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2023.09.05
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オーストラリア中銀、ロウ総裁最後の会合は「様子見」姿勢を維持
~再々利上げに含みも「データ次第」、ブロック次期総裁の下でも難題に直面する状況は変わらない~
西濵 徹
- 要旨
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- 豪州では、商品高、米ドル高を受けた豪ドル安による輸入インフレ、雇用改善による賃金インフレが重なりインフレが昂進した。さらに、不動産バブルも懸念されたため、中銀は昨年5月以降断続、且つ大幅利上げを余儀なくされた。なお、インフレは昨年末以降頭打ちに転じるも、家賃や賃金など粘着度の高いインフレ圧力がくすぶるなど、中銀は難しい政策判断を迫られる状況が続いている。こうしたなか、中銀は5日の定例会合で政策金利を3会合連続で4.10%に据え置いた。ただし、先行きについて再々利上げに含みを持たせる一方、国内外に不透明要因が山積するなかで現状は「様子見」姿勢を維持した。今回はロウ総裁の下での最後の定例会合であり、物価抑制はブロック次期総裁に引き継がれた格好だが、その対応は困難続きが予想される。他方、中国の減速懸念の高まりは豪ドル相場の下押し圧力となるなか、当面の対米ドル相場は上値の重い展開が見込まれ、日本円に対しても相場環境に左右されやすい展開が続くとみられる。
豪州においては、商品高による生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場での米ドル高を受けた通貨豪ドル安に伴う輸入インフレ、景気回復による雇用回復を追い風とするインフレが重なり、インフレ率は中銀(豪州準備銀行)の定めるインフレ目標を上回る推移が続く。また、コロナ禍を受けて中銀は異例の金融緩和に舵を切った上で、緩和環境の長期化を明言する姿勢をみせたため、景気回復やコロナ禍を経た生活様式の変化も重なり、不動産市況は急上昇してバブルが顕在化する事態を招いた。こうしたことから、中銀は昨年5月に一転利上げに動くとともに、その後も物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げを余儀なくされるなど急進的な金融引き締めに舵を切った。ただし、その後もインフレ率は一段と加速して物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まるとともに、急進的な利上げを受けて不動産市況は昨年4月を境に調整に転じた。なお、豪州においては家計債務残高のGDP比が他の国々と比較して突出している上、その大宗を住宅ローンが占めるなか、不動産市況の低迷は逆資産効果を通じて家計消費の足かせとなりやすい特徴がある。また、銀行セクターも与信の約3分の2を住宅ローンが占めており、不動産市況の低迷は貸出態度の悪化を通じて幅広い経済活動に影響を与えるほか、金融リスクを引き起こす懸念もある。こうしたなか、昨年末以降の商品高の一服や米ドル高の一巡に加え、昂進したインフレも頭打ちに転じる一方、堅調な雇用を追い風とする賃金インフレのほか、不動産市況は再び底入れの動きを強めるなど新たなインフレ要因となる懸念がくすぶる。中銀はインフレの頭打ちの理由に今年4月に1年に及んだ利上げ局面の休止に動いたものの、翌5月には再利上げに追い込まれるとともに、6月にも追加利上げを決定するなど難しい対応を迫られた。この背景には、労使裁定機関であるFWC(フェア・ワーク・コミッション)が7月からの新年度の最低賃金を5.75%引き上げる決定を行うなど、賃金インフレのさらなる加速に繋がる動きをみせたことがある。上述の決定による影響が見込まれた7月のインフレ率は前年同月比+4.9%と鈍化して1年5ヶ月ぶりの伸びとなり、コアインフレ率(トリム平均値)も同+5.6%と1年1ヶ月ぶりの伸びに鈍化するなどともに頭打ちの動きを強めている。ただし、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレ圧力が後退している一方、サービス物価や不動産価格に押し上げ圧力がくすぶるなど、インフレが鎮静化していると判断するのは些か早計と捉えられる。事実、昨年来の大幅利上げを受けて不動産供給は細る一方、国境再開を追い風とする外国人来訪者数の底入れの動きも追い風に大都市部を中心に需要は堅調な推移をみせており、先月の不動産価格も6ヶ月連続で上昇するなど底入れの動きを強めている。他方、雇用回復の動きをけん引してきた大都市部を中心に雇用が頭打ちに転じる兆しがみられるほか、賃金の伸びにも鈍化の兆しが出る動きがみられる。このように物価に影響を与える材料に好悪双方の材料が混在するなか、中銀は5日に開催した定例会合において政策金利(OCR)を3会合連続で4.10%に据え置くなど、利上げ局面の休止を維持している。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「これまでの利上げの影響と経済見通しを見極めるための時間を確保するため」とした上で、物価動向について「ピークアウトするも依然高すぎる上、しばらくはこうした状態が続く」とし、「中心的な見通しでは2025年後半に目標域に戻る」との見通しを維持している。また、経済動向について「家計消費の伸び悩みや住宅投資の低迷を理由に潜在成長率を下回る推移が続き、先行きもしばらく続く」とする一方、「労働状況は幾分緩和するも依然タイトであるが、失業率は来年後半にかけて徐々に上昇が見込まれる」との見通しを示す。その上で、政策運営について「合理的な期間内にインフレ率を目標域に回帰させることが優先事項」とした上で、「高いインフレ期待の定着はインフレ抑制に向けた一段の金利や失業率の上昇を招くなど非常に高いコストを払う必要が生じる」としつつ、「現時点においては中期的なインフレ期待はインフレ目標と整合的であり、この状態を維持することが重要」との見方を示す。ただし、物価及び経済の見通しを巡って「海外では驚くほどにサービスインフレが持続し、同様の事態が豪州でも起こる可能性がある」との見方を示した上で、「家計、企業双方に不確実性があるのみならず、海外でも不動産市場を巡るストレスに晒されている中国経済の行方に対する不透明感が増している」とした。一方、「合理的な期間内にインフレ率を確実に目標域に回帰させるには金融政策をさらに幾分引き締める必要がある可能性がある」と追加利上げに含みを持たせる一方、「その行方はデータとリスク次第」とした上で「世界経済の動向、家計消費の動向、物価と労働市場の見通しを注視する」としつつ、「インフレを目標に戻す断固とした決意は変わらず、その実現に向けて必要なことを行う」と前回会合に続いて同じ考えを改めて強調した。今回の会合はロウ現総裁の下で行われる最後の定例会合であり(注1)、物価抑制の任は後任総裁となるブロック副総裁に引き継がれる格好となったものの、上述のように家賃や賃金など粘着性の高いインフレ要因がくすぶるなかで難しい対応を迫られることは避けられない。さらに、豪州経済にとって影響の大きい中国経済を巡る不透明感の高さは豪ドル相場の重石となりやすい上、米FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営に対する見方も影響して豪ドルの対米ドル相場は上値の重い展開が続くと見込まれるほか、日本円に対してもしばらくは相場環境に影響される展開が続くと予想される。




注1 7月14日付レポート「豪中銀、ロウ総裁が事実上の更迭、ブロック副総裁が昇格へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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