響しており、中銀にとっては物価安定へ難しい舵取りを迫られる局面が続くことが予想される。



注1 9月22日付レポート「台湾中銀は「比較的長期に亘って」引き締めスタンスを維持する構え」
注2 11月27日付レポート「台湾・総統選、野党は候補一本化ならず、3陣営による選挙戦スタート」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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