株高不況 株高不況

今回も機能した日本株(半導体)の先行指標(4月鉱工業生産)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月130程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを10‐12月期に修正するだろう。
  • FEDはFF金利を5.25%(誘導幅上限)で据え置くだろう。利下げは10-12月期を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国市場は上昇。S&P500は+0.0%、NASDAQは+0.3%で引け。VIXは17.5へと上昇。
  • 米金利カーブはブル・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.230%(▲2.7bp)へと低下。 実質金利は1.466%(▲8.0bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲76.6bpへとマイナス幅縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは139後半へと下落。コモディティはWTI原油が69.5㌦(▲3.2㌦)へと低下。金は1958.0㌦(+13.7㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブと名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)と長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブと名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)と長短金利差(2年10年)

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

経済指標

  • 5月CB消費者信頼感指数は102.3へと1.4pt低下。現況(151.8→148.6)と期待(71.7→71.5)が双方とも低下したが、やや長い目で見れば大きな変化は生じてない。雇用統計の先行指標として有用な雇用判断DIは31.0へと低下。依然として求職者優位の構図にあるとはいえ、その度合いは和らいでいる。労働市場の歪み解消を示す前向きな進展と捉えて良いだろう。

CB消費者信頼感指数とCB消費者信頼感指数(雇用判断)
CB消費者信頼感指数とCB消費者信頼感指数(雇用判断)

CB消費者信頼感指数
CB消費者信頼感指数

CB消費者信頼感指数(雇用判断)
CB消費者信頼感指数(雇用判断)

  • 3月ケース・シラー住宅価格指数は前月比+0.45%と9ヶ月ぶりに前月比上昇。前年比では▲1.15%と2012年5月以来のマイナスとなったが、直近は低下ペースが鈍っている。瞬間風速を示す3ヶ月前比年率の伸びは+0.44%はプラス転化、同3ヶ月平均では▲2.61%までマイナス幅縮小。当面、CPI家賃の伸び率は鈍化する公算が大きいが、1年程度先は家賃インフレが残存する可能性が指摘できる。

ケース・シラー住宅価格指数とケース・シラー住宅価格指数・CPI家賃
ケース・シラー住宅価格指数とケース・シラー住宅価格指数・CPI家賃

ケース・シラー住宅価格指数
ケース・シラー住宅価格指数

ケース・シラー住宅価格指数・CPI家賃
ケース・シラー住宅価格指数・CPI家賃

注目点

  • 4月の鉱工業生産(日本)はシリコンサイクルの反転になお時間を要すことを示したが2月以降その懸念は和らいでいる。日本株に対して「良・悪」の2択で言えば「良」と判断される。

  • 日本の4月鉱工業生産は前月比▲0.4%と3ヶ月ぶりの減産。1月は中華圏の春節が例年より早かったことで季節調整が上手く機能せず弱さが誇張され減産、2月はその反動もあって大幅増産、3月は自動車生産の回復を主因に増産。4月は振れの大きい半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ製造装置、航空機用機体部品などが大幅減産となったことで全体として減産となった。もっとも、汎用・業務用機械(+11.6%)、電子部品・デバイス工業(+8.9%)、電気・情報通信機械工業(+4.9%)など9業種が増産、減産は5業種と少なく1業種は横ばいであり、内容はさほど悪くない。

鉱工業生産指数
鉱工業生産指数

  • 5月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は5月が+1.9%、6月が+1.2%と2ヶ月連続の増産見込みであった。経産省がバイアスを補正した5月の予測値は▲2.6%と弱めだが、4月実績が予想外に下振れたことを勘案すれば、経産省予測値は慎重にみえ、上振れ余地がある印象だ。注目の輸送機械工業の生産計画は5月が前月比+12.5%、6月が▲8.6%と均してみれば増産見込み。サプライチェーンの乱れは残存するが、快方に向かっていることに間違いはない。

生産 自動車工業
生産 自動車工業

  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産に目を向けると、4月の生産は前月比+8.9%となり、前年比では▲14.8%へとマイナス幅は縮小した(3月は▲25.3%)。指数水準は96.9へと持ち直し、2019年平均(95.2)を回復。2022年以降はノートPCやスマホなどの需要減衰を背景とするシリコンサイクルの悪化に巻き込まれ本邦IT関連財企業はその勢いを失っているが、ここへ来て底打ち感がみられている(半導体製造装置も似た構図)。生産計画に目を向けると5月は+1.8%、6月は▲3.2%と慎重だが、それでも減産ペースは和らぎつつある。また出荷のマイナス幅が縮小すると同時に、在庫調整が前進したことは素直に好感される。4月の在庫水準は前年比+13.0%へと縮小、3ヵ月平均でみても+18.6%と縮小傾向にある。

IT関連財 生産と電子部品・デバイス工業
IT関連財 生産と電子部品・デバイス工業

IT関連財 生産
IT関連財 生産

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

  • この結果、出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)は3ヶ月平均で▲31.4%へとマイナス幅を縮小。単月でみれば▲22.1%まで改善している。在庫循環図の位置取りは、3月に左上方向へ逆走していたものが4月は2月値に戻り、在庫調整の進展を窺わせる動きとなった。

  • 長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスは日経平均株価と連動性を有してきた。2月データは2022年4-6月期をボトムとする出荷・在庫バランスの改善が頓挫し復活までに相応の時間を要すことを示唆したが、3月と4月のデータはそうした懸念を和らげた。これまで筆者が当レポートで繰り返し言及してきた「業績反転を先取りするという視点で、その時機が近づいているようにも見える」との見方は、5月の株式市場で現実のものになった。今後は生成系AI関連の投資にも刺激され、IT関連財のサイクルは上向きに転じると期待される。それは日本株高の燃料になり得る。

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

日経平均・出荷在庫バランス
日経平均・出荷在庫バランス

藤代 宏一


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