インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

豪州、インフレ鈍化もコアインフレは高止まり、住宅価格も底打ちの兆し

~金融市場は利上げ休止観測強めるも、再利上げに動く可能性は充分、豪ドル相場は一進一退を予想~

西濵 徹

要旨
  • 豪州経済はコロナ禍の克服が進む一方、商品高や豪ドル安、雇用回復も追い風にインフレが昂進した。不動産市況の高騰も理由に中銀は昨年以降断続的、且つ大幅利上げを余儀なくされ、不動産市況は頭打ちの動きを強めた。他方、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念があるなか、中銀は昨年末を境とするインフレを受けて今月の定例会合で1年に亘った利上げ局面の休止に動いた。足下のインフレ率は伸びの鈍化が確認される一方、コアインフレ率は横這いで推移している。雇用回復に伴いサービス物価に押し上げ圧力がくすぶる上、足下では調整が続いた不動産市況も底打ちするなど、インフレの高止まりを示唆する動きもみられる。金融市場ではインフレ鈍化を受けた利上げ局面の終了を見越して豪ドル相場は頭打ちしているが、再利上げに動く可能性は充分あり、当面の豪ドル相場は一進一退の推移が続くと予想される。

豪州経済を巡っては、感染収束による経済活動の正常化の動きに加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復も追い風に景気の底入れが進むなど、コロナ禍を受けた景気減速の影響を克服する動きが続いている。さらに、昨年末以降における中国のゼロコロナ終了の動きは、財輸出の約3割、コロナ禍前における外国人観光客の約2割を中国(含、香港・マカオ)が占めるなど、外需における中国への依存度が比較的高い同国経済の追い風になることが期待される。他方、昨年来の商品高は食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招くとともに、国際金融市場における米ドル高は通貨豪ドル安を通じて輸入インフレを招いている上、景気回復を追い風とする雇用環境の改善は賃金上昇を通じてインフレ圧力に繋がる動きが顕在化している。中銀(豪州準備銀行)はコロナ禍対応を目的に、利下げ実施や量的緩和に加え、YCC(イールド・カーブ・コントロール)を導入するなど異例の金融緩和に舵を切るも、インフレに加え、コロナ禍を受けた生活様式の変化を受けた不動産市況の急騰も重なり、一昨年以降は段階的に金融政策の正常化に動き、昨年5月には約11年半ぶりの利上げ実施を決定した。その後もインフレ昂進を受けて中銀は物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げを余儀なくされるなど難しい対応を迫られてきた。なお、急上昇した不動産市況は中銀による断続的、且つ大幅利上げを受けて昨年4月をピークに頭打ちするなど鎮静化している一方、同国の銀行セクターは資産の約3分の2を住宅ローンが占めるなど市況低迷の動きは貸出態度に影響を与える傾向がある上、逆資産効果が家計消費の足かせとなることが懸念される。他方、中銀による断続的、且つ大幅利上げにも拘らずインフレ率は昂進が続いて昨年10-12月は約33年ぶりの水準に、コアインフレ率は過去最大の伸びとなりともに中銀目標を大きく上回る推移が続くなど、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。こうした状況ながら、年明け以降のインフレ率は一転頭打ちしていることを受けて、中銀は今月の定例会合において1年に亘った利上げ局面の休止を決定しており、これまでの利上げ実施による効果を検証する考えを示した(注1)。よって、足下の物価の動きに注目が集まるなか、1-3月のインフレ率は前年比+7.0%と前期(同+7.8%)から伸びが鈍化するとともに、コアインフレ率(トリム平均値)も同+6.6%と前期(同+6.9%)からともに伸びが鈍化しており、頭打ちしていることが確認された。前期比は+1.38%と前期(同+1.87%)からペースこそ鈍化するも上昇が続いており、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇圧力がくすぶるともに、雇用環境の堅調さを反映してサービス物価も上昇傾向が続いており、インフレ圧力が鎮静化しているとは捉えられない状況にある。さらに、3月単月のインフレ率は前年比+6.3%と前月(同+6.8%)から一段と鈍化しており、昨年12月をピークに頭打ちの動きを強めているものの、コアインフレ率(除、物価変動の大きい財)は同+6.9%と前期(同+6.9%)から横這いで推移するなど頭打ちの動きに一服感が出ている。前月比は原油価格などの調整などを反映してエネルギー価格に下押し圧力が掛かる一方、食料品価格は上昇が続いている上、幅広くサービス物価に押し上げ圧力が掛かる動きがみられるほか、不動産関連の物価にも上昇圧力がくすぶる。事実、昨年4月をピークに頭打ちの動きを強めてきた不動産市況は今年3月約1年ぶりの上昇に転じるなど底打ちしており、賃貸住宅のひっ迫状態が続いていることに加え、国境再開により海外移民が増大していることも住宅需要を押し上げている模様である。国際金融市場においては、インフレ率の鈍化を理由に中銀が一段の利上げに動く可能性は後退したとの見方を反映して豪ドルの対米ドル相場は頭打ちの動きを強めているものの、上述のようにコアインフレ率は高止まりしている上、不動産市況が底打ちしていることを勘案すれば、再利上げに動く可能性は残ると見込まれ、当面の豪ドル相場は一進一退の動きが続くと予想する。

図表1
図表1

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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