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2023.09.22
アジア経済
アジア金融政策
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台湾中銀は「比較的長期に亘って」引き締めスタンスを維持する構え
~楊総裁は景気、物価の両面で不確実性を警戒、相当期間に亘って現行スタンスが続く可能性は高い~
西濵 徹
- 要旨
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- 台湾では昨年、経済活動の正常化、商品高、米ドル高が重なりインフレが昂進し、中銀は断続利上げを余儀なくされ、物価高と金利高の共存が景気の重石となる懸念が高まった。昨年末以降は外需低迷も重なりテクニカル・リセッションに陥るも、商品高や米ドル高の一巡により年明け以降のインフレは鈍化しており、景気は底打ちしている。ただし、足下では商品高と米ドル高によりインフレが再燃する懸念が高まっているが、中銀は21日の定例会合で2会合連続の金利据え置きを決定した。同行の楊総裁は不確実性を理由に引き締めスタンスを維持する構えをみせており、長期に亘って現行の水準が続く可能性は高いと見込まれる。
台湾では昨年、コロナ禍の一巡による経済活動の正常化の進展に加え、ウクライナ情勢の悪化を受けた商品高、国際金融市場における米ドル高の動きと台湾情勢を巡る不透明感も重なる形で台湾ドル安による輸入インフレ圧力が強まり、インフレが大きく上振れする事態に直面した。よって、中銀は昨年3月に10年半ぶりとなる利上げに舵を切るとともに、その後も物価と為替の安定を目的に断続利上げに動いたものの、インフレ率は昨年5月に14年強ぶりの水準となった後も高止まりするなど、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まった。また、同国経済はアジアのなかでも構造的に外需依存度が相対的に高い上、中国本土との連動性も高い一方、昨年8月の米国のペロシ連邦議会下院議長(当時)による訪台を機に中国本土は経済制裁を課す『嫌がらせ』に動いたほか、その後は中国本土の景気減速の動きも外需の足かせとなった。このように内・外需双方で景気に下押し圧力が掛かったことを反映して、実質GDP成長率は昨年末から年明け直後にかけて2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥った。なお、昨年末以降はインフレ要因となってきた商品高や米ドル高の動きに一服感が出たため、年明け以降のインフレ率は頭打ちの動きを強めており、実質購買力の押し上げが景気を下支えすることが期待された。事実、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+5.62%と3四半期ぶりのプラス成長に転じてリセッション(景気後退局面)を脱するなど、景気は底打ちを果たしている。しかし、足下の中国本土景気には減速懸念が高まっている上、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米など主要国景気も頭打ちの様相を強めるなど、外需を取り巻く環境に不透明感が高まっている。また、インフレ鈍化を受けて中銀は6月の定例会合において1年強に及んだ利上げ局面を休止させるなど、政策運営の舵取りを物価安定から景気下支えにシフトさせる動きをみせた(注1)。他方、主要産油国による自主減産に加え、異常気象の頻発を受けて農産物の輸出禁止や制限に舵を切る国も出るなか、足下では商品市況が底入れの動きを強めており、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレ再燃の動きが顕在化している。さらに、国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げが意識される形で米ドル高が再燃する兆しも出ており、台湾においては来年1月に次期総統選挙が予定されるなか、中国本土は様々な形で台湾への圧力を強めており、折からの米ドル高の動きも相俟って台湾ドル相場は調整の動きを強めて輸入インフレが再燃する懸念も高まっている。こうした状況ながら、中銀は21日の定例会合において2会合連続で政策金利を1.875%に据え置く決定を行っている。会合後に公表した声明文では、先行きの景気動向について「家計消費は堅調な推移が見込まれる一方、輸出と民間投資は弱含む展開が続く」として「今年通年の経済成長率は+1.46%になる」と6月時点(+1.72%)から下方修正する一方、来年は「輸出と民間投資はともに底入れして経済成長率は+3.08%になる」との見通しを示している。一方、物価動向については「商品市況の動向は懸念されるが、緩やかな上昇に留まる」として「今年通年のインフレ率は+2.22%になる」と6月時点(+2.24%)からわずかに下方修正した上で、来年は「サービス物価の鈍化を受けてインフレ率は+1.83%まで鈍化する」との見通しを示している。会合後に記者会見に臨んだ同行の楊金龍総裁は、今回の決定について「経済と金融システム全体の安定を目的としたもの」とする一方、先行きの政策運営について「比較的長期に亘って引き締め姿勢を維持することが可能」とした上で「主要国が景気減速に陥らないなかで利下げに動く可能性は低い」との見方を示した。その上で、「高インフレが新常態となるなかで以前のような低金利になることはない」と引き締めスタンスを維持する考えを示した。他方、来年の景気動向については「中国本土の景気減速や米中摩擦などのリスク要因はあるが、世界経済の回復を追い風に底入れが進む」としつつ、物価動向について「2%を下回る見通しだが不確実性が高く油断できない」との考えを示している。こうした状況を勘案すれば、中銀は先行きも現行のスタンスを長期間に亘って維持する可能性が高いであろう。



注1 6月16日付レポート「台湾中銀、景気後退局面入りを受けて1年強に及んだ利上げ局面を休止」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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